池袋の東京芸術劇場で読響 の演奏会を聴いてきたのですね。

いつも何かしでかすことを期待してしまうシルヴァン・カンブルラン の指揮でしたけれど、

今回はさほどに奇を衒わずといったところでしたでしょうか。

曲目はハイドン の交響曲第103番「太鼓連打」とマーラー の交響曲第1番でありました。


読売日本交響楽団 第196回土曜マチネーシリーズ@東京芸術劇場


このところあったかいんだか、ひんやりなんだかという不順な天候が続いているせいか、

身体の方はどうも疲れが抜け切れずにじんわり蓄積しているような状況であっただけに

ハイドンのゆったり優美なメロディーにはまるで麻酔に掛けられたように眠りに誘われ、

覚醒しても顔からすうっと血の気が引いてひんやりしているような感じ。


これはこれで(自分のみならず)会場のあちらこちらから

アルファ波が立ち上っていたであろうと想像すれば、

聴き手の心に安らぎをもたらすいい演奏であったと言えるのではなかろうかと。


取り分け第2楽章でしたか、ヴァイオリン・ソロで奏でられるチャーミングな旋律は

夢うつつの境を彷徨わせてくれてしまったり。

その意味では、この4月に着任したという新コンサートミストレスは

存在感をアピールしたということになりましょうか。


とまあ、安らぎのハイドンから休憩を挟んでマーラーの交響曲第1番。

「巨人」というタイトルがすっかりお馴染み感でありますけれど、

5楽章構成だったハンブルク 稿のときに付けた「巨人」というタイトルを

その後4楽章版にしたときに取ってしまっているわけですから、

本当は「花の章」付きの場合には「巨人」と言えるのかもしれませんですね。


とまれ、カンブルランの演奏は比較的ゆっくりめで、

その分、とってもたっぷりと聴かせてくれるという印象でありました。


個人的にはも少し旋律の移り変わりにコラージュ感があるといいなとは思いましたけれど、

曲の終わりに至って金管が高らかに鳴り響きますと、

もはや曲や演奏のよしあしはともかくとして(良くなかったと言っているわけではありませんです)

高揚感に包まれてしまう。爆演系のカタルシスてなものでありましょうね。

演奏会ならではのもので、これだからライブで聴くのはやめられないとも。


と、そのような演奏会だったわけですが、今さらながらにちと引っかかったのは

第3楽章に出てくるフランス古謡「フレール・ジャック」の引用でありますね。

日本では一般にフランスの「フレール・ジャック」というよりも

英語の童謡「Are you sleeping?」としての方が知られておりましょう。


英語版の歌詞では眠っているの?と問いかけられているのはブラザー・ジョンで、

ジャックからジョンに代わってしまってますが、これはどうやらその後に続く鐘の音、

「Ding Dang Dong」と韻を踏むための改変でもあるようですね。


で、童謡的には「ブラザー・ジョン」の何たるかに言及されることはありませんけれど、

家族的な意味での兄弟ではなくして、宗教的な言い回しであることは

大人になってみれば分かることではありましょう。


元のフランス語での「フレール」も同じだということですから、修道士ジャックてなことになる。

英語でのジョンは語呂合わせですけれど、フランス語の修道士ジャックは、

はて特定の人物を指しているのかどうか…。


このあたり、決め手は無いようですが、

一説にはテンプル騎士団 最後の総長ジャック・ド・モレーのことではないかとも。

そうなってきますと、「ジャック、ジャック、眠っているの?朝の鐘を鳴らしてよ」という歌詞の

眠りはジャック・ド・モレーの死を表しているようにも思えてきますですね。


だからこそというわけではありませんけれど、Wikipediaの「オーストリアなど一部の地域で

葬送の挽歌を連想させるような短調で歌われていた歴史がある」といった記載は

マーラーが「フレール・ジャック」を短調で引用した背景にもなっているような。


話はさらに飛躍してしまうものの、フレール・ジャックがテンプル騎士団絡みとすれば、

「プレスター・ジョン伝説」との混同なんつうことがあったのではとも思えてくるわけで、

英語版の「ブラザー・ジョン」は単に韻を踏むだけの改変ではないのかも…と。


ま、ここまでくると妄想なのですけれど、

いやはや演奏会の話からとんでもないところにたどりついたものです(笑)。


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