世の中は高級なイヤホン・ヘッドホンその他機器がもう随分と溢れ、今や20万でもまぁお手頃…なんて状態になりました。

私もA8000やらHD820やらそういった界隈に手を出してしまって、10万台の機種がお手頃に見えてしまう幻覚と戦っています。

とにかくハイエンドは魅力的で、とにかくコスパが悪い。

 

一方エントリー機種では、しばらく前にはIE40Pro、KXXSなどの1万円台の新星が出ましたし、今はTWSの1万円台も目覚ましい進歩とともに音質を上げてきています。

そんなエントリー界隈に向けて、いよいよ話題の機種がリリースされました。

一般的な人に向けて優秀なイヤホン、狂気に堕ちた人に向けて怪物を、どちらも供給してきたfinalの「A3000/A4000」です。

今回はその2機種を試聴したので感想を書いていきます。

 

↑超お手頃価格!に見える人はもう手遅れです。

 

final A3000

【概要】

2機種のうち、3000円くらい安い方です。モニターライクよりリスニング寄りの楽しさを重点に置いている機種とのこと。

新開発の6mmΦのダイナミックドライバー「f-CORE DU」を搭載しています。

 

同じAシリーズという事でまぁ当然A8000とは比較されてしまうわけですが、共通点としては、音質評価法をA8000から引き継ぎ進化させているという事だけです。

A8000はピュアベリリウムドライバーですから、流石に真似たら1万円台で済むわけがないです…

なので、A3000/4000は新開発のダイナミックドライバーA8000の評価法を使い、あくまでチューニングで近づけるというアプローチのようです。

 

価格は13000円弱。finalが初めて2pin仕様を採用したのは意外ですね。

まぁ今更2pinにした意味は良くわからないですが…

 

重さが軽く、A8000に比べると装着が容易で装着感はかなり良いです。

見た目はつや消しの樹脂。まぁ安っぽいと思う人も居ると思いますね。

私は変なデザインとかダサいロゴが入ったイヤホンでなければまぁ別に良いと思います。

 

【ケーブル】

付属しているのはfinalオリジナルの2pinケーブル

見た目は既存のブラックケーブルっぽいです。シルバーコートでは無いですね。

取り回しは悪くないです。

ただやっぱりシルバーコートケーブルの綺麗さは魅力的だったので、廉価版感はちょっとしますね。

0.78mm、溝付き2pin仕様です。

 

【装着感】

A8000はBシリーズから続く角張ったシェルが特徴で、それが祟って長時間の使用でズレてくると重さが一箇所の角に集中してしまい、耳に当たって痛い事が問題点に上がる事がありました。

A3000は筐体が軽いこともあり、また角の丸みがやや強くなっているので装着しやすい形状になっています。

長時間使用も問題なさそうです。

 

【音の特徴】 

   <帯域バランス> *主張の強さ
   *低域 >>>>>>>>--  8 /10
   *中域 >>>>>>>---  7 /10
   *高域 >>>>>>>>>-  9 /10


     <印象評価>   *質感の良さ
       *低域  7.9 / 10点

       *中域  8.2 / 10点
       *高域  6.4 / 10点

 

※評価環境として、純正イヤピース、純正ケーブルを使用しています。

 

A3000の音の特徴は、通常のリスニングに適した帯域バランスだと言えます。

A8000やA4000に比べるとリスニング向けの一般的なIEMの聴こえ方に近いです。

 

低域はやや深めに出ています。

深めではありますが、そこまで量感や音圧が強いわけではないです。

少し強調されていて、フロアの低さがやや感じられるタイプです。

 

中域はAシリーズ全体に言えることですが分離感・解像感が充分あり、他の帯域との被りもなく良好ですね。

ただそれほど特徴的な帯域ではないです。

どちらかと言えばAシリーズは高域・低域の差に個性がある気がします。

 

