心中天網島 | 辻村寿和Collection「寿三郎」創作人形の世界

辻村寿和Collection「寿三郎」創作人形の世界

創作人形作家辻村寿三郎の作品を皆様にご紹介いたします。

心中天網島
ジュサブロー館の創作日記
2005年制作

写真をクリックすると大きいサイズで見ることが出来ます。
細かいディテールをご覧ください。

撮影 NIKON D200
AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G

心中天網島は、近松門左衛門作の人形浄瑠璃。
1721年大坂竹本座で初演された。
紙屋治兵衛と遊女小春の心中事件を脚色、近松の世話物の中でも、名作といわれる。
ジュサブロー館の創作日記

紙屋の治兵衛は二人の子供と女房がありながら、
曽根崎新地の遊女・紀伊国屋小春のおよそ三年に亘る馴染み客になっていた。

小春と治兵衛の仲はもう誰にも止められぬほど深いものになっており、
見かねた店の者が二人の仲を裂こうとあれこれ画策する。
離れ離れになるのを悲しむ小春と治兵衛は二度と会えなくなるようなら
その時は共に死のうと心中の誓いを交わした。

ある日小春は侍の客と新地の河庄にいた。
小春は「馴染み客の治兵衛と心中する約束をしているのだが、本当は死にたくない。
だから自分の元に通い続けて治兵衛を諦めさせて欲しい」と頼む。

実は武士の客だと思ったのは侍に扮した兄の粉屋孫右衛門だった。

ジュサブロー館の創作日記

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撮影 NIKON D200
AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G

とうとう兄の粉屋孫右衛門が、商売にまで支障を来たすほど小春に入れ揚げている
治兵衛に堪忍袋の緒が切れ、曽根崎通いをやめさせようと小春に会いに来たのだった。
治兵衛はきっぱり小春と別れる事を決めて小春から起請を取り戻した。

それから10日後、きびきびと働くおさんを他所に治兵衛は
どうにも仕事に精が出ず、寝転がってばかりいた。
「もし他の客に落籍されるような事があればきっぱり己の命を絶つ」
という小春の言葉を治兵衛から聞いたおさんは彼女との義理を考えて
太兵衛に先んじた身請けを治兵衛に勧める。

商売用の銀四百匁と子供や自分のありったけの
着物を質に入れ、小春の支度金を準備した。

しかしそこに運悪くおさんの父・五左衛門が店に来てしまう。

日頃から治兵衛の責任感の無さを知っていた五左衛門は
直筆の起請があっても尚治兵衛を疑って、紙屋にやって来たのだ。

とうとう五左衛門は無理やり嫌がるおさんを引っ張って連れ帰り、
親の権利で治兵衛と離縁させてしまった。

望みを失った治兵衛は虚ろな心のままに新地へ赴く。

小春に会いに来たのだ。別れた筈なのにと訝しがる小春に訳を話し、
もう何にも縛られぬ世界へ二人で行こうと治兵衛は再び小春と心中する事を約束した。

小春と予め示し合わせておいた治兵衛は、蜆川から多くの橋を渡って網島の大長寺に向かう。

そして10月14日の夜明け頃、二人は俗世との縁を絶つ為に髪を切った後、治兵衛は小春の喉首を刺し、
自らはおさんへの義理立てのため、首を吊って心中した。

この作品は1969年にATGで映画化されています

「心中天網島」

監督:篠田正浩
製作:中島正幸、篠田正浩
脚色:富岡多恵子、武満徹、篠田正浩
原作:近松門左衛門

出演:
岩下志麻(治兵衛の妻おさん/遊女小春)
中村吉右衛門(紙屋治兵衛)
小松方正(太兵衛)
滝田裕介(孫右衛門)