首都圏の震災に備えて国が東京湾岸に整備した「東扇島地区基幹的広域防災拠点」(川崎市、約15.8ヘクタール)が、非常時に利用できない恐れのあることが、早稲田大の浜田政則教授(地震工学)の調査で分かった。周囲には防災対策が不十分な古い埋め立て地が多く、そこが被災して備蓄中の石油がもれるなどすれば、救援物資を載せた輸送船が近づけないという。【石塚孝志】

 拠点は国が約70億円かけて整備し、08年4月に完成した。普段は公園として開放、災害時には、国内外から船で運ばれる物資を荷揚げして被災地や避難所に運ぶ輸送中継基地として機能する。ヘリポートや耐震強化岸壁などを備えた国内初の基幹的広域防災拠点だ。

 浜田教授は、国の中央防災会議が被害予測に使った「川崎市直下の深さ約30キロ付近でマグニチュード(M)6.9の地震が発生」を想定し、防災拠点一帯の地盤変化を分析した。その結果、防災拠点以外の埋め立て地で護岸が最大7メートル海側に動き、大型の危険物タンクが被災する可能性の高いことが分かった。

 95年の阪神大震災では、神戸市の埋め立て地で護岸が約4メートル動き、液化天然ガス(LNG)タンクの配管からLNGが大量にもれた。東京湾は江戸時代から埋め立てが始まり、防災拠点周辺の埋め立て地は新潟地震(1964年)以前に完成したものが多い。64年以前は液状化対策がなされていないため、地震に特に弱い。

 さらに、近畿から東海地方にかけて東南海地震と東海地震が同時発生(M8級)した場合の影響を調べたところ、湾岸にある浮き屋根式の石油タンク約600基のうち、約1割の64基から危険物が流出する可能性のあることも分かった。湾岸地域の地下には軟弱な堆積(たいせき)層があり、地震波の長周期成分が揺れを増幅させると考えられる。

 国土交通省は「コンビナートの耐震化などの安全対策は民間企業の責任。(その被災によって)船が運航できないという想定はしていない」という。浜田教授は「危険物が流出すると東京湾全体に広がり、海上火災の恐れがあるうえ回収に最大数カ月かかる。このような危険の検討は、残念ながら十分されていない」と話す。

 ◇基幹的広域防災拠点

 都道府県単位では対応できない大災害が発生した際、国による復旧活動の中核となる。首都圏では、東扇島地区が支援物資の中継基地となるほか、「有明の丘」地区(東京都江東区)に現地対策本部が置かれる。

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