妄想アニメ メタル美少女戦士BABYMETAL
第2話イジメ、ダメ、ゼッタイ(前編)
(SE、ナレーション)
昔々、へヴィメタル銀河の遥か彼方、へヴィメタルのマジカルワールドがあった。
そこはメタラーたちがへヴィメタルを奏で、平和に暮らす世界。
だが人間界はA-KIBAを本拠地とする巨大勢力“アイドル”が、政治・経済・文化のあらゆる領域を支配し、アイドル音楽以外は有害とされ、へヴィメタルも例外ではなかった。
(学校。下駄箱を開けるヤマダ。ドサドサッと中からごみが落ちてくる。)
ヤマダ:またか…。
(教室へ入るヤマダ。一瞬静まり、ヤマダの方を見てヒソヒソ話をするクラスメートたち。)
男生徒A:おい。またキモイ奴が来たぜ。
男生徒B:よく来れたもんだな。
男生徒C:お前の席、なんか壊れてるぜ。お前の頭と一緒。
男子生徒たち:わはは…
(ヤマダの机は「死ね」「キモイ」「恥」などと落書きされ、脚が折られ、傾いている。立ち尽くすヤマダ。そこへ眠そうなSU-が入ってくる。)
女生徒A:すぅ、おはよう。
SU-:おはよう。
女生徒B:おはよう。見た?あれ、ひどくない?
女生徒A:シッ。男の子たちに聞かれたら、あんたもやられるよ。
SU-:え、どうしたの?
女生徒B:ヤマダ君が、アイドルのファンじゃないからだって。
女生徒A:男の子たち、みんな推しメンがいるのに、ヤマダ君だけ興味がないんだって。
SU-:そんなことで、いじめられてるの?
女生徒B:あたしもカワイイアイドルは好きだけど…。
女生徒A:アイドルファンじゃないと人間にあらずって世の中だもん。すぅもアイドル活動やってんでしょ。ぜんぜん売れてないけど。
SU-:いやー、まいったなー。
女生徒B:1円玉ばっかり集めてるからじゃないの?
女生徒A:がんばってよ。応援するからさ。
(男子生徒、「壊れてる、壊れてる」とヤマダをはやしたてていると、先生が入ってくる)
先生:おい、うるさいぞ。静かにしなさい。ヤマダ、何立ってんだ、座りなさい。
(ヤマダ、しかたなく座る。)
先生:なんだ、その机は。備品は大切にしなくちゃだめだぞ。出席をとる。アイカワ、イノウエ、ウチダ…
(ここはA-KIBA。サーシャ、ミミ、コーズィの三人が、スネークの前に立っている)
サーシャ:あれは絶対メタルです。
ミミ:でも可愛かったけどね。
コーズィ:そうそう、リンリンリンッって。
サーシャ:ふざけるなっ。わが軍は甚大な被害をこうむったんだぞ。
スネーク:落ち着け、サーシャ。君の責任感の強さは、誰よりも私がわかっている。ミミ、君もだ。そうだろう。
サーシャ:ハイ。申しわけありません。
スネーク:結成から苦節10年、我々アイドルは、ようやく人間界を支配するところまで来た。いまや、世界各国48の主要都市に支部を持ち、所属アイドルは4万人、二軍、予備軍も入れれば10万人の巨大勢力となった。政治家や財界人もA-KIBAのファンとなり、アイドル以外の音楽はすべて弾圧する体制となっている。あと少しで、人間界だけでなく、全宇宙を支配下に置けるのだ。だが、登山は最後のアタックが一番きついという。我々は1830メートルがどれだけ遠いか知っている。そうだな。
三人:ハイっ。
スネーク:慎重にことを進めなくてはな。これを見ろ。
(スネーク、KOBAが政府に提出した申請書のコピーを見せる。そこには、「チェリー学園部活動一覧」とある。)
スネーク:学校をテーマにしたアイドルユニット、チェリー学園の部活動、派生ユニットとして「重音部」BABYMETALを結成だとさ。
ミミ:じゅうおんぶって何?
コーズィ:重い、音?
サーシャ:へヴィメタルじゃないか。小癪な真似を。
スネーク:まあまあ。プロデューサーはあくまでアイドルソングだと言っている。どうせ、たいした人気は出ないだろう。それでだ、今度のアイドルフェスティバルには、君らといっしょに出演させてやろうと思う。
コーズィ:またあの子たち、見られるの?
ミミ:やったー!だってかわいいんだもん。
サーシャ:お前ら、ファンになってどうする。
スネーク:君らとBABYMETALと、どっちが上か、見せつけてやろうじゃないか。
三人:ハイっ!
