第2回:なぜTracの導入に失敗するのか? @ Think IT
少し古い記事ですが・・・。
Tracは確かに便利なツールであり、こういったIT関連のニュースサイトでもたびたび取り上げられます。
しかし、その効果については思ったほど聞こえてきません。
一部のコアエンジニアが使用しているだけで、IT部門全般で使われているかというとそうでも無いようにも思えます。
Tracはバグ管理システムというようにも呼ばれていますが、利用用途は何もバグ管理だけではありません。
Tracの肝になるチケットと言う概念は、バグ情報だけを記載できないわけではなく、タスク管理やナレッジDB、はたまた議事録代わりに使うなんて事もできたりします。
TracにはWikiによる強力な情報共有ツールとしての機能や、RSSによる情報発信、多様なプラグインとWeb2.0で主流となっている機能が満載です。
しかし、これらが社内でうまく働かないのは、エンタプライズ2.0という言葉が名ばかりになっている現象と同様だと思います。
Tracはプル型の情報ツールですので、情報を受け取りたい人は自らが進んでTracの情報を参照しに行かなければなりません。
しかし、この文化が社内にはない。
個人の場合、家のPCを立ち上げてお気に入りの巡回ルートが自分の時間で回れますが、業務においてはそれが難しくなっています。
メールなら強制的に相手に情報を受け渡す事ができますが、Tracはそれを引き出す意識をしていないとせっかく発信した情報にホコリがかぶってしまいます。
つまりは、Tracの利用者は常にTracのことを意識しておかないといけなくなります。
メールなら勝手に自分宛の情報をメーラーが拾ってきてくれますが、Tracは自らが取りに行かないといけません。
RSSによる情報配信ができるので、RSSリーダーを使えばメールと同様の事ができますが、それ以外に用途が無い場合、RSSリーダーをTracの運用で必須のツールにすることも難しい状況になります。
これはプライベートと仕事の場において時間軸や考え方が異なるので仕方が無いところがありますが、社内にこうしたWeb2.0系のツールを入れるには、根本的にその辺りの意識改革も重要になってきます。
Tracを社内に浸透させる一つの方法として、Trac本来のバグ管理システムという枠組み以外の用途も考えてみるというのはどうかと思います。
例えば、先に書いたTracのバグ管理以外の3つの用途を考えてみると・・・
1. タスク管理
Tracのチケットではマイルストンやコンポーネントを使ってチケット自体を分類させる事ができます。
関係は
チケット < コンポーネント < マイルストン
というような関係です。(コンポーネントは特に必要ない場合もあります)
タスク管理としての無難な使い方としては、プロジェクトの作業をすべてチケット化してしまうという方法です。
この場合、マイルストンがプロジェクトになりえます。
各チケット(作業)には担当者を割り振る事ができますし、コンポーネントを割り当てる事でチケットのカテゴリを明確化することができます。
プロジェクトの管理者は、各カテゴリ(コンポーネント)ごとの作業の分散度合いや担当者別の進捗を管理する事できます。
2. ナレッジDB
Tracで登録したチケットは消えることなく積み上げられていきます。
チケットは作業内容が含まれていますので、長い運用の中でチケット自体がナレッジとして蓄積されていきます。
Tracには検索機能も用意されていますので、過去の作業内容とその時の状況を簡単に拾い出す事ができます。
また、強力なWikiの機能により情報を整理する事も可能です。
この辺は、特に説明をせずともWikipedia を見てもらえれば良いと思います。
それと同じ事が実現可能と考えればよいだけです。
3. 議事録
TracのチケットはWikiの機能により自由で簡単に整形化した文章を作り出す事ができます。
Wordなどオフィス文章には負けるとしても、テキストのメールよりはるかに整然とした情報を作り出す事ができます。
なので、ある程度整形化しておいたほうが見やすい議事録のような文章にもTracは向いていると言えます。
また、先ほども書いたようにTracにはマイルストンやコンポーネントによるカテゴリの分類ができますので、情報を整理する事も可能ですし、メールやWordファイルであればいつか埋もれて消えるであろう情報を検索機能により簡単に引き出す事もできます。
Tracイコールバグ管理システムなんだよねという枠組みを外してみてみると、Trac自体のもっと便利でそして環境にあった使い方と言うものも見えてくるのではないでしょうか。
少なくとも、Excelを中心にやっている課題・要望管理やメールを中心としている情報共有は全てTracに置き換えることは可能だと感じています。
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