IT イット/“それ”が見えたら、終わり。 | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:IT(IT: chapter one)
監督:アンディ・ムスキエティ
キャスト:ジェイデン・リーバハー/ビル・スカルスガルド/フィン・ウルフハード
配給:ワーナー・ブラザース
公開:2017年11月
時間:135分




『スタンド・バイ・ミー』(1987年・コロンビア)や『グリーンマイル』の原作者として知られるスティーヴン・キングだが,元々のジャンルはホラー作家。デビュー作であり映画化もされた『キャリー』(1977年・UA)など,アメリカのごく平凡な町を舞台に,具体的な固有名詞や詳細な日常描写を執拗に行う作風から“モダン・ホラーの第一人者”と呼ばれている。

しかし,その独特な世界を映像化するのは困難とされ,『キャリー』や,スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(1980年・ワーナー)など,個性派監督たちの技巧によって世に出た作品を除いては,あまり成功しているとは言えない。

ところが2年前,心底恐ろしいスティーヴン・キング原作映画として世界中のホラー映画ファンの心を捉えたのが,今夜紹介する『IT イット』。北米での興収3億2,748万ドルという数字は,それまでホラー映画部門でNo.1ヒットとされていたM・ナイト・シャマラン監督の『シックス・センス』の記録をあっさりと塗り替えてみせた。

1988年,アメリカの田舎町デリー。町では子供ばかりが行方不明になる不可解な事件が続いていた。ある日,内気で病弱な少年ビル(ジェイデン・リーバハー)の弟ジョージー(ジャクソン・ロバート・スコット)も1人で遊んでいる時に何者かに襲われ,道端の排水溝に姿を消してしまう。

1年後。弟の失踪に責任を感じていたビルは,見えるはずのない“それ”を目撃し,恐怖にとり憑かれる。しかし,得体の知れない恐怖を抱えるのは彼だけではなかった。自分の部屋,地下室,バスルーム,図書館や廃屋と,子供たちが何かに恐怖を感じる度に“それ”は姿を現すのだった。

夏休みに入る頃,“負け犬クラブ(LOSERS)”のビル,リッチー(フィン・ウルフハード),スタンリー(ワイアット・オレフ),エディ(ジャック・ディラン・グレイザー),そしてヘンリー(ニコラス・ハミルトン)らに暴行を受けていたベン(ジェレミー・レイ・テイラー)とマイク(チョーズン・ジェイコブス),紅一点ベバリー(ソフィア・リリス)の7人は,“それ”に立ち向かうことを決意。連続行方不明事件の謎を探ろうとするのだったが…。

“排水溝から覗くピエロ”のトラウマ系アイコンで社会現象を巻き起こした,子供たちにしか見えない不気味なピエロ,ペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)。27年周期でデリーの町に現れるペニーワイズと“LOSERS”は,2度の死闘を繰り広げる。原作では交互に語られるその“少年時代の戦い”と“壮年時代の戦い”が,映画では分けられ,chapter oneとなるこの作品では“少年時代の戦い”が描かれる。

単に怖さを見せるのでなく,身内の失踪,学校でのいじめ,親からのDVなど,それぞれ問題を抱えた子供たちが団結し,人間の弱みにつけ入るペニーワイズに勇気を振り絞って対峙し,克服しようとするイニシエーション展開は,まさに,ホラー版『スタンド・バイ・ミー』。その物語世界は,見る者を吸い寄せていくのだ。

そして,27年後の“壮年時代の戦い”を描いた続編『IT イット THE END/“それ”が見えたら、終わり。』の日本公開が11月1日に決定。ビル役にジェームズ・マカヴォイ,ベバリー役にはジェシカ・チャステインと,共に『X-MEN/ダーク・フェニックス』参加組。ゾクゾクさせるchapter twoに期待が高まる。


映画クタ評:★★★★