279.久しぶりの電話~まあ… 振られたのは事実だけどね | かおり流 もうひとつの「宮」

かおり流 もうひとつの「宮」

「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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チェギョンの誕生日を祝うために景福宮を飛び出し 二人きりたった一日の休日を楽しんだ済州島から戻ればまた たちまち厳しい現実に引き戻された
これまで以上に 公務と執務に追われながらの受講
法学部の単位を 外の者より先んじて会得する事はいくら俺でも難しいようだ

大学は…
常に外より先を学んできた俺にさえ これまでには無い新しい学びや発見も多く 刺激的だった
チェギョンは相変わらず俺に新しい友達は出来たかと訊ねる
だからそんなものは必要ないと言っても納得しない
チェギョンの育った経緯を考えると無理もないが 逆に俺のこれまでを考えればそれもまた同じことだ
お前にさえ容易く心を見せられない俺に 新たな友達など…馬鹿げてる
チェギョンに出来た新しい”お友達”が妃候補の最終に残っていたホン・モネだったのには驚いたが…
ホン・モネが俺に興味がない事は当時ファン達からも聞いていた通り 冷たくされても尚慕っている男が居るんだとか…
調べてみても 気になるほどの危険は感じられず 一安心して勉学に励んでも大丈夫そうだった

え?小麦粉事件の男は放って置くのかって?
そんなわけないだろう
実は少し前…韓国が新学期に入る頃 久しぶりに彼女から電話が入ったんだ…
驚いたよ

「もしもし?」
「シン?」
「ああ俺だ 久しぶりじゃないかヒョリン 元気か?」
「ええ そうねホントに久しぶり」
「頑張ってるのか?」
「勿論 もうすぐ韓国を代表する期待の新人デビューよ 今はまだ群舞だけどね」
「へえ それだってほんの一握りだろう?凄いじゃないか 流石だな」
「ありがとう
ね ところで今日は シンの耳にいれておかなきゃならない話があって電話したの 驚かないできいてね」
声色から 良くない話だと察知し 息を飲む
「せっかくの卒業式が 台無しだったそうね
少し遅れて入ってきたニュースを見て…インに電話したの
シンの可愛い妃殿下を襲撃した恐れを知らない馬鹿はいったいどこのどいつなの?って
そしたら
アンチ皇室の二年の男子だって写メを送ってくれたんだけど…驚いたのよ
インには内緒よ?
実は私…この子を イム・ジュファンを知ってるの」
「なんだって?!」
「前に 花束とチョコレートを貰ったわ
体重管理が大変だから ごめんなさいって返したんだけど…しつこくて…
悪い子では無いと思ってたんだけど… まさか…」
何!?
「それ いつの話だ?」
「留学を迷ってた頃よ…元気出して下さいって…
ほら あの頃私 インが引き留めてくれない事で不安になってたから…
何も知らないくせに気味が悪いと思ってたんだけど…勘違いしてたのかも…」
俄かに沸き起こる一つの考えは たぶん間違いない
会見でもちゃんと否定したのに 巷ではなぜか 俺達は当時付き合ってたことになってる
”恋人を捨てて祖父の決めた幼馴染と国婚”なんて見出しも目にした…

「まさかチェギョンのせいでお前が俺に振られて ヤケになって留学したとか思い込んで…」
「やっぱりそうなのかしら?」
「随分捻じ曲がった逆恨みだな」
「まあ…シンが彼女を好きだったから振られたのは事実だけどね」
雪の日の乗馬クラブで あまりにもあっけらかんと俺を好きだと告白したヒョリンを思い返す
「あれは そういうんじゃないだろう?」
「まあ 失礼しちゃう 告白には勇気が必要なのよ?」
「全然そんな印象は受けなかったぞ?」
「強がりよ 女の意地! 解ってないわね~
奥さんの事も注意深く見ておかないと 無理してるとこ見逃すわよ?
ちゃんと優しくしてあげてる?守ってあげなさいよ?」
「そんなこと お前に言われるまでも無い」
「あ~そうですか ふ~んだ」
「お前こそ インとはうまく行ってるのか?」
「あら!尊い皇太子さまにそんなご心配を頂くには遠く及びません!
電話の向こうで彼女がくすくす笑う姿が目に浮かぶ 相変わらず綺麗に笑うんだろうな
「とにかく貴方は愛する妃殿下の心をガッチリ掴まえて置くのよ! じゃあね」
くっ(笑)
言いたいこと言ってさっさと電話を切りやがった
でもそうか…
そういう訳だったのか 元々アンチだったヤツが…
攻撃を仕掛けるきっかけには…成り得るが 短絡的にも程が有るだろう
金と小麦粉を渡されて 渡りに船ってところだったのか?

