妥協を許さない味筋
疲れた脳と身体に活を入れるべく、今夜はザールシュタイン の新酒 2009年産のグラウシーファーを開けよう。
昨年まではカビネット・トロッケンとしてリリースされていたものだが、このヴィンテージから単独所有する特級畑
Serriger Schloss Saarsteiner ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナーの主たる土壌にちなんでのネーミング。
既にpfaelzerweinさんやラブワインさん が飲まれているが、先入観なしに臨んでみる。
淡黄緑色。少しミルキーな青リンゴ香に、サイダーっぽいニュアンス。クリーンな香りだが僅かに燻製っぽさあり。
シャープで切れの良い酸が舌の両サイドを刺激し、凝縮度も満点。酸のレベルは2008年産 に勝るとも劣らない。
果実味は新鮮さだけでなく意外にしっかりと存在感があって、例年ほど酸においてきぼりは食っていない。
そしてミネラルはと言えば、決して焦げ臭さを感じさせずに、酸と一体化して上手く清涼感を引き出している。
余韻にも酸と控えめな鉱物感が舌の上に長時間持続。時間が経つと果実味が引っ込んで、いつしかある種の
塩味と化し、これが強烈な酸と協調してますます破壊的な味筋へと突き進んでいく。決して万人受けする味とは
思えないが、リースリングの究極のクリーンな味筋とはこういうモノを指すのではないだろうか。
翌日はややパワーダウン。それでも際立つ新鮮な酸と、果実味を介在させない直截なミネラル。やはりそれほど
焦げ臭くはならない。これが土壌なのか酵母の違いなのかは判らないが、妥協を許さない孤高の酸とミネラルが
ここにある。86/100
ネーミングがGrauschiefer(灰色シーファー)と変わっても、ここの辛口カビネットはやはりこういう味筋である。
畑の立地条件にもよるが、青色シーファーほど果実味が乗らないのは土壌の保水力が弱いのではないか。
いずれにしても、畑のテロワールであるとか造り手の意志であるとかを見事に表現した味だと思う。
それにしても歯にも胃にも堪えるぐらいに強烈な酸。今後もエバートの旦那 とお付き合いするためには
一度ちゃんと知覚過敏の治療をしておかないといけないなぁ、などと思っている。
2009 Riesling Kabinett trocken -Grauschiefer-
Weingut Schloss Saarstein (Serrig/Saar)
A P Nr 3 555 014 06 10,Alc 11.5%vol,9.50€