高域はやや刺激が強く、刺さる音は刺さってくるタイプの音がします。

ハイハット系の音で喧しさを感じることがあるかもしれません。

どうしても価格帯のせいか高域は少し荒っぽさを隠しきれない所がありますが、音質としては同価格帯で十分戦えるレベルにはあります。

あくまでも価格なりといった所でしょうか。

 

【傾向】

<ドライ>---★-0-----<ウォーム>

Aシリーズのfinalの音作りに共通していますが、ウォームな要素はあまりありません

アタック感とエッジでカチッとキメに行くタイプの音ですね。

高域が乾き気味の傾向があるので、比較的カラッとドライです。

 

 

<薄味> -----0--★-- <濃味>

音の濃さで言えば、低めから支えるタイプのリスニング型の音です。

ドンシャリという程ドンシャリでもないですが、バランス良くノリの良い音です。

なかなか悪くない勢いの良さですね。

 

【総評】

オススメ度  [ ☆☆☆☆☆☆☆★-- ]  7.8  (試聴)

 

A3000は、いわゆる「普通のイヤホン」をAシリーズの評価法を用いて作成したようなイメージです。

A8000のような変態的な思想を、変態的な技術で作り上げたような特異さはほとんど無い。

あくまで一般的に好まれるタイプの、ごく普通の良い音を一般の方に届けるというコンセプトに感じました。

コンセプトからするとEシリーズなどにも近いかもしれませんね。Eシリーズより音はかなりクールですが。

後述しますが、A4000があまり合わない人も居る事を想定すると、こういった「受け皿」的な人に好かれやすいキャラクターを一緒に出すのは良い事だと思いました。

A3000/A4000は、同期としてお互いを補う関係にあると思います。

 

A3000については以上です。

次はA4000をレビューしていきます。

 

 

 

final A4000

【概要】

こちらは15800円、E4000などと同じ価格のエントリー機種ですね。

色味が濃い紺色で、黒のA3000とは差別化されています。

その他の概要・ケーブル・装着感は概ねA3000と共通ですので省略します。

 

【音の特徴】 

   <帯域バランス> (主張の強さ)
   *低域 >>>>>>>>--  8
   *中域 >>>>>>>>--  8
   *高域 >>>>>>>>>-  9


     <印象評価>   (質感の良さ)
       *低域   7.9 / 10点

       *中域   7.8 / 10点
       *高域   7.2 / 10点

 

※評価環境として、純正イヤピース、純正ケーブルを使用しています。

 

A4000の特徴として、A8000に近い帯域バランスが挙げられます。

A3000の普通のIEM的な音とは対照的に、Aシリーズとしての後継を目指したような雰囲気を感じますね。

 

高域がA4000もやはり少し雑味を感じます。やや粗く、音の粒がザラついています。

音が弾けるアタック部のエネルギーがやや強く、少し主張が強く感じます。

とは言え少し気になる程度で、音源によっては刺さるが、通常の曲であればキリッとした硬めの気持ちいい高域の表現になります。

傾向としては刺さる可能性があるので、あまり大きな音量で聴かないように。

 

低域と中域は無難にまとまっており、必要十分な量感と質感です。

A3000/A4000を聴いていて、低域はA8000やB3に見られるアタック感に優れ、キリッとした輪郭を感じられるスピード感のある低域をしっかり受け継いでいるなと感じました。

この点は良かったです。

 

※余談※

「低域の量と圧」をアピールする為に、低域の輪郭をぼかして深い低域を表現しようとするアプローチが時々、さまざまなメーカーのイヤホンで見られます。

個人的にはあのアプローチが大ッキライで、あの手法はローテンポかつ響きを重視したクラシカルな音楽に適した手法だと思います。

現代音楽やバンドサウンド、ましてやクラブサウンドにはあの手の輪郭のユルい低域は一切不要であると思っています。

ユルい低域を聴かされた瞬間「あ、これは買わなくて済むな」と思うくらいですね…

まぁエッジが効きすぎてカリカリした低域もキツイ主張はするのですが、中域にベタッと絡んでボヤケた雰囲気を残していく輪郭の甘い低域よりかはいくらかマシです。

 

