ベイサイドホテルにて1 | 秘密の35年☆赤い糸の行方

秘密の35年☆赤い糸の行方

何度別れても、切れることのなかったふたりの糸。二股だったときも、彼が「あの人」と結婚してしまったときも、わたしが海外で暮らし始めたときも。音信不通6年、14年ぶりの再会から、再び動き始めた恋。国境を越えた超遠距離・婚外恋愛。

<「して欲しいこと」の続きです。>

帰国前の最後のデートなのに、
その日はあいにくの大雨だった。

激しく降り続ける雨に、
家を出るタイミングがつかめず、
予定した時間を少し過ぎてしまう。

待ち合わせに指定されたのは
東京・竹橋。

ゆりかもめに乗るのは初めてだった。

「不安なら途中の駅まで迎えに行くよ」

「大丈夫。ちゃんと乗れるから」

昔から方向音痴のわたし。

でも電車の乗り方ぐらいわかる。

駅について電話を入れると、

「今から行くから」

と言われた。

10分ほど待っていると、
駅のすぐそばのビルから彼が現れた。

先に着いてたんだ。

いつもはわたしのほうが待たされるのに。

こんなことだったら雨なんか気にせず、
さっさと出てくればよかった。

ほんの少しの遅刻を悔やむ。

「ごめん、仕事のメールを
入れなくちゃいけなくて」

携帯を片手に彼が言った。

「大丈夫」

少し距離を置きながら、彼の後をついていく。

この日が終わったら、
来年になるまで会えない。

それをわかっていて、前回会ったとき、

「今度はもう少しいいホテルにしよう」

と言ってくれた彼。

ふたりきりになれるなら、
どこでもよかった。

ただその日を特別なものに
しようとしてくれる、
その気持ちだけで十分だった。



彼が選んだのは
インターコンチネンタル東京ベイ。

ほんの数時間、抱き合うためだけに
用意された贅沢すぎるスペース。

目の前には海が広がっていて、
その向こうにテレビ局、観覧車、
レインボーブリッジが見えた。

空はどんより曇ったまま。

せっかくの景色なのに
灰色に染まってた。



彼は机に向かうと、パソコンを開いた。

海外から帰って来たばかり。

それでなくても普段から忙しい人。

やらなくてはいけないことが
たまっているのだろう。

わたしは彼の仕事が一段落するまで、
部屋の中をうろうろしたり、
バスルームへ行ったりして
時間をつぶした。

彼が机から離れる様子はなかった。

そのうち何もすることがなくなり、
窓際のソファに腰掛けて、
その後ろ姿を見つめていた。

そばにいって、後ろから抱きつきたい。

そんな心境にかられる。

ようやく彼がこちらを振り向いた。

「きりがないね」

そう言って苦笑い。

やっとふたりの時間が始まった。

(続く)

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