新マツダ・アテンザに試乗した:拘り編
ということで、一通りデザインを観た後は、イベントの開始です。
まずはマツダ本社からいらした商品企画本部アテンザ主査の方から
新アテンザとはどういうクルマなのかのレクチャーがありました。
先ほどの新マツダ・アテンザに試乗した;デザイン編 でもいくつかご紹介
しましたが、この新アテンザ開発にあたっては数々の拘りがあったそうです。
TAKERIのデザインを忠実に表現することから、ディーゼルにSKYACITV-MT
という新世代6MTを載せること、回生ブレーキをキャパシタに貯めて利用する
i-ELOOP、リニアな操作感を実現するオルガン式アクセルペダルとその配置、
カメラだけではなく、ミリ波レーダーや赤外線レーザーまでも使った全天候で
安全性を確保したスマートシティ・ブレーキ、などなど数えきれません。
スマートシティ・ブレーキについて、例えばスバルのアイサイトだと豪雨で
ワイパーマックス状態だとアイサイトが作動しないそうです。なぜかというと、
アイサイトはカメラで判断してるので、カメラで捉えられなくなると作動しない
らしいです。それに比べてマツダはミリ派や赤外線レーザーも使って、
どんな天候や状況であっても安全性を確保することを最優先してるそうです。
こういった拘りや装備の充実は当然コストに跳ね返るわけです。
にもかかわらず、なぜ実現できたのか。
例えばディーゼルに6MTを載せる件。ただでさえAT全盛なのに新たな6MTを
作ってそれをディーゼルに載せるなんてよくできたもんですよね。主査の方に
聞いたところ、ビックリな返事が。なんと自分が乗りたかったからだそうで。
いやー、自分が乗りたければ実現できるものなのでしょうか。
当然上からは、お前何考えてるんだ!、と言われたそうですが、断固として
譲らずに、最後には「マツダがトヨタのようになってもいいんですか!」と
言ったら、「う~ん、それは・・・。だったらやれ。」と承認させたそうです。
このディーゼルに6MTを載せた話が象徴的ですが、デザイン面はもちろん、
走りも安全面もすべてにおいてこんな感じだったそうです。上からは
マツダのフラッグシップを作れ、との命を受け、それを実現するためには
どうしたらいいか、を考え抜き、それを規範としてすべてのアクションは
取られていったようです。そのためには役員からの言葉も突き返し、
自分の信念を押し通したと。
いやー、これはまさしくマツダの企業風土というか、文化そのものなんでしょう。
さらにこの新アテンザ開発に当たり、財務屋には一切口を挟ませなかった
らしいです。これだけコストにシビアな製造業でコスト担当が口出しできない
なんてある意味信じられません。それだけ現場に権限を委譲し、上は文句を
言わない。売れなければ自分が責任を取るんだ、という暗黙の了解があった
のではないでしょうか。
これは先日のエントリで書いた、日本の経営者に最も足りないもの は、
現場に任せる勇気である、と。マツダは今赤字に苦しんでいて、コストには
ことのほかシビアになってもおかしくないのに、現場に任せるわけです。
だからこそ、こんなにいいクルマができるんでしょうね。
この主査の方とお話ししても感じたんですが、バリバリの広島弁で広島出身で
マツダを愛しマツダで働くことを誇りに思ってることが熱意と共にひしひしと
伝わって来ます。これは広島県人がもたらす風土なんですかねぇ。
どこかの三河商人とは明らかに人種が違います。金勘定よりも自分の想いを
実現することが先だ、という感じですね。
まぁ、これはフォード時代に痛い目にあったこともあるそうです。
フォード時代はまさに財務屋がああだこうだとクチを出してやりたいことが
全くできなかったそうで、その時のトラウマがあるので金勘定よりもまずは
やりたいことをやる、のが今のマツダを支えてるようです。SKYACIV技術が
この新アテンザで花開いたといったところでしょうか。
CX-5である程度の成功を収めてますが、この新アテンザがこれからのマツダ
を象徴するクルマになっていくことは間違いありません。これに続いてアクセラ
やデミオなどが次期型でどんどん出てくると、赤字のマツダも復活を遂げるに
違いありませんね。あとは輸出が7割という体質が改善できればねぇ。
ということで、これらはほんの一例ですが、マツダのクルマメーカーとしての
拘りが詰まったまさにマツダのフラッグシップとなるべきこの新アテンザ。
前置きが長くなりましたが、このレクチャー後、やっと試乗です。
続く・・・。
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