Aシリーズとしては気になる音場・定位感

A3000が音場感は極めて普通のイヤホン的だったのに比べて、A4000はA8000の遺伝子を必死に継ごうとしている雰囲気を感じます。

A4000はどの帯域においても一定のアタック感を維持していて、抜けの良さを持っています。

その傾向を活かして遠い音(音量の小さい音)にもアタックを割としっかり付与している印象を持ちました。

そうなると遠い音でも鳴ったのがハッキリわかり、遠目に定位感が出ます。

つまり「トランスペアレントな音」に近いイメージが出てくるわけです。

A4000は一聴して「おお、変な定位感、独特な音場感だな」と感じました。

それは奇しくもA8000を初めて聴いた人にも度々見られた感想です。

A8000の場合は、恐ろしいまでに丁寧で繊細な出音のおかげで自然さを損なわない音場と定位感を得ていました。

が、A4000はドライバーやハウジングの違いもあり、そこまで自然な定位には聴こえませんでした。

ただ、A4000がA8000から受け継ごうとした結果得た面白い音場・定位感は個人的には良いと思います。

結局A4000は直接A8000と戦うわけではなく、実際はその他の1万円台の機種と戦うわけです。

その点で言えばA8000から譲り受けたA4000の定位感は他にない武器だと思います。A3000にも無いですし。

 

【傾向】

<ドライ>--★--0-----<ウォーム>

Aシリーズ共通のキレ・エッジ重視の音です。ウォームな音はせず、カチッと決めてくるタイプの音です。

A4000は特にアタック感が特徴なので、低域と高域が締まっていて中域が強く主張しない為、こういう傾向になる気がします。

 

 

<薄味> -----0--★-- <濃味>

こちらは音の濃さやノリ感というタイプの濃さではなく、定位の独特さを持ち味として評価しました。

音の出方として、良好な解像感と共に独自のキャラの濃さを演出しています。

 

 

【総評】

オススメ度  [ ☆☆☆☆☆☆☆☆-- ]  8.3 (試聴)

 

A4000は、A8000的な定位感を廉価に再現をしようと試みた実験的な機種だと感じました。

発売前にfinalSTOREに行った時A3000/4000の試聴機がまだ無かった為、聴いた機種があります。

final MAKE1です。そこにはfinalSTOREの店長が手掛けたチューニングモデルがあり、話題にもなっていたのでちょっと聴いて帰ろうと思い試聴しました。

そのMAKE1は物凄く独特の定位感で、音があちこちから聴こえてくるような超個性的な音でした。

A4000には、その店長チューニングのような「個性的な音場」に近いイメージを受けました。

A8000とまでは行かないが、なんとか近づけないかと試行錯誤した、そんな雰囲気を感じる音でした。

 

ちなみに、どちらも1万台のイヤホンとしては十分な実力を持っています。

私も、初めての一本にはオススメする可能性は高いですね。

 

 

 

 

 

 

以上、新しいAシリーズ A3000/4000 のレビューでした。

A8000ユーザーとしてはなるほどな~と思える点もいくつか見つけられて大変良かったです。

A8000を意識したA4000と、同じ評価メソッドを用いつつA4000とは違う方向を目指したA3000。

確かに好みが分かれるかもしれませんが、どちらに好みが分かれても良いように作られた兄弟なのかな、と。

そんな事を思った試聴でした。VR3000も控えて居ますし今後が楽しみですね~。

皆さんはどちらが気になりましたでしょうか。

 

いい加減色々書かないといけない試聴機種が多すぎるので、来週また一本書こうかなと思います。

長々と駄文を読んで頂きありがとうございました。

 

 

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