■日本全体が負のイメージに
福島第1原子力発電所の事故の影響で、野菜や魚、
水道水から基準を超える放射性物質(放射能)が検出された。
このため農水産物が買い控えられ、
ペットボトルのミネラルウオーターに客が殺到。
「東京も危ない」といった噂が広がり、
関西などに“自主避難”した人もいた。
こうした風評や噂への過剰な反応は、被災者の生活の糧を奪いかねない。
被災地の復旧・復興のためにも合理的な判断と冷静な対応が求められる。
◇
10分の1以下の値
「大至急ペットボトルの水を送ってほしい」
米国ニューヨークに住む日本人の男性医師は、
知人からのメールに驚いた。
メールには「2リットル6パックを8箱」とある。
100キロ近い重さだ。
男性医師は「東京でペットボトルの水が足りないというのは伝え聞いていたが、
個人が多額のお金をかけて取り寄せる必要があるのか。
日本の水道水がそんなに危険な状況だとは思えなかったので、
さすがに送らなかった」と打ち明ける。
実際、「安全」な水道水を危険視するのは風評や噂によるところが大きい。
水道水の利用が減っても経済的に困る人はいないが、
野菜や魚などへの誤った風評は、生産農家や漁業者の生活を直撃する。
基準を超える放射性物質が検出されて以降、
安全とされている野菜や魚の取引が停止されたり、
出回っているものにも買い控えがみられたりした。
JA全中(全国農業協同組合中央会)広報課の元広菜穂子課長は
「出荷停止以外の地域の野菜は安全性に問題がないのに、
取引停止や10分の1以下の値段に買いたたかれたりしている。
政府が補償するといってもいつになるか分からないし、
日々の収入が途絶えた生産者には深刻な状況が続いている」と話す。
漁業関係者は「魚介類全体が汚染されていると思われるのが怖い。
他に食べるものがなければ別だが、肉や加工食品など多くの
選択肢がある中で、あえて魚を食べる人がどれだけいるのか…」と心配する。
■安全・安心を発信
風評被害で売れなくなった野菜などを
積極的にスーパーやデパートなどで販売する動きもある。
しかし、本来の売り上げにはとても及ばないのが現状。
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