(放課後の教室。ヤマダが一人教室に残って、机の脚を直しているところへ、ヤマダの幼馴染のスズキが来る)
スズキ:ヤマダ。
ヤマダ:スズキか。(回りを見回して)ぼくに近づかないほうがいい。
スズキ:そんなわけにいかないよ。幼馴染じゃないか。
ヤマダ:君までいじめられるぞ。
スズキ:お母さんに相談したのか?
ヤマダ:(泣きそうになって)そんなこと母さんには言えないよ。
スズキ:先生には?
ヤマダ:…。(頭を抱える)
スズキ:おかしいよ、そんなの。
ヤマダ:だってぼく、アイドルが嫌いなんだもん。
スズキ:明るい音楽には馴染めないって、昔から言ってたよね。アイドルが嫌いだっていいじゃないか。
ヤマダ:シッ。そんなこと、言っちゃだめだ。
男生徒B:聞いたぞ、聞いたぞ。
男生徒A:ヤマダだけじゃなくて、スズキもアイドルが嫌いなんだってよ。
男生徒C:大変なことになりますよ、これは。
(男生徒三人、大変だ、大変だといいながら去っていく)
ヤマダ:だから言ったんだ。
(そこへSU-が入ってくる。)
SU-:どうしたの?
スズキ:お前こそ、どうしたんだ?アイカツの時間じゃないのか?
SU-:そうなんだけど、ジャージを学校に忘れたみたいで。
スズキ:はあ?お前スカートの下にはいてるの、何?
SU-:あ。
スズキ:しっかりしろよ。それより、ヤマダが。
ヤマダ:言わなくていいよ。
SU-:何々?
スズキ:アイドルが嫌いだってだけで、いじめられてるじゃん?
SU-:うん。私もおかしいと思ってた。
スズキ:だからさ。
ヤマダ:もう、放っといてくれよー。(泣きながら出ていく)
スズキ:待てよ、おいヤマダ、ヤマダ。
(深夜。眠れないヤマダ。夜勤を終えて、母が帰宅する)
ヤマダの母:太郎、まだ起きてるの?
ヤマダ:ああ。
ヤマダの母:なんだか、最近元気がないわね。学校でなんかあったの?
ヤマダ:いや、何もないよ。
ヤマダの母:お友達と遊んでる?勉強はどうでもいいけど、お友達がいないなんて、寂しいからね。
ヤマダ:ああ。ごはん、食べないのかい。
ヤマダの母:母さんもう疲れちゃった。先に寝るわよ。
ヤマダ:ああ。(夜空を見上げる。月)
(翌朝。スズキが登校し、下駄箱を開けると、中からゴミがドサッと落ちてくる)
スズキ:クッ。
SU-:(あくびしながら)おはよう。
スズキ:…(何も言わず、逃げるように去っていく)
SU-:ね、昨日の続き、ちょっと、スズキ君!
(教室。SU-が入っていくと、スズキの机に落書きがされ、脚が折られている。立ち尽くしているスズキ。女生徒がヒソヒソ話している)
男生徒A:こいつ、アイドルが嫌いだってよ。
男生徒B:ヤマダは改心したのにな。
スズキ:ヤマダ!
男生徒C:そ、ヤマダはコーズィ推しだってよ。意外とセクシー好きなのな。笑えるぜ。
男生徒A:だから、今はこいつだけが犯罪者!
スズキ:犯罪者って…。
(男生徒たち、「犯罪者」「犯罪者」とスズキをはやしたてる。)
男生徒B:おら、ヤーマダ、お前も言えよ。
ヤマダ:は、犯罪者…(下を向くヤマダ)
スズキ:ヤマダ!お前まで。
(SU-、じっと男生徒たちを見る。)
女生徒A:すぅちゃん、あんまり見ないほうが…。
女生徒B:関係ないんだから…。
SU-:関係、ない?(キッとして女生徒を見る)
(昼休み。YUIとMOAが仲良くお弁当を食べている。YUIのお弁当は、全部トマト。MOAのお弁当は全部イカ。)
MOA:ゆいちゃん、トマト好きだよね。
YUI:もあだって、イカ好きだよね。
MOA:トマト食べると、ほっぺがぷにぷにになるのかな。
YUI:イカを食べると、ほっぺにえくぼができるのかな。
YUI、MOA:うーん…。
(そこへ、SU-が入ってくる)
YUI:すぅちゃん。どうしたの?
SU-:今度のアイドルフェスのことだけど。
MOA:楽しみだよねー。A-KIBAといっしょだなんて初めてだよ。
SU-:ちょっと相談したいことがあるんだ。
YUI:すぅちゃんのいうことなら、何でも聞くよ。
MOA:うん。
SU-:ありがとう。あのね…。
(後編へつづく)