『コーヒー長者 ~若端式~』 STEP4
こちらをお読みになってから読んでください。
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高瀬は大八車を引きながら途方にくれていた。
そう、その大八車の上には『スパークリングコーヒー(コーヒー入り炭酸飲料)』24缶入りが10ケース。果たしてどうやって消費しようか悩んでいた。
「なんか…不味そうだよな」
そんなことを考えていた矢先である。
… えっほ えっほ えっほ えっほ
掛け声のような声が遠くのほうから響いてきた。それは次第に高瀬のほうに近づいて来る。
えっほ えっほ! えっほ! えっほ!!
その声の主は、体操タイツ姿の三人の男の姿であった。
「全体、止まれぇぇぇぇぇええっ!」
その叫びとともに、彼らは唖然とする高瀬の前で突然立ち止まった。
「気を付けぇいッ!!」
リーダー格の男の号令で、残りの2人が背筋を伸ばし直立する。
「番号ぉぉぉうッ!!」
「1ッ!」
「2ッ!」
『サンガリアッ!!!』
「2ッ!」
「2ッ!」
『サンガリアッ!!!』
(…いや、それ番号じゃない。しかも、なんで『サンガリア』なんだ? しかもその部分だけ全員で叫んでるし…)
そのテンポ良く行われた一連の行動に、高瀬はただ見守るしかなった。
「ならば問うッ! 我々が一番好きな飲み物は何だ!? 言って見ろッ!」
「ドクターペッパーッ!」
「ひやしあめッ!」
「メッコールッ!」
彼らは叫びながら体操タイツの中から何やら怪しげな飲料水の缶を取り出し、高々と掲げる!
やがて缶を開ける音が響く!
次に彼らは喉を鳴らしてそれらを飲む!
そして!!
「うぇ~」
彼らは吐き出しそうな仕草を同時に見せる!
「うむ、最高だっ!」
「嘘つけよお前ら、思い切り不味そうだったぞヲイ!」
高瀬は思わずこう突っ込んだ。
「そもそもお前達は何者だ?」
高瀬の問いに、リーダー格の男がこう答える。
「我々は決して怪しい物ではないッ」
「いや、どう考えても充分怪しいだろ」
「我々は、『キワモノ飲料探検隊』だ。独特の味を持つ…世間一般で言えば『毒物飲料』を捜し求めているっ!」
「はぁ……」
その時、探検隊の一人の男が高瀬の引く大八車の荷物に気付いた。
「隊長! ここに伝説のスパークリングコーヒーが!」
「何!?」
三人は大八車の周りに群がり、歓声を上げ始めた。
「すごい! こんなに大量のスパークリングコーヒーがあるなんて!」
「我々が捜し求めていた物にこんなに簡単にありつけるとは!」
そんな彼らを見て、高瀬は引き気味にこう話しかけた。
「あの~、気に入りましたらこれ、全部差し上げます」
「本当かっ!」
隊長が歓喜の声をあげた。
そして、三人は一つのケースを開け、一本づつ缶を手にし、その中身を一気に喉に流し込む!
そして!!
「うぇ~」
(あー、やっぱり不味いんだ)
高瀬は心の中でこう呟いていた。
「ありがとう! これで我々の目的は達成された!」
「では、さよなら…」
高瀬は足早にこの場を去ろうとした。こういう輩は、長い時間関わるべきではないと彼の直感がこう告げていた。
その時、隊長が高瀬に声をかける。
「いや待たれぃ! このような物ただで貰うのも心が引ける。代わりにこれを差し上げよう」
彼らが高瀬に差し出した物…それは大八車の上に載せられた樽であった。
「あの~、これは?」
「港で仕入れたコーヒー豆だ。実はこれを使ってスパーキングコーヒーを再現しようとしたのだが、もう用がなくなってしまったのでな。お礼に君に差し上げよう!」
そういい残し三人はあっという間にスパーキングコーヒーを引き、あっという間にその場を去った。
「しかし、樽のコーヒー豆か…」
高瀬は樽の蓋を開ける。
「うっ……」
彼が目にした物は、焙煎されていない、黄褐色のコーヒーの生豆であった。しかも、あまり質が良くないのか、少しすっぱい匂いが彼の鼻を刺激した。
「これって……俺に何をしろと?」
こうして、『スパークリングコーヒー300ml×240本』は、『コーヒー生豆(低質) 一樽』になって高瀬の元に戻って来た。
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『明日』と言っておきながら、アップが1日ずれた事をお詫びいたします。
てなわけで、コーヒー生豆に変わってしまいました。
果たして、これを使いたいと言う人はいるのか!?
次回は、このサイトでおなじみの『誰か』乱入する予定です。