330.貴い娘~やれやれ…無事に帰ってくれねば困るぞ妃宮 | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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お久しぶりのイ・ヒョン皇帝目線です

 


シャラン
………
シャラン
………
シャラン
先刻から何度も息子の携帯電話がメールの着信を告げる音を発しているというのに…我が息子イ・シンは黙々と書面と書物に交互に目を運び…結んだままの唇からは一言も発することなく
淡々と執務に耽っている… …と見せかけてその実は かなり苛立っているようにも窺える

「シン…メールが来ているようだが…見ないのか?」
「…いいんです」
「まだ怒っておるのか?」
「…?!」
ひくりと引き攣った顔を上げて 何をか言わんや… と思えばまた直ぐに書物へ目を落とし 執務へと戻る
その手が 微かに震えている
「なにも私にまで怒りの矛先を向けることはないであろう?」
「何も申し上げてないでしょう?」
「口にしなかっただけで 確かに何か言い掛けたではないか」
「父上にどう見えようと 私は冷静です 怒ってなど居ません」
その物言いはまるで尖った刃物のようで 充分皮一枚程度は切れそうだが…

シャラーン
「おっ!」
私の携帯電話がメールの着信を知らせた
開いてみると…
「ふむ…ふふふ…楽しそうではないか
そなたが返事を返さぬから 遂に痺れを切らして私の方に送ってきたぞ ほら」

写真には妃宮が撮ったせいか妃宮は写っていなかったが 母上とユソンの穏やかな笑顔の背景にはおそらく…孟氏杏壇(맹씨행단/メンシヘンダン/孟子が高麗末の崔瑩(チェ・ヨン)将軍から譲り受けたとされる家)であろう古い家屋が写っていた

TO:陛下
FROM:妃宮
温泉気持ち良かったです! 5回も入っちゃいました~(笑)
温陽の御用邸を出て今日もおばあ様の運転で牙山(アンサン)付近の史跡を巡っていま~す
リスが居たんです!木の実を頬張ってて とっても可愛かったんですよ~

流石に私を無視できない立場を弁えて居るシンは 仕方なく顔を上げ差し出した携帯電話を受けとる
「無事なら良いんです…」
小さく息を吐き 静かに閉じた瞼を開く
「そんなに心配か?イギサも動行しておる」
「でもおばあ様の運転ですよっ?!」
急に大きな声を出して立ち上がり…しまったとばかりに口を抑えて再び腰をおろす
「はは… 私は母上の運転するあの車に乗った記憶が有るが…そなたにはないのだな
意外に安全運転で運転技術にも問題ない 案ずるな
母上が仰るには 心配せんことが無事に帰る秘訣なのだそうだ」
「だから気にしないようにしていたのに 父上が私をからかうから…」

視線だけでメールを確認しなさいと促すと 渋々携帯電話を開く
妃宮の笑顔を確認すると 小さく頷いて
それからまた黙ったまま執務に戻る
「返信せんのか?」
「いいんです」
だが今度はさっきとは違い穏やかな表情をして居る
やれやれ…無事に帰ってくれねば困るぞ妃宮
私は徐に携帯電話を握り直し 妃宮へ返信を打つ


静かな千秋殿には先刻のメールの一件以来 書を捲る紙の音しか無く
襲ってくる眠気を払うにはそろそろ小休止を…と思い立った頃だった

「妃宮さま!お待ちください!なりません妃宮さま!」
遠くからコン内官のものらしい 慌てたような声が聞こえてくる
「外が騒がしいようだ…妃宮が帰って此方へ来たのか?」
「そのようです」
「しかし 何故咎められておるのだ…?」
「さあ…」
シンはそっと窓を開けると 息を呑んで妃の名を口にした
「はっ!?チェ…チェギョン!」
それっきり絶句する息子の肩越し その視線の先に目を向けると… そこには風に髪を靡かせて我が息子の愛妻シン・チェギョンが 自転車を漕いで秋の庭を駆け抜けて此方へ向かってくる姿が在った
「あ!シンくんだ~っ!帰ったよ~!たっだいま~っ!」

「「「妃宮様!なりません 妃宮さま~~~」」」
息を切らして追いかけてくる内官とイギサ達の制止を振り切り 景福宮の庭園を自転車で駆け抜けるのは おそらく後にも先にもこの娘しか居らぬのではなかろうか
はっ はっ はっ なんとも愉快な光景だ
唖然としていた皇太子も 後ろで声を殺しようも無く笑っている私を振り返り目が合えば…
プッと吹き出し 腹を抱えて”ははは”と声を出して笑った
息子のこんな笑い声を聞いたのはいつ以来であろうか…
本当に なんとも貴い娘よ…
 

 

 

 

今日もありがとうございますカムサハムニダ
ありゃ?チェギョン元気そうですねぇ…
御心配して下さった皆さんに申し訳ないくらい…それとも…?
2/8(月)→331.解けた誤解~ああ…信じてるさ …… 疑いようも無く可愛かったしな

 

 

 
※孟氏杏壇(맹씨행단/メンシヘンダン)とは
孟氏が暮らす銀杏(イチョウ)檀(マユミ)がある家と言う意味で 朝鮮初期の孟思誠(メン・サソン/1360-1438)の古屋を呼ぶ名前だが、韓国の民家の中で一番古い姿であり 史蹟第109号に指定されている
孟氏杏壇がある場所は風水的にも非常に縁起の良い気を持ち
元々は高麗末の崔瑩(チェ・ヨン)将軍の住む家だったが 隣に暮す孟思誠の善行を見ていた崔瑩が孫娘壻に譲り その後孟思誠一家はこちらで根付くようになったとされている.

チェ・ヨン将軍と言えば!「信義」でイ・ミンホが演じたヨンじゃないですか~❤(笑)
今実は「大風水」を観ていて…「信義」の20年後くらいの話なので…ヨンがオジサンになってます…ううう…
 
 
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