レッチリ | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

BABYMETALが今年12月、レッドホットチリペッパーズのUKツアーに帯同して4都市7公演を行うことが発表された。

スケジュールは以下のとおり。

12月5日(月) イギリス・ロンドン / THE O2

12月6日(火) イギリス・ロンドン / THE O2

12月8日(木) スコットランド・グラスゴー / THE SSE HYDRO

12月10日(土) イギリス・バーミンガム / GENTING ARENA

12月11日(日) イギリス・バーミンガム / GENTING ARENA

12月14日(水) イギリス・マンチェスター / ARENA

12月15日(木) イギリス・マンチェスター / ARENA

レッチリかあ。二度のグラミー受賞(HR部門)、2012年ロックの殿堂入りした著名バンドであり、一時の勢いはなくなったとはいえ、2016年現在、世界で最も動員力のあるロックバンドのひとつであろう。

ギタリストとしては、ジョン・フルシアンテには好感をもつ。ピロピロのテクニシャンではなく、むしろ、キャッチ―なリフメーカー、ヤク中でどん底に落ちた“生き様ギタリスト”という感じ。

むかしはストラトのイメージだったが、2度目のレッチリ脱退後、一昨年あたりは青いヤマハのSGを持ち、インスト・アルバムを出すなど、音楽性の深化がみられる。

だが、元々のレッチリは、演奏性云々のメタルバンドではなく、歌詞中心のファンク/パンク/ガレージバンドである。

知名度が上がったのは90年代からであり、第1回フジロックにも出ていたのだが、ぼくにとっては、音楽“空白期”なので、ピンと来ない。

だから、BABYMETALがUK公演に帯同するといっても、“やったー!”という感じはしない。

2014年にレディガガの前座に出たときは、さくら学院~神バンド帯同で修行~初ヨーロッパツアーという流れから、“大抜擢”という雰囲気だったが、三度のワールドツアーを行い、Kerrang!のBest Live Band賞を受賞し、アメリカ、ヨーロッパの著名フェスでも、数万人を動員してしまうBABYMETALなのだから、いまさらレッチリの前座をやる必要などないのではないか、という気がする。あ、レッチリファンのみなさま、気を悪くしたらごめんなさい。といいながら、正直な印象を書く。

ぼくは、「カリフォルニケイション」の印象が強く、“西海岸のガレージ系バンド、ただしニルヴァーナよりかなり軽め”としてしか見ておらず、ジョン・フルシアンテが抜けた2010年以降は、どこが“凄い”のか、実はよくわからない。

たぶんだけど、アンソニー・キーディス(シー・シェパードのスポンサーでもある)の歌詞と抒情的な反体制風、60年代後期~70年代前半のフラワームーブメントの匂いのする楽曲が、90年代から2000年代の、日本でいえば団塊ジュニアの世代、アメリカでいえば“セレブ”のヤッピー2世の世代に受けている感じ。たんなる印象だけど。

代表曲「By the way」をちょっとだけ引用、意訳してみる。

――――――引用

Standing in line to see the show tonight, and there's a light on, heavy glow.(今夜のショーを見るために列に並んでたら、ギンギラギンの明かりが灯いた。)

By the way I tried to say I'd be there, waiting for. (ところで、俺はずっとそこに居たんだ、待ってたんだぜって言おうとしたんだ。)

Dani the girl is singing songs to me, beneath the marquee, overload.(ダニー、その女は俺に歌を歌ってるんだ、すし詰めのマーキーの地階でさ。)

Steak knife. Card Shark. Con job. Boot cut.(ステーキナイフ。トランプの名人。詐欺仕事。ブーツカット。)

Skin that flick, she's such a little DJ.(あのフリークの化けの皮を剥がせ、彼女はあんなに小っちゃいDJなんだ。)

Get there quick by street but not the freeway.(さっさと行けよ、ストリートを通ってさ、フリーウェイじゃなくて。)

Turn that trick to make a little leeway.(悪だくみをやり返して少しゆとりを持とうぜ。)

Beat that nick but not the way that we play.(牢獄をぶち壊せ、俺たちが遊ぶみたいなやり方じゃなくて。)

Dog town. Blood bath. Rib cage. Soft tail.(犬の町。血のシャワー。あばら骨の檻。ソフテイル。)

(中略)

Black jack. Dope dick. Pawn shop. Quick pick.(ブラックジャック。ドーピングした男根。質屋。ヤリマン。)

Kiss that dyke, I know you want to hold one.(あのレズにキスしな。お前がそうしたがってるのを俺は知ってるぞ。)

Not on strike, but I'm about to bowl one.(スト中じゃないけど、俺はそろそろぶっ転がすぜ)

