TENET テネット | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Tenet
監督:クリストファー・ノーラン
キャスト:ジョン・デヴィッド・ワシントン/ロバート・パティンソン/エリザベス・デビッキ
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:2020年9月
時間:151分




今夜紹介するのはC・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』。新型コロナ感染拡大のため,ニューヨーク,ニューメキシコ,ノースカロライナの3州や,ロサンゼルス,サンフランシスコではまだ劇場が閉鎖されているが,ノーラン監督作品ならではのリピーターと,大都市での上映再開を見越してのロングラン戦略で,この時期の公開に踏み切ったとか。コロナ・パンデミック後の映画業界全体の期待を背負っているとさえ言える作品だ。

さて,タイトルの『TENET』だが,英語では,個人・学派・教団などの「主義;教義」の意味。この『TENET』という単語自体が回文になっているが,回文そのものの起源と言われるラテン語の,
SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS
「農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする」

という回文が,西暦79年にヴェスヴィオ火山の噴火によって滅亡したイタリアのヘルクラネウムの遺跡に刻まれている。
さらに,上のように組んだものはSATOR式とも言われ,左上から,横に読んでも縦に読んでも同じ文になるのだ。

着想に20年,脚本の練り直しに6~7年を費やしたと言うノーラン監督。すでに観た人は気づくかもしれないが,SATOR=セイター,AREPO=ゴヤの贋作者の名前,OPERA=オペラ,ROTAS=オスロ空港の警備会社の名前 となっている。

満席の観客で賑わうウクライナ,キエフのオペラハウスで,テロ事件が発生。罪もない人々の大量虐殺を阻止するため,特殊部隊が館内に突入する。部隊に交じって活動していたCIAエージェントの男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は,仲間を救うため身代わりとなって捕えられ,拷問の隙に自決用の毒薬を飲む。しかし,その薬は何故か睡眠剤にすり替えられていた。

目を覚ますとフェイ(マーティン・ドノヴァン)という男から,テロ事件は自分たちの組織“TENET”に加えるためのテストだったことを明かされ,あるミッションを命じられる。それは、未来からやって来る敵と戦い,第三次世界大戦を防ぐことだった。未来では“時間の逆行”と呼ばれる装置が開発され,人や物が過去へと移動できるようになっていた。それを利用して世界を破滅させようとするロシアの武器商人アンドレイ・セイター(ケネス・ブラナー)の存在を知った彼は,協力者のニール(ロバート・パティンソン)と共にセイターの妻であるキャット(エリザベス・デビッキ)への接触を図るのだったが…。

インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』と,時と次元を斬新な映像で魅せてくれたノーラン監督。この作品でも,音楽とともに没入感の深い視覚的トリップへと誘ってくれる。実験色の強いビジュアルに翻弄されながらも,特殊すぎるレイアウトにどっぷりと浸らせてくれる1本。

エンドロールを見ながら,すべての時間とその逆転が,ようやく脳内でまとまってくる。「でもあのシーンは?」というマニアックな疑問が,劇場へのリピート欲を刺激する。ちょっと『インセプション』を見た時の感覚が湧いてくるのが悔しいし心地よい。

躊躇したけど,ノーラン監督ファン心理を足し算して★5つ。でも,ノーラン作品が苦手な人には,正直お奨めできない。

主演のジョン・デヴィッド・ワシントンは『フライト』のデンゼル・ワシントンの長男。ノーラン組常連のマイケル・ケインは今回,MI6の連絡役で,名もなき男に情報提供を行うマイケル・クロズビー卿として登場している。また,今のところ吹替版の上映は予定されていない。


映画クタ評:★★★★★


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