キャスト:小栗旬/ユースケ・サンタマリア/小出恵介
配給:ショウゲート
公開:2007年6月
時間:108分
今夜紹介するのは,このコーナーでは度々登場している脚本家・古沢良太の初期の作品。映画脚本としては『ALWAYS 三丁目の夕日』に次ぐ2本目であり,初のオリジナル脚本でもあるワン・シチュエーション・サスペンス『キサラギ』。公開当時,全国25館での公開にもかかわらず,出演者の豪華共演と一度見ただけでは判らない巧妙な伏線にリピーターが続出。観客動員数は15万人を突破し,ロングラン上映も決定するなど,単館系の映画としては異例の大ヒットを記録している。監督は佐藤祐市。近作では『累-かさね-』(2018年・東宝)が話題となった。
マイナーなグラビアアイドル・如月ミキ(酒井香奈子)が焼身自殺を遂げてから1年が過ぎた。彼女のファンサイトでは1周忌のオフ会を開催することに。会場となった某ビルのペントハウスに集まったのは,サイト管理人の家元(小栗旬)とサイトの常連,オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア),スネーク(小出恵介),安男(塚地武雅),いちご娘(香川照之)という5人の男たち。
初めて直に顔を合わせた彼らは,ミキの思い出に浸り,自慢話で盛り上がる。明るかったミキの自殺という事実に釈然としない気持ちを持ち続けていた5人。そしてオダ・ユージの「彼女は殺されたんだ」という発言を境に,彼らはミキの死の真相を巡って怒涛の推理を展開していく。徐々に明らかになる当時の状況。次々と明かされる5人の男たちの正体。物語は急速にミステリーの様相を呈していくのだったが…。
実際に後に舞台化もされたが,まるで舞台劇を見ているかのようなワン・シチュエーション。しかも登場人物もほぼ5人。個性と実力を兼ねそなえた5人だからこそ,どこまでもスリリングに展開する巧みな脚本を,さらに奥深く体現する。コミカルな会話と次々と変化するパワー・バランスが,まったく飽きさせない秀作。
最後の最後まで如月ミキの実像をボカし,見る者にイメージを膨らませておいて,予想以上の“D級”ぶりで登場させるシメも,ある意味「やられた!」と思ってしまう。ちなみに,玖妙の誕生日…家元と一緒です。