Bite that mike, I know you never stole one.(あのマイクに噛みつけ、俺はお前がそれを盗んだことなんかないって知ってるぞ)

Girls that like a story so I told one.(お話好きな女の子たち、だから俺は話したんだ)

Song bird. Main line. Cash back. Hard top.(ソングバード。メインライン。キャッシュバック。ハードトップ。)

(中略)

Ooh ahh, 'guess you never meant it(オーアー、お前は決してそんなつもりじゃなかったんだろう、×8回繰り返し)

―――――引用終わり

ラップっぽく韻を踏んでいるから、意味不明の単語が並んでいるが、全体から受ける印象はやっぱり、反抗期の下品な悪ガキですね。なぜこれが“セレブ”のお坊ちゃん、お嬢ちゃんに受けるのか、全然わからない。

ちなみに“セレブ”っていやな言葉だと思う。

マックス・ヴェーバーの名著「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(岩波文庫)によれば、プロテスタント的価値観では、金持ちになったということが神に祝福されている証だ、という通念があり、その意味で金持ちをCelebrityという。だがこれはアメリカ文化のもっともいやらしい部分だと思う。単純にいえば、金持ちのガキは “セレブ”なのだから、ヤクに溺れても、ホテルの植木におしっこをしても“人間らしさ”として受け止められる雰囲気があるのだ。同じことを貧しい移民がやったら袋叩きにするクセに、である。

伝統的なヨーロッパのクリスチャニズムには、ノーブレス・オブリージュという言葉があり、高貴な生まれの者は、それを社会に還元する責務があるというのが、常識だ。そういう観点からすると、金持ちはわがままで当然だと思うアメリカの大衆文化はそうとうゲスいのだ。

アメリカ西海岸生まれで、親からしてヤク中だったという成育歴をもつアンソニーの周りに集まったメンバーが、その反体制風の言動や、いなたいロックという音楽性も含めて、“フラワームーブメントの息子たち”という感じで欧米では受け取られたのだろうし、日本では、ヤク中による来日公演キャンセル、台風の中第1回フジロックで演奏したという逸話から“神格化”されたのだろう。

だが、日本人、少なくともBABYMETALファンはレッチリの音楽性が好きなのだろうか。演奏は決してうまくないし、歌詞は意味深だし、パフォーマンスは凶暴で下品。フジロック、レッチリのライブどうでした?よかったですか?

くだらない紙芝居の嘘くささとは裏腹に、技術の粋を集めた楽曲、演奏と、生身の少女たちの努力が感動を呼ぶBABYMETALと、反体制とヤク中の歌詞のレッチリとは、水と油ではないか。

Metallicaやアイアンメイデン、ジューダスプリースト、スリップノット、リンプビズキットと2マンライブ的にツアーを回るのはメタルバンドとしてステップアップになるだろう。ポップ界の頂点に立つマドンナやレディガガの前座に立つことも、トップアーティストとしてよい経験になるだろう。

だが、寒いさむーいイギリス、スコットランドの12月、大事なグラミー賞前の12月、アメリカならまだしも、UKでしょ。ツアーの目玉作りに苦心しているレッチリ側からオファーされて断れなかったという気がしてならないのだ。

初日のTHE O2(オーツ―)アリーナは、02アカデミーブリクストンではない。キャパ23,000人の欧州最大級の多目的アリーナである。グラスゴーのSSE Hydroは13,000人、バーミンガムのGenting Arenaは16,000人。マンチェスターのARENAは21,000人。レッチリ単独ではキツイと思われたからこそ、BABYMETALが求められたのだろう。まあ、東京ドーム55,000人×2日間を埋めるBABYMETALですよ。まず、Sold Outは間違いないでしょうな。オープニングアクトではなく、Special Guestという言い方をしているとおり、2マンライブの色が出れば、もっといいけどね。

なんだかんだ言っても、一般的に考えれば、やっぱり凄いことです、18歳と17歳のアイドル三人組が、女子高生でも知ってる世界のレッチリに帯同してUKツアーですから。国内のどんなアーティスト/アイドルでも無理でしょう。

ぼくはBABYMETALの味方です。決まったからには、どんな状況になろうとも応援しますよ。

がんばれ、戦え!ぼくらのBABYMETAL。

 

PS.

19日Red Nightに続き、9月20日Black Nightにも参戦できることになりました。The Oneの二次先行で当選していたのだけど、払い込みが28日までだと勘違いしていて、締め切りを過ぎてしまい、慌てて一般販売のMosh’shシートを入手したのです。違う場所から見られるので、結果オーライですけど。