高崎生まれの歌人・吉野秀雄 の歌碑がある高崎公園を抜けてみますと、
徳川四天王のひとり、井伊直政が築いた高崎城の名残りを留めるお堀端に出るのですね。


お堀の向こう、かつての城内に高崎市役所がありまして、展望ロビーが開放されているとのこと。
展望ロビーが設けられるだけの建物とは、お堀端から見上げてみれば、こんな具合です。


高崎市役所の威容?


こんなに堂々たる市役所を建ててしまう高崎市って?と思うところですけれど、
ついつい歴史的因縁なんではないかなと思ってしまいますね。高崎VS前橋という。


前橋市役所の現在の建物は1981年に竣工した12階建てだそうですが、
高崎市は新しい市役所を21階建てとして1998年竣工させるのでありますよ。
ですが、県庁所在地としての意地があるのか、前橋市では群馬県庁の新庁舎を
高崎市役所完成翌年の1999年、33階建てで竣工させるのですなあ。


この新しい群馬県庁舎は全国都道府県の中で

東京都庁舎 に次いで2番目に高い建物なのだそうですね。
張り合った結果としてこんなになっちゃいましたということかもしれませんが(単なる想像ですよ)、

そんなでっかい建物が群馬県に必要なのかとはならなかったですかね…。
(そも都庁にしてもあんなに高い必要があるのかとも思うところながら…)


歴史的因縁と言って、有名なことですからご存知の方も多いとは思いますが、
ここでは改めてWikipediaその他からかいつまんで、まずは県名の点から。


そも明治4年(1871年)10月の廃藩置県に際しては「高崎県」が誕生するも、

たったの3日後には「群馬県」に。


やっぱり最初からそうなのかと思われるわけですが、
旧高崎藩も旧前橋藩も双方自らの地名を県名としてほしいとの諍いからだそうですね。


政府としては(面倒だものだから?)

高崎、前橋両方が含まれる「群馬郡」から持ってきて「群馬県」にしてしまったようです。

どちらの名前でもないことによって県名問題は収束したのかもしれませんけれど、
収まらないのは県庁所在地の問題ですね。


当初の「高崎県」という名が示すとおりに県庁所在地は高崎と考えられたわけですが、
高崎城址に県庁舎を作ろうとしたところ、井伊直政が家康から築城を命じられたように
交通(つまりは軍事上でも)の要衝であったことから、高崎城址は兵部省に接収されてしまい、
県庁舎を置くことができなくなってしまう。


そこで、やむなく前橋城の方に仮住まいとなるも、
これがそのまま前橋に県庁舎を建てることになっていってしまい、

これには高崎の人びとが不満を爆発させたどうでありますよ。


紆余曲折はありますが、やっぱり対立が面倒なことも手伝ってか、

明治6年には群馬県がなくなり、今の埼玉県と一緒にさせられてしまうのですな。


ところが、周辺地域の再編とともに明治9年に群馬県は復活、
この時に県庁は高崎とされましたけれど、

やはりちゃんとした県庁舎の無い高崎では仕事がしにくかったようで、
県令(県知事)自ら県庁を前橋に置くよう政府に願い出て、政府はこれを許可。
またしても高崎の人びとは黙ってはおられず、大嘆願運動が展開したそうな。


余りの騒ぎに県令が

「前橋を県庁とするのは一時的なもので、やがて高崎に戻す」と言ったことで一旦は沈静化。
しかし、その後いっかな県庁が高崎に戻されることはなく、県令は「約束はしていない」と言い、
裁判にまで持ち込まれるも、明治15年の判決で高崎市民は敗訴となったという。


大正になっても県庁移転が叫ばれたりしたようですけれど、

そのまま県庁所在地は前橋のまま現在に至る。

どうも高崎は泣き寝入りをさせられた感じがしないでもないという。


その後の高崎はどうやら県庁所在地に拘るのでなく
実質的な県下ナンバー1都市を目指してきているのかもしれませんですね。
つまりワシントンを目指さず、ニューヨーク を目指すといったふうな。


周辺自治体と合併を続けることで今や人口は前橋市を上回り、
高崎駅にたどり着いたときにも、人が溢れかえっていることに大きな驚きを感じたものです。


とまれ、かつて軍隊に阻まれた県庁建設の予定地であった高崎城址には
かくも大きな市役所が出来上がり、最上階の21階には展望ロビーがある。
で、エレベータですい~っと上がってみれば、これが何とも見晴らしがいいではありませんか。


関東平野が山岳地帯になっていく際に位置するだけに、山々の遠望がいいですなあ。
近すぎず遠すぎずの感じで、赤城山・榛名山・妙義山という上毛三山がぐるりと見えるという。


もっともガラス越しに撮った写真は本人がぼんやり写り込んでしまう妙なものとなってしまい、
ここには榛名山 の山並みを望むものだけ挙げておきましたですが、実際にはずっといいですよ。


高崎市役所展望ロビーから望む榛名山


高崎で観音様や何かにまで足を伸ばすことはできないけれど、

ちょっと時間があるというときには展望台として立ち寄ってみるのもいいかもしれませんですね。


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