兎に角 そういうわけで俺は クソ忌々しいあの男に 親切にも直接会って忠告してやったんだ
再びチェギョンに近付きでもしたら 腕の一本もへし折ってやると言いたいのを必死で堪えてな

「もうお前に付いて俺が知らない事は何一つない
例えば 朝食に何を食ったかまでもだ
悪いが お前が嫉むべきなのは私では無くカン・インだ
インとヒョリンは幼い頃から互いを自分の片割れの様に大切に想っている
今だって遠く離れていたって年に数回会ってるだけで 心が繋がっている
魂の呼び合う仲 ソウルメイトだ
誰にでもそういう特別な相手が居るものだ
私にとっては妃宮 シン・チェギョンがそれだ
だが 多くの者は見逃し すれ違い 相手を誤ったり なかなか出会えない
お前も早く自分の正しい相手を見付けるんだな
ああそれから 暗闇には用心した方が良い
お前はある大物に 単にいいように使われたに過ぎない
使い終わった駒は排除されるやもしれん…
それに忘れるな? 俺もお前を許してなどいない
お前はまだ 犯した罪の大きさを今知った処さ」

謝罪すれば停学を解除し進級させても構わないと言ったら… 渋々謝罪した


勿論それで終わらせる気なんか無い 肝心なのは実行犯ではないからな
俺は…
小麦粉を渡した黒ずくめの男はおそらく 非番だったペクイギサだと踏んでいる
午前中のわずかな時間 監視役に着けていたカンイギサにうまいこと用を任せて抜け出し 単独行動を取ってる
だが 駅でイム・ジュファンに会った証拠は 何一つ出て来ない…

ペクイギサや皇太后の金の流れも随分調べたが…
出てくるのは他の王族達の裏金の流ればかり…
皇族と王族は政に関わらない法を貫いている国会主義的立憲君主制度でありながら…
結構な数の王族が政治家と繋がっている
追尊により先帝となったユルの父親であるイ・ス元皇太子は 君主主義的立憲君主制度を目指していたと聞く
その残波が未だに…ユルに接触を続けている事も気に入らない
ペクイギサは俺の周りをうろつく皇太后の駒の中でも 最も忠誠心が高い危険な男だ
敢えて傍に置くと決めたのは俺だが 正直平常心を保つのも難しい
早く…どうにかしたい
まあそれも有って少々苛ついていたんだが…
焦ったって出て来ない証拠をでっちあげる訳にも…
いやその手もアリか…?
ふう…
俺は深いため息を吐く
待て 待つんだイ・シン
何を馬鹿な事を…俺は一国の皇太子なんだぞ
そんなことがもし明るみに出ようものなら 結果的に自分で自分の脚を掬う事にもなりかねん 相手はあの皇太后なんだ そのくらい視野に入れてるだろ…

少し…
皇室や王族を忘れて 普通にキャンパスライフを愉しめば心の余裕も取り戻せるやもしれん…

「シンくん!待った?」
「いや 今来たところだ」
「あ~もうあたしおなかペッコペコだよぉ~ おぉっ!東宮殿調理長特製弁当 超うまそっ!!」
「こら 誰が聞き耳をたてているかわからないんだぞ」
「うぐ… ごめんなはい」
くっ 今開けたばかりの重箱から もう早速卵焼きを指でつまんで口に放り込みやがった
「う~ん美味しい! あ ねぇそれよりさ!聞いてよ~ すごいんだからぁ~!!」
チェギョンはいつものように 俺には関係ない芸術学部の講義の内容を話し始める
くくくっ 俺はチェギョンのおかげで 法学部の単位よりも先に芸術学部の単位をとれそうじゃないか…?

ふと 自分が楽しそうに笑っていることに気付く
俺 コイツがいなかったら どんなロボットになっていただろう…
いつかイ・ミノが言ってたっけ 面白みの無い皇太子ロボットだと…
抜け殻に皇太子としてのデータを詰め込まれただけの皇太子なんて…国民に失礼だよな
しっかり目を開くんだイ・シン やるべきことは山積みだぞ


今日もありがとうございますカムサハムニダ
怒りまくってたシンくん 少し冷静になってきたのかな?
あじゃ ふぁいてぃ~んっ
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