ゴールデンスランバー

英題：GOLDEN SLUMBER
監督：中村義洋
ｷｬｽﾄ：堺雅人／竹内結子／吉岡秀隆
配給：東宝
公開：2010年1月
時間：139分

堺雅人を最初に見たのは，NHK大河ドラマ『新選組！』(2004年)だったか。丁寧で知的で時に神経質な山南敬助が印象的で，その後，気になる役者の１人になった。個人的には『リーガルハイ』(フジテレビ)の古美門研介が押しキャラなのだが，今夜は堺雅人が古美門研介になる２年前の作品を紹介。

圧倒的なリーダビリティと鮮やかすぎる伏線回収で，「本屋大賞」や「山本周五郎賞」を受賞するなど各方面から絶賛された伊坂幸太郎の傑作ミステリーを，『チーム・バチスタの栄光』(2008年・東宝)，『白ゆき姫殺人事件』の中村義洋監督が映画化したもの。〈冤罪と報道に流されやすい世間〉というテーマは『白ゆき姫殺人事件』にも共通するが，描き方が全く異なる。

仙台に暮らすごく平凡な30歳の独身男，青柳雅春（堺雅人）。金田首相（伊藤ふみお）が凱旋パレードを行うその日，大学時代の同級生・森田（吉岡秀隆）に呼び出された彼は，「お前，オズワルドにされるぞ。とにかく逃げろ」と謎の警告を受ける。その直後，背後のパレード会場で爆発音がしたかと思うと，なぜか２人の車に警官が近づき，躊躇なく拳銃を向ける。訳もわからぬまま反射的に逃げ出した青柳は，やがて自分が身に覚えのない証拠によって首相暗殺の犯人に周到に仕立てられていくことを，大量のマスコミ報道で知る。青柳の元恋人で大学時代のサークル仲間でもある樋口晴子（竹内結子）は，事件の報道に驚き，かつての仲間たちに連絡を取ろうとするのだが…。

劇団ひとり，柄本明，ベンガル，大森南朋，貫地谷しほり，相武紗季，永島敏行，石丸謙二郎，香川照之，鈴木福，伊東四朗，竜雷太…と列記しただけでも個性的で豪華な共演陣。中でも飛び抜けていたのが，キルオを演じた濱田岳。アクセントになる役を，見事な存在感で引き締めてくれる。

物語を包み込み，時に絡み合うように流れる斉藤和義カバーの『Golden Slumbers』。ビートルズの名曲が世に出たエピソードが，ストーリーに投影されてくるシーンは鳥肌モノ。

人と繋がること，無条件に誰かを信頼すること…生きる上で最も大切で，現代社会で最も難しいテーマを，判りやすく，見る者に問う秀作だと思う。

冒頭シーンと親指の伏線回収…どうぞお見逃しなく。