ライン川 を少しばかり船で遡り、アスマンスハウゼン からリューデスハイム へと戻ってきました。
ここでは当初の目論見としてあった行動に出るかどうかが思案のしどころであったのですが、
先にニーダーヴァルト
で右往左往したことによる体力消耗が昼食時間と船上での休憩とを取ることで
かなり改善した(と過信した)ものですから、意を決して歩き出したのでありますよ。
赴く先は、朝のうちに乗ったゴンドラ・リフト
から垣間見えたこの場所、聖ヒルデガルト修道院。
お天気は午後になってすっかり回復基調でありましたので、丘の向こうまでの歩きになりますが
「ヒルデガルトの道(Der Rüdesheimer Hildegard-Weg)」のコースを辿って周回の6.7kmほどは
およそ1時間半弱の程ほどのウォーキングであろうかと想定したのでありました。
ところで、この聖ヒルデガルトですけれど、
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(von Bingenはレオナルド・ダ・ヴィンチ
のda Vinciに相当)、
つまりリューデスハイムの対岸にあるビンゲンのヒルデガルトと呼ばれた女性でして、
まずビンゲンに、そして後にリューデスハイムに女子修道院を開いたという12世紀頃の人なのですね。
幻視を経験した神秘家としても知られ、薬草の知識も豊かで医術にも通じ、
さらに作曲も行ったというかなりマルチな才能を発揮した人だったようで、
取り分け曲作りという点ではキリスト教以降では最初の女性作曲家ではないかとも言われるようです。
個人的にその名を聞き及んでいたのもその点に関してでありまして、
相当前(CD発売は30年くらい前だったようですが、その前にレコードであったかも)に
「Vision」(要は「幻視」ですね)というタイトルのアルバムがわりと話題になってのではなかったかと。
実はその録音を聴いたことはなかったですが、
リューデスハイムにこの修道院があると知ってから、
いくつかYoutubeで探して聴いてみましたところ、
これが何とも極上のヒーリング・ミュージックではありませんか。
(こういう言い方には、聖ヒルデガルトはご立腹されるやもですが)
俄然、行ってみようか気分が高まったという次第でありますよ。
もっとも修道院自体はヒルデガルト創建当時のものであるはずもなく、
一旦は荒れ果ててしまったところに20世紀になって再建したという比較的新しいもので、
聖ヒルデガルトの道を辿っても本当にそこに本人が足跡を残したかは、
何せ昔と土地区画も変わっておりましょうし、何ともいえないところではありますが、
そこは雰囲気ということで。何しろ音楽からして雰囲気ですから。
ということで「Hildegard-Weg」のコースマップに従って、
最初は石畳の道、ついで砂利道になりましたが、登りを開始したのでありますよ。
途中途中で、いかにも修道院に続く道であろうという碑があったり、
「Hildegard-Weg」のコース上であること確認できる目印(修道女マーク)があったり、
はたまたいかにも修道院を訪ねた帰りでもあろうかというご高齢の方々とすれ違ったりして、
迷い無く進んでいったのですね、今度は。
ただ、こんなにも登るんだっけ?というくらいに砂利道の登りが続き、
持ち直したと思っていた筋肉の状況もいささか怪しくなってきたところで、
どうやら丘の上に到達。こんな具合にすっかり平坦になりました。
この平らな野っ原をずんずん進み、もうさすがに着いてもいいんじゃないかと思った頃、
野っ原の外れでそこから先は森…というところにこうしたものを発見。
もはや敷地内であるかと気をよくして木立に踏み込んでいきますと、やがて車道に突き当たる。
周囲はすっかり森の中で、車道を行くしかないようですが、はて右に行くか?左であろうか?
左はカーブして木立に隠れて先が見えない反面、
右は一直線に見通しがきいた状況からして、とりあえず右へ。
ほどなく建物らしきものが見えてきたので「おお、ようやく…」と色めき立ったところ、
柵の看板には「Ponyland」と…。
奥のほうには、確かに小馬が垣間見え、子どもの歓声らしきものもほの聞こえてくるような。
修道院への交通手段としてはバスなどの公共交通機関はなく、歩くかタクシー利用かのはずが、
ここにはどうやらバスが発着しているようすもある。
もしこのあたりに修道院があるのであれば、バスの案内があってもいいはずでしょうから、
おそらく近くにあると考えることに妥当性は感じられないわけなのですね。
「Ponyland」に入り込んでいって「修道院はどこですか?」と尋ねる手もありましたが、
それをしなかったのは、「近くではない」という現実をダメ押し的に突きつけられたくなかった…
からでありましょう(自己分析的に…)。
「またやってしまったか…」と、
どっぷり徒労感に浸りつつ出した結論は来た道を戻るというもの。
どこで間違ってしまったかと思い返しながら、いや増すくたくた度合いに
途中、奇妙な?植物にめぐり合ったくらいを収穫として、このままリューデスハイムの町に下りるかと…。