申し遅れましたけれど(というほどの重大ではありませんが)

オスロの市庁舎 前広場は海に面しておりまして、
実に海洋国ノルウェー らしいところもであるかなと思うところなのですね。


市庁舎を背にして左手にある小高い丘に登っていきますと、

こんなふうに見渡すことできるのでありますよ。
湾内クルーズなどのボートが発着する桟橋も見られます。


オスロ市庁舎前桟橋


ということで、この小高い丘の上にある

アーケシュフース城(Akershus slott)という古城へと向かったわけでが、
ここで一度さらっとノルウェーの歴史を振り返ってみるといたしましょうかね、予備知識として。

山路を登りながら考えた…とまあ、そういうわけです。


ノルウェーの歴史も記述されたものが残されるのはヴァイキング時代からということになりまして、
主にイギリス 北辺を脅かしたのがノルウェー・ヴァイキングでもあるようです。


略奪を伴う侵攻や交易などが落ち着きを見せた後も
ヴァイキングが切り開いた航海路によるつながりの故か、

ノルウェーはイギリス方面との誼もあるようですね。


ちょっと前に触れましたノルウェーが誇る作曲家のエドヴァルド・グリーグ は、
曾お爺さんだかがスコットランドの出身だそうで、

何でも駐ベルゲンの領事としてノルウェーに来ていたのだとか。


今でこそ首都オスロが国内一番の人口を抱えているものの、

かつて漁業、海運業を柱としていたノルウェーでは

外洋に開けたベルゲンこそが随一の街であったようですから、
外国からの領事もベルゲンに駐在していたのでありましょう。


と、イギリスとの関係はともかくとして、

もっと近隣の諸国との関係はどうかということになりますが、
陸続きに隣り合うスウェーデンもよりも海を隔てたデンマークとの関係が深いようでありますね。


これはなまじ軒(地続きの国境)を接していると

何かといさかいがあったりてなこともあるかもですし、
ヴァイキング時代に行動を共にするような関係がノルウェーとデンマークにはあったという

伝統に根ざしたところもありましょうか。
(スウェーデン・ヴァイキングはもっぱら東への内陸ルートを目指した)


その後のノルウェーは、

デンマークと連合していた時代、スウェーデンと連合していた時代が続きますが、

いずれもデンマークやスウェーデンが主であり、ノルウェーが従の関係にあったようです。

ヨーロッパでも北辺のしかも端っこに位置するノルウェーは

言わば辺境の地であったということですかね。

最終的に純然たる独立国として独り立ちするのは1905年だそうから、

想像以上に従たる立場だったのではなかろうかと。


ところで、この1905年、当時はスウェーデンとの連合下にあったわけですが、
ノルウェーが一方的に連合解消に動くんですな。
黙っていられないのはスウェーデン、「従たる立場で何事か!」と。


ですが、紆余曲折を一切端折ってしまいますと、

スウェーデンとの連合解消、つまりはスウェーデン王を排除する政変は

無血革命として一切の戦火を交えることなく成就するのでありますよ。


そしてこうした経緯に鑑みて、

ノーベル平和賞だけは(他の賞のようにストックホルムではなく)オスロで授与式が行われるという
オスロ市庁舎のところの話につながるわけですね。


で、スウェーデン王を排除して独立国となったノルウェーはどうなったか。
何とまあデンマーク王室から王様を迎えて、ノルウェー王国となりました。
どうしても「王国」がよろしいのでありましょうか…と思わなくもありませんが、

1905年といえば20世紀とはいえ、前世紀から余り気運は変わってないのでしょう、

ヨーロッパの諸国は王国が当たり前的な。


他の大国でも縁戚を頼ってよそから王様を連れてきたりしてますし、
それこそ縁もゆかりもない人を戴いてしまうのはスウェーデンにもありましたし、

たしかルーマニアなんかにもありましたですねえ。


とまれ、こうしたことからもノルウェーとデンマークの(愛憎からまる?)微妙な関係が

スウェーデンよりも優位に置かれるように見えるのは、
何やらフィンランドとスウェーデンとロシアの関係を少々思い起こすところでもあろうかと。


だいたいからして、スウェーデンは一時期ノルウェーにおよそ目を向けていなかったのが、
ロシアにフィンランドをかっさらわれて、スウェーデンとしては

「それじゃあおいらはノルウェーだ」とばかりにデンマークからかっさらったりもしているわけで、

やっぱりかっさらっちゃう方よりは元の鞘の方が懐かしいというか…。


という具合にかなりざっくりで済ませてますが、

要するにノルウェーは周囲から見ると弱い国だったとなりましょうか。
このことを知ってるだけでも、アーケシュフース城に辿りついたときに

話が分かりやすくなるような気がしたものですから、ちと思い起こしておいた次第でありますよ。