354.勤政殿に居並ぶ顔~天のお決めになる事ならば 異論はありません | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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前のお話→ 352.皇太子の大罪~小さな両手に包まれた頬 降りてきた唇 俺はただ黙ったまま目を閉じた に引き続きシン目線です
 

 

司会者の言葉に 弾かれたように会場は盛大な拍手に包まれ 事なきを得た かのように見えた が…
俺の心は震えていた
チェギョンは まんまと嵌められたんだ

相手がユルなのか恵政殿皇太后なのか明確じゃないが 俺の負けだ
チェギョンに 自分を信じさせることが出来なかった俺の 負けだ

先日明らかになった皇太子の不祥事に続いて 妃宮の前代未聞の発言…

恐らく 只では済まされない

 

後部座席に乗り込むまでは なんとか彼女の手を握っていた

放送局の外に押し寄せたマスコミにプリンススマイルを見せ 
車が発車すると 握っていたチェギョンの手を放った

「シ…くん…」

何か言いたげなチェギョンを無視して窓の外を睨んだ
震える唇を噛みしめ 彼女を振り返る事も言葉を発することも出来なかった


「シンくん 待って!シンくん!」
東宮殿の車寄せからパビリオンに入るまで 早足の俺の背中に向かってチェギョンが何度も呼びかける
パビリオンに入って 足を止めようやく彼女を振り返る

「さっきの電話は 誰からだ?

なぜ退位でなく 離婚なんて言葉を口にした?!」
いくら考えても怪しいのはあの電話だ
「ご ごめんなさい… 理由は言えないの でも信じて 私達の… 守るために…仕方なく」

チェギョンの両腕を掴む俺の指がその細い腕に食い込み 痛みに顔を歪める
解っていても あまりの怒りに 籠る力を抜くことさえできない
「何故だ?何故俺に言えないっ?!」

足が宙に浮くほど強く揺すっても 首を振るだけで応えない
「殿下 妃宮媽媽 陛下がお呼びです 勤政殿(クンジョンジョン)の方へ王族方がお越しのようで御座います」

くそっ もう?!

「お前は此処に居ろ!」

 


勤政殿には 王族達がずらりと顔を並べていた

 

放送を終えて俺たちが景福宮へ帰り着くよりも前に もう押し寄せていたようだ

 

ああそうだろうよ 手薬煉引いて待っていたんだろう?
ムン・フェウォン…ユ・マンドク…ホン・ジョンス…全部遠からず恵政殿皇太后と繋がりのある王族だ
こんなに反応が早いのは 恵政殿皇太后の根回しが有っての事…この前の俺の不祥事を傍観していた理由は 着々と足固めした処を俺が自ら踏み固めた為にうっかり踊り出さないよう引き締めていたせいなのか?

これで一気に俺とチェギョンを引きずりおろす算段だろう

 

―全くけしからん!だまって殿下の隣で笑っていればよいものを―

―よもや皇族が”離婚”などという言葉を口にするなんて―

―生放送で取り返しもつかぬことを―

―だから庶民を皇太子妃になどとんでもない事だと申し上げたのに―
―王族の令嬢達であったなら こんな大それた間違いを犯すことなど考えられないのに―
―庶民出の妃殿下を庇うために宮中のしきたりが時代錯誤かのような言いぐさ―

―しかも まるで皇太子殿下が一方的に庶民の妃殿下を溺愛し 妃殿下は逃げ出したがっているようにも受け取れましたぞ!―

―なんと御労しい事―
―これまでも散々問題を起こしては廃位を望む声が有ったが 今度と言う今度はお二人揃って廃位すべきでは!?―


そう纏まって掛かってくる王族達の勢いは今までに無い剣幕だった
仕来りを重んじる 陛下は庇い盾もできず口を結んだまま…

はは…
俺は 嘘など只の一言も言っていないのに…何言ってんだジジイども!

