鳩山会館 でまったりバラを愛でたあと、その高台からは首都高速の5号池袋線を挟んで
向かい合わせにある台地の方に行ってみたですよ。文京区の関口、目白台といったあたり。
ま、椿山荘があるあたりと言えば、想像しやすくなりましょうかね。
この界隈は予て歩き廻りたいと思わせる立ち寄りポイントがいくつかあるんですが、
なんとはなし敷居が高いこともあり、踏み込んだことのないエリアなのですなあ。
このときこそチャンス!ではあったものの、家を出るのが遅かったもんで立ち寄りはひとつだけ。
これまで一度も行ったことのなかった講談社野間記念館に寄ってみたのでありました。
開催中であったのは「近代日本画壇の精鋭たち」という展覧会。
先に新潟の敦井美術館 で京都画壇の系譜をちらりなぞっていたのが幸いでありましたよ。
講談社創業者の野間清治による日本画コレクションを中心に作品が所蔵されていて、
その中から年間何回かのコレクション展を行っているわけですが、
やはり季節感は相当に意識されているところかと。さわやかな作品が並んでおりました。
(もっとも気候はさわやかさを通り越した感ありですが)
分けても、上のフライヤーで右側に配された土田麦僊の「春」は
ほのぼのとした題材ながらあたかも桃源郷であるかのよう。
それだけにむしろ「これは彼岸なのかも」的な想像までしてしまうのですなあ。
全体像はこんなふう。入場券にも使われているくらいですから、
コレクションでも人気作なのでしょう、きっと。
中央の棚仕立てになったところに「ほわん」とした花がいくつも描かれていますが、
この「ほわん」の生む効果といいますか、これは実物をご覧になってもらわんことには
伝わりませんなあ。ここ、注目です。
他に横山大観やら竹内栖鳳やらと大家の作も並びますけれど、
もうひとつ目をとめたのは小茂田青樹の連作「四季花鳥」でありますね。
といって、日本画に疎い者としては「志茂田景樹に似てる名前だったけど…」と
俄かには思い出せなかった体たらくではありますが。
とまれ、その小茂田青樹という画家、
大正から昭和初期に活躍したようながら実にポップな画面なのですよね。
日本画は時折、こういうハッとさせられる作品に遭遇するのも楽しいところですなあ。
この画家の作では「十二ヶ月図」も同様に、今のリビングに飾っておいても全く違和感のない
モダンさがあると思ったものでありますよ。
ところで、野間記念館にはいろいろな画家の手になる「十二ヶ月図」があるようで、
このときには川合玉堂、伊東深水 、上村松園、山口蓬春ほかの同様作が並んでいたという。
一月から十二月までの風物や情景を色紙大のサイズで連作したものですけれど、
これだけたくさんの画家が手を染めているというのは、ニーズがあったからでしょうね。
ですが、そのニーズというものの代わりが
今では絵入りカレンダーが果たしているということになりましょうかね。
季節季節をイメージさせる絵や写真を眺めるだけでなくひと月の暦が見られるカレンダーは
実用的ではありますけれど、反面で実は絵を眺めている余裕もなく日数ばかりを勘定して…
というのが昨今でもありましょうか。
やはり時折にもせよ、美術館のようなところで
日数も時間も忘れるひとときが必要なのではと思ったりしたのでありましたよ。