147.マンドリン ~哀しい表情…彼女らしさなんてかけらもない | かおり流 もうひとつの「宮」

かおり流 もうひとつの「宮」

「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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前のお話→146.孝経 ~皇后陛下より上の皇太后陛下に命を受けてきた…
このお話は 144.溝 ~そんなに信じられないのか?  に続くユル目線ですl


締め切った部屋に漏れ入る外の光を頼りに 窓をひとつひとつ開け放つと
古い本の並んだこの部屋の湿った空気に初夏の風が流れ込む
母さんと父さんが ここ茗禪堂(ミョンソンダン)を背にした写真を見て 行ってみたいと思っていた場所 湿っぽいのに なぜか懐かしい不思議な空間
僕は時々此処へ来て本を読むのが好きだった

窓から外を眺めて風を感じていたら…窓の下を山程の本を抱えた東宮殿の女官が二人目に留まる
「ねえ 随分重そうだね 何処へ運んでいるの?」
「は! 義誠大君様~ 皇太后さまが~」
母さんが何? 泣きそうな二人を放っておけなくて 軋む階段を降りていった


「皆出ていて」
書筵堂(ソヨンダン)から女官と尚宮が出ていくのを待って 僕は口を開いた
「皇太后陛下 尚宮達の前での叱責は 皇室の仕来り以前に 道理に反します」
「そなた…」
こわばった母さんの顔
「ユル先輩…」
緊張したチェギョンの顔
「皇室の秩序を守る為に 何が大切かを お考えください」
もっと決定的な言葉を言う覚悟で此処へ来たと言うのに…結局これ以上は言えなかった
「行こう」
「え?で…でも…」
僕は弱い…もっと強くなりたい…
確固たる信念の元にシンを支える役に徹すると言いながら 僕は今 母さんの願う皇帝への道から 単に逃げてるだけなのかもしれないと 揺れている
そうではないんだ 僕がもっと自信を持って強くそう言えたなら 母さんを呪縛から救ってあげられるかもしれないのに 僕がハッキリしないから 母さんはいつまでも諦めきれず シンにも心から信じて貰えない…

黙々とただ歩く僕に 黙って手を引かれたまま付いて来てくれたチェギョン きっと彼女にも 僕の不安が伝わっているんだろうね…

「ここは?」
「茗禪堂(ミョンソンダン)といって 古い図書室みたいなものでね 僕が皇太孫だったころ 時々遊んでいた場所だよ」
嘘をついた
本当はそんな思い出なんて無かったけど…父と母の思い出の場所だとは言えなかった
母さんが東宮殿に乗り込んで行って 東宮殿に思い入れが有ることを知って胸を痛めたばかりだ…
「久しぶりに此処で本を読もうかと思ったら 山ほど本を抱えた女官達が書筵堂へ向かっていくのが見えて… …辛いだろう?」
「平気です…皇太后さまのおっしゃるとおりだもの…私が悪いの」
オーバーアクションで平気だと嘯くチェギョン…

「それより…これはなあに?ギターに似てるけど…違うみたい」
「マンドリンだよ」
ティラリラリン…弦を爪弾く細い指
「細くて…物悲しい音ね」
哀しい表情…彼女らしさなんてかけらもない

僕はそんな弱々しいチェギョンを見ていて シンと二人 チェギョンと出会った美術館でのあの日から 芸高に入学してきて 美術部に入部してきたあの日 それから今まで見て来た数々のチェギョンの元気で溌剌とした姿を思い出す…
今の哀しげにマンドリンを爪弾くチェギョンは…彼女らしいとは言えない…

僕は チェギョンの シンとの結婚を 安易に喜んでしまった
シンが好きな子と結婚出来るって事に単純に喜んじゃったけど…チェギョンにとっては…どうだったのだろう… 僕は この子の事…ちっとも考えてあげていなかったじゃないか…
自分の浅はかさを恥じ 彼女の寂しさを想うと 心苦しくなった

正直僕は 東宮殿でチェギョンを目にするうちに 幼い頃彼女がシンやヘミョンさんと共に東宮殿に遊びに来ていた頃の事を 色々思い出していた
あの頃もチェギョンはいつも元気いっぱいで…眩しい子だった
唐突にチェギョンが僕に
「ヘミョンお姉さんをお嫁さんにしないのなら あたしをお嫁さんにして?」
なんて言った事がある
驚いたけど 彼女の思考は率直だったから 手にしていた絵本のお姫様にでも感化されたんだろう事は すぐに解った
そのとき僕は シンがチェギョンを気に入ってると知ってたから
「大きくなってもチェギョンにその気が有ったら 喜んでお嫁さんにしてあげる」
と控え目に言ったつもりだったんだけど…
それでもシンはムスッとして チェギョンのほおをギュッとつまんで
「バカだなチェギョン!お前は俺ん家の下女の娘なんだから
お前なんかが皇太子妃になんてなれるわけないだろ!」
って言った…
そのシンがチェギョンを皇太子妃にしてるなんてね…くすくすっ

ティラリラン ティラリラリラ ティラリラン…
マンドリンを爪弾いてるチェギョンは やっぱりどこか寂しそう…
まだ十八歳になったばかりの女の子…ウチにも帰れないし
夫のシンは優しくはないし 学ぶことは山積み 僕の母さんには蔑まれてる…
「マンドリン 気に入ったみたいだね 僕少しなら弾けるよ 教えてあげよっか?」
僕がこの子の息抜きになれば…
そんな想いで 時々茗禪堂に誘って 話し相手になってあげる そう ただそれだけのつもりだったのに…



キラキラいつも ありがとうございますキラキラ
ん~ 陛下の思った通り この結婚やっぱり少し難航かも

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