「私は嘘など一言も申しておりません

もし 私が一方的に妃宮を溺愛しているように聞こえたのなら それはその通りだからでしょう

妃宮とは王立学校中等部時代 義誠大君殿下と美術館に出掛けた際に再会し 一目で恋したのです
それについては義誠大君殿下もよくご存知ですよ ね?そうでしょうヒョンニム(お兄さん)」
「…」
俯いて何かを考え込んでいたユルは 返事を躊躇っている

ユル…?

やっぱりお前だったのか

もはやお前も 俺の失態に愛層を尽かしたのか?この手を振りほどこうというのか…

それとも 大学生になったユルが俺との間に壁を作り 従姉兄弟達と仲良くしてきた理由はこの時を待っていた為だったのか?

 

「…」

そうか…このタヌキジジイ達と…話は付いているんだな…

いいんだ ユル 俺は皇帝の座に未練なんか無い チェギョンと此処を出られるならそれでいい


「いいでしょう 私は覚悟して発言しました

放送直前に 彼女に一本の電話がありました

私達に退位を迫る者が居ると…その正体について彼女も掴めて居らず怯えていました

この脅迫めいた電話が 彼女の失言に少なからず関わっている事は明らかです」

ざわめきに負けぬように声を張る

「この処…

彼女の様子がおかしかった事を気付いて居ながら…今日のこの日を迎えたのは 私の最大の失敗でしょう

誰かが彼女を陥れたことは明確なのですが…
その件について 今この場には何の証拠も無く

もはや言及する気も有りません
皆さんの仰る通り 彼女は庶民出で 仕来りを軽んじていたかもしれません
ですが 私も彼女も嘘偽りなく真実のみを語りました
私も彼女も 位に縋り付く気など毛頭ありません

誰かがこの位を受け継いで全うして下さるのなら…」

 

俺はユルの目を真っ直ぐに見て続けた

「それが

天のお決めになる事ならば

異論はありません」

 

なのに

俺から目を反らしたユルは…逃げ腰の言葉を口にした
「それって…僕の事?
僕は 彼の代わりに皇太子になどなれません 役者不足です
彼は皇太子として 皇帝に成るべく教育を受けてきた 僕には皇太子なんて 荷が重すぎます」

ふん… 俺たちを此処まで追い詰めておいて 今更怖気付いたのか?
―何を仰います義誠大君殿下!―
再三接触を図り ユルを祀り上げる準備が整っていたというのに 此処へ来て想定外の弱気な発言に慌てふためく王族達

一旦反旗を翻したからには 此処で一気に畳み掛けねば 俺を廃位に追い込めねば 逆に自分たちの立場が危うくなるのだ
全く
お前の勝ちなんだぜユル?この座に座れよ
俺の味方のふりをしながら 俺がカッコ悪くこの座から転がり落ちるのを ずっと待って居たんだろう?

ふいに王族の一人ホン・ジョンスが声を揚げた
「王立病院の婦人科に務める知人の話によると 妃宮様は不妊治療をなさっているとか…それが事実なら大変な事です」
火に油が注がれたように 一気に加熱する
チェギョンを非難する言葉でざわつくばかりで 一向に終わりの見えない議会を 俺はもはや他人事のように黙って眺めていた

―兎に角 なんらかの措置を取って頂かねばこのままでは済まされません―


「ええい黙らぬか!

妃宮の身体については再三検査を行った結果異常は無いと報告を受けて居る!

皇太子の言う妃宮への脅迫が存在したのか否か 如何なる物であったのか 誰が何を意図するものか

きちんと調べずしてこの場で結論を出すことなど出来ぬ!

皇太子と 義誠大君を残し 他の者は下がるが良い」
皇帝陛下の低く轟く声に 王族達は渋々引き下がって行った

ところが 混乱のまま…明日に持ち越された議会が再び開かれることは無く…

代わりに乾清宮(コンチョングン)の火災に関する査問委員会が開かれることとなった


その夜 恵政殿の殿閣である乾清宮に火の手が上がったのが その理由だ

 

 


今日もありがとうございますカムサハムニダ
太皇太后と皇后はこの場にいらっしゃらないのに誤った表現が有りました
他にも誤りが有りましたので 訂正させていただきました

続きはまた少しお待たせすることになりそうです
 

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