350.ラーマ・キエン~こんな風に嫉妬するのが今夜で最後になるなんて 思ってもみなかったんだ | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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に引き続きシン目線です
 

 

朝食を終えた俺たちは 観光名所を回るよりも前にまず 舞台を観に行った

前回訪れた際 創立90周年を祝う式典 チュラロンコン大学の大講堂内で ミスティーンタイランドに解説を受けながら観た 大学の伝統文芸学科の学生達による本格的な一人舞劇『ラコーン・ラム』が興味深かった為

その元になっているという『ラーマ・キエン』を観劇したのだが…

チェギョンが泣き止まなくて参ったよ…

 

「ほら いつまでも泣くな」

しゃくりあげるチェギョンは一生懸命泣いている理由を訴える
「だって…あたしだったら シンくんと離れて一人で赤ちゃんを産むなんて絶対嫌」

やれやれ…やっぱり気にしてるんじゃないか…
「そんな事には絶対にならないから心配するな
俺はお前を愛しているし お前は俺を愛してくれてるんだろう?
なぜそんな心配をするんだ?」

 

ラーマ・キエンとは…インドの叙事詩ラーマ・ヤナが元になっていると言われているタイの代表的な古典文学
そのストーリーはとてつもなく壮大で 今回の公演はほんの一部を二時間の舞劇にアレンジした物に過ぎなかった
それでもチェギョンはあまりの壮絶な物語に瞳を潤ませ…勿論俺の胸の奥にも響いて来た


ラーマ・キエンとは ラーマ王子の栄誉という意味だ
敵国との争いに敗したり勝利したり紆余曲折の中で 敵王に妃を攫われた王子が 奪い返した妃の貞節を信じる事が出来ず 妃は自ら王子の元を去る
妃は一人で王子の子を産み育てる
長きに渡り妃と離れ離れになり 時を経てラーマ王子はラーマ王となる

自分の息子とは知らずに敵国の将軍となった息子と戦うなんていう事にもなる
様々な周囲の思惑に振り回され 惑わされ 互いを信じることができなくなってしまい 遠く引き裂かれてしまったラーマ王と妃は もう元には戻れないのだろうかと 観る者を落胆させる
だがふとしたきっかけから本質に立ち返り 自分がどれ程妃を愛しているか 自分の過ちに気付き妃を迎えに行く
しかし 妃は王子を受け入れてはくれず
数々の難問を解き 善行を積んだラーマ王は シヴァ神の仲裁の元に ようやく妃の心を取り戻す事が出来たのだった


最後はハッピーエンドで俺も一安心したが
チェギョンは大号泣し 車の中でもまだ涙ぐんでいる

「少しは落ち着いたか?」

「ごめんね?なんかすっかりお妃さま目線で観ちゃってたから どっぷり嵌っちゃった…////」

無理もない 俺だってラーマ王子の立場で観た…

恥ずかしそうにはにかむチェギョンはメイクが落ちて酷い顔だ

「やれやれ これじゃ人前には出れないな」

「うそ!そんなに酷い?!」

「ああ…酷過ぎる(笑)」

メイクなおししても泣いた目と鼻はごまかせない
しかたなく 予定を変更してカメラを避け タイの市場をお忍びで散策する事にした

 

「あ!ねえアレ見て!綺麗~」「ねね コレ食べてみて!」

タイの市場には 食べ物や花や果物 鮮やかな色と香りに満ち溢れていた

ひとつひとつにイチイチ感嘆するチェギョンを見ているだけで 俺の心も満たされていく

 

川を渡る小船にも乗った

「おい どこに座る気だ?こっちダロ?」

「え?ひゃっ」

向かいに座りかけたその細い腰を抱き寄せると 小舟が揺れて悲鳴を上げる

チェギョンの背中をこの胸に凭せて席に着くと 少し驚いて でも嬉しそうに俺を見上げる姫の頬にキスを贈る

すれ違う船で花を売る少女から買った大輪の花を チェギョンの耳元に射してやると 照れてはにかむ

 

「そろそろ戻るか?すっかり遊び疲れたな?」

返事が無いので顔を覗き込むと チェギョンは蒼褪めた顔色で 目も虚ろに…

「どうしたチェギョン!?」

俺の胸元に凭れたまま ぐったりとしていた

 

すぐに船を降り 抱き上げて 岸で待ち侘びていたヤンイギサ達の先導で車へと急ぐ

後部座席で俺の膝に寝かせ 白い手を握る

「いったいいつから具合が悪かったんだ?」

小さな声で何か言おうとしているが 聞き取れない

病院へ運び込み 処置室の外でイライラと 立ったり座ったりするしかない自分に腹が立つ

いつから…?いつから具合が悪かったんだ?

「ヤンイギサ…ちょっといいか?

昨日妃宮が躓いて貴女に守ってもらったと言っていたが 怪我はもういいのか?」

昨日チェギョンが転んだとき… もしや気分が優れず倒れかけたのではと尋ねたが…どうやらそうではなく 本当にただ躓いただけらしいが…

 

 

貧血と 少し熱中症気味だとかで 点滴をして 夜のうちに宮殿のゲストルームに戻った

だが…翌日予定通りの飛行機で帰るなんて 冗談じゃない!

「何馬鹿な事言うんだ 真っ青だったんだぞ! 俺がどれほど驚いたか…」

「ごめんなさい でも もう平気よ?

予定通り帰らなきゃ タイの皆さんにもご迷惑だし 韓国の家族にも国民にだって…知られちゃうわ?無用な心配は かけたくないの」

倒れた事は黙っておいてくれなんて どうしてそんなことが出来る?

「シンくん…心配ないわ?本当にただの貧血だったのよ?

こんなの高校時代はよく有った事なの 大丈夫 もう大丈夫だから」

ああ知ってる お前が入宮するより前から 貧血もちなのは知ってるが…

(65.冬から春へⅡ~ふらふらしてたら 俺が貰うぞ)

「もう無理するなよ?気分が悪くなったらすぐに言うんだぞ?」

 

 

「JiJi~~~ただいまぁ~❤淋しかったぁ? 」

無事に東宮殿に帰り着くと 靴とストッキングを脱ぎ捨てJiJiの丸まっていたベッドに大の字に寝転んだ

「あ~チョッタ(気持ちいい) やっぱ自分のベッドってホッとするね?

でも残念だったなぁ~ 行きたいとこ まだいっぱい有ったのになぁ~」

なんて頬を膨らます

すっかり 元気になったようだ

「人を心配させといて のんきなもんだな

まあいいさ そのうちまた連れてってやるよ」

「やった!」

手触りを確かめるように撫でていたJiJiを高く抱き上げて キスをする

ふん… まったく 困ったやつだな…

 

俺はこの時 まさかこの黒猫のJiJiにこんな風に嫉妬するのが 今夜で最後になるなんて 思ってもみなかったんだ

 

 

翌朝 JiJiは 急死した

いつも通りに元気にチェギョンに餌をくれと強請ったJiJiに チェギョンが与えた餌を食べて…

いくらも経たずに泡を吹いて倒れた

すぐに動物病院へ運んだが 手遅れだった

 

 

 

今日もありがとうございますカムサハムニダ

 

こんな幸せだけが続くはずは… ないのですが みあなむにだ

 

 

 
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