387.マカオの白い家~あまりに殺風景で… 高貴な方を迎える気持ちが足りぬではないか! | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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仁川空港に到着すると 黒いマスクで顔を覆った運転手は 一言も発することなく我々をコインロッカーへ誘導し 妃宮さまと私の携帯電話を没収して去って行った

コインロッカーには二人分の偽造パスポートとトラベラーズチェック 紙幣はパタカ…行先はマカオのようだとそこで理解した
だが…
「妃宮さま…実は…」
先刻のキム内官からの電話の内容を伝えると あまりの衝撃にその場へ崩れる妃宮さまを なんとかベンチに誘導する
このまま彼を信用して良いものか…今殿下がどんな御気持ちか…
揺れる御気持ちと闘っておられるのか 少し考え込まれたのち 妃宮さまは

「お姉さん…あたし…罪をかぶるわ?」
やっぱり止めて景福宮へ戻ろうと仰って欲しい私の望みは打ち砕かれた
「妃宮さま!?」
「そうしましょう?どうせ此処を出て行くんだもの…
謹慎中の身で勝手に居なくなった時点で 既に廃妃決定かもしれないし…
いつか戻ってこられたらと思っていたけど…それがダメになってしまうかもしれないけど…
今はシンくんを救いたいの」

確かに今戻った所で 出るときと違って 入宮のチェックは厳しい
出たはずの無い妃宮さまが いつの間に外へ出たのかとお叱りを受け 乾清宮の件に関わったのかと疑いをかけられる
皇太后か義誠大君殿下 あるいは別の何者かが 白を黒に染める証拠を準備して待ち構えて居る可能性を思えば 今は彼を信じてこのままマカオへ退避した方が安全と言えるかもしれない

私は 妃宮さまの書かれた御手紙をバイク便でキム・ドンソク宛に送って 皇帝陛下宛の郵便物に紛れ込ませてもらうよう キム内官へ電話を掛けた
「大切な手紙をバイク便で届けるから 必ず貴方が受け取って?後を頼むわね じゃ」
「えぇっ!?チェ・スヨン!ちょっと待てよ チェ・スヨン!」

え?携帯電話を奪われた筈…ですって? 同僚の電話番号くらい手帳に書いてあるわ?
全く…これだからデジタル世代は…
マスクの男も手帳の存在に気が及ばぬから呆れたものだ


マカオの空港に着いた我々を 迎えに現れたのは 恵政殿皇太后の甥で 義誠大君殿下の従兄であるソ・ジテ氏だった
何を隠そう 私の偽造パスポートを急ぎ作らせたのは 彼だ
どうやったのかって?ふん 私は偽造パスポートを作ってくれなど一言も言っては居ない
不審な電話に悩まされていると殿下にご報告しない代わりに 妃宮さまの口から電話の相手がソ・ジテ氏だとやっと聞けた後 彼に連絡を取り
”貴方の計画を成功させたかったら私の口を封じるしかない 妃宮さまのお命を奪う気ならまず私を先に 連れ去る気なら私も共に”と言ったまでだ

その電話でソ・ジテ氏は私に 妃宮さまの命を奪うなんてとんでもない!義誠大君殿下を擁立するつもりも誓って無い…と言った
皇太后さまの計画を逆手にとって 手駒の振りをしつつ妃宮さまを安全な場所にと…
今 皇太子殿下は廃位に追い込まれそうな状況で 妃宮さまの身の安全をお守りするだけの余力が無いのは否めなかった
そう思えば 彼の手を借りるのも致し方無いと思い この計画に伸る事にしたというのに…まさか殿下に無実の罪を被せようと?!

妃宮さまのお命を危険にさらす気が無い事が確認できたからには 迂闊に刺激しない様 妃宮さまにも彼にも 余計な口出しはしないと決めたが…
義誠大君殿下は この事をご存じなのだろうか?本当に うまくいくのだろうか…?


私の荷物を合わせても数泊の旅行かと思えるほどの少ない荷物に ソ・ジテ氏は表情を暗くした
「チェギョン…こんなことになってごめん
何を言っても言い訳に過ぎないけど…
皇太后さまを 止められなかったのは ユルひとりの責任じゃない
ただ 信じて欲しいのは 火事の件は知らなかったんだ そんなの計画に無かった…
緊急搬送された皇太后さまは命に別状無いというニュースに 驚いたんだ
勿論ユルも関わってないはずだ
もしかしたら誰か他の者の仕業かも…」
おのれソ・ジテ…そんな言葉がなんの慰めになる?!
妃宮さまは もう二度と戻れなくなってしまったかもしれぬというのに…
そもそも妃宮さまを呼び捨てにするなど許される事ではない!!

ともかく 大切な皇孫を身篭っておられるのだ
妃宮さまの過ごす屋敷よりもまず 病院へ案内させ 母子ともに問題ないという診断を受けてようやく 安堵した


白い階段を数段昇って 高さ3メートルも有りそうな木製のドアを開け 我先に中へ入ろうとするソ・ジテ氏の腕を掴み 妃宮さまを先にお通しするのだと示唆する
「ん?あ…ああ そうか」
これだから準王族の息子は…

…は?
なんだ此処は!?これが韓国の皇太子妃殿下を住まわせる場所だと!?

玄関を入って廊下を進むと左側に30~35㎡程のLDK
乳白色に淡い肌色のマーブルの入った大理石の床は…まあ フェイクではなさそうだ
アイランド型のキッチン ダイニングテーブル
右側には明るく清潔感のあるバスルーム 脱衣室とランドリー&クローゼット
化粧室は別になっているので 私が妃宮様にお仕えするにあたっても 問題はなさそうだ
階上に 狭くは無い部屋が3つ 白木の床に白い壁 大きな窓 高い天井

確かに 妃宮さまがわたくしと二人でお過ごしになるに不足は無いよう準備したつもりでは有るようだ
しかし…
東宮殿より遥かに狭く 赤や紫や金の装飾のひとつも無いシンプルな部屋はあまりに殺風景で… 高貴な方を迎える気持ちが足りぬではないか!

愕然するわたくしを横目に 妃宮さまはくすくすと笑う
「充分綺麗な部屋じゃない!私の実家よりもずっと明るくて広いのに お姉さんったら」


その夜はソ・ジテ氏が用意した料理人が三人係りでマカオのもてなし料理を作り 好き嫌いが無い妃宮さまは喜んで召し上がられた
「あ~ お腹いっぱいになったわ~ ね?お姉さん」
「…예/ィエ/はい…」
妃宮さまときたら… なんてお気楽になさって… 否…良い意味でだ



 
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