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監督:中村義洋
キャスト:阿部サダヲ/瑛太/妻夫木聡
配給:松竹
公開:2016年5月
時間:129分




ゴールデンスランバー』『白ゆき姫殺人事件』をはじめ,様々なジャンルの作品を器用に,そして印象的に送り出す中村義洋監督の時代劇への本格初挑戦。阿部サダヲ,瑛太,妻夫木聡をメインに,何とフィギュアスケート界のプリンス・羽生結弦まで登場させた作品を今夜は紹介。

原作は磯田道史の『無私の日本人』に収められている「穀田屋十三郎」。映画『武士の家計簿』(2010年・松竹)を見た宮城県大和町の元町議が,磯田に「この話を本に書いて広めて欲しい」と託した手紙が出版のきっかけとなったらしい。

江戸時代中期の仙台藩。財政難のため百姓や町人には重税が課され,破産や夜逃げが相次いでいた。貧しい宿場町・吉岡宿も例外ではなく,年貢の取り立てや労役で人々が困窮し,造り酒屋を営む穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は,町の行く末を深く案じていた。そんなある日,彼は,町一番の知恵者である茶師・菅原屋篤平治(瑛太)から,町を救うあるアイデアを打ち明けられる。それは,藩に大金を貸し付け,その利息で町を再建するという前代未聞の奇策だった。

計画に必要な額は千両(約3億円)。計画が明るみになれば打ち首も免れないし,簡単につくれる額ではないが,十三郎や篤平治は宿場の仲間たちを説得し,必死の節約を重ね,家財も投げ打ってひたすら銭集めに奔走するのだった…。

中村監督の描き出す絶妙な光と陰のシーンの随所に,独特の汗と毒の臭いがする。予告編で感じたコメディ色は薄く,大筋はシリアスと人情味溢れる話なのだが,阿部サダヲと瑛太を中心とするキャラと絡みが軽快に惹き付けさせる。

ここに,先代・浅野屋甚内の山﨑努と,仙台藩の出入司・萱場杢を演じる松田龍平が濃厚な存在感を混ぜてくるからたまらない。さらに,ラスト5分を爽やかにシメる仙台藩第七代藩主・伊達重村(羽生結弦)など,喜怒哀楽とキャストの持ち味が贅沢に,まろやかにミックスされた秀作と言えるだろう。共演は他に,草笛光子,竹内結子,千葉雄大,きたろう,西村雅彦など。ナレーションは濱田岳。

実話ベースなので仕方ない部分かもだが,個人的には中村監督らしい“攻め”なシークエンスが足りない気がして★1個減らしてしまった。大野智主演の次回作『忍びの国』(7月公開)も時代劇らしいので,そちらに期待したい。


映画クタ評:★★★★


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