ARKE STRING PROJECT / ACQUARIO | 晴れ時々ジャズ

晴れ時々ジャズ

日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

2004年の録音、リリースなので、ほやほやの新譜ではありませんが、聴いて良かったので書きましょう。
ARKE STRING PROJECTは、弦楽四重奏にコントラバスが加わった編成のクインテット。曲によってSTEFANO BOLLANI(だーい好き!1972年12月5日、ミラノ生まれ)とGABRIELE MIRABASSI(只今追跡中。イタリアのペルージャ生まれ)が参加しているので購入してみたのですが、本作は実に素晴らしい!

クラシックや現代音楽をベースに、民族音楽やジャズを取り入れたチェンバーミュージックは難解さがなくポップに仕上がっていて、どの曲も素晴らしい出来。この人たちのことは全く何も知らないのですが、演奏のレベルは高く、ピチカート奏法も多く用いた縦横無尽の美しい弦楽アンサンブルが堪能出来る一方で、こんなことやってもええんかいな?というような音まで出していて、とにかく面白くて聴き応えは満点です。
『春の祭典』以外のクラシックは退屈するので聴かないけれど、弦楽器のアンサンブルは好きという困った人種の私にとって、本作は貴重な一枚となるに違いありません。これからも、弦楽アンサンブルが聴きたくなった時にはきっと、真っ先にこれを引っ張り出してきて聴くことでしょう。
全9曲のうち7曲がARKE STRING PROJECTのメンバーによる持ち寄りのオリジナル。残りはSTEFANO BOLLANIのオリジナルが1曲。9曲目はボーナストラックで、JOE ZAWINUL作曲のBIRDLANDを演奏しているのが嬉しいじゃありませんか。

1曲目、STEFANO BOLLANI作曲のI TRENI CHE VORREIはピアノが主役で、イタリア的哀愁の漂うロマンティックだけれど甘すぎないメロディーが3拍子にのっている。ここではさすがに例の“いたずらっこ”はやっていないけれど、ピアノで軽やかに“歌ってる”ところにBOLLANIらしさが発揮されています。
2曲目のTRA DUE OASIは、GABRIELE MIRABASSIのクラリネットが主役の静かで内省的な雰囲気の曲。弦楽アンサンブルとMIRABASSIのクラリネットのコンビネイションは抜群で、思わず聴き惚れてしまいました。GABRIELE MIRABASSIは、クラシック的アプローチから中間部のジャズそのものといった盛り上がりを見せるアドリブソロまで、楽器を実によくコントロールして素晴らしく美しい音を聴かせています。
3曲目のELICOIDALEは、ARKE STRING PROJECTのダイナミックで生き生きとしたアンサンブルが堪能できます。変拍子を取り入れた疾走感とリズム感に溢れる曲で、弦と弓の摩擦音だけを強調して効果音的に用いたり、コントラバスのピチカート奏法がクローズアップされたりと、変化に富んでいて大変に聴き応えがあります。
4曲目のNON FERMARMIはSTEFANO BOLLANIのピアノが主役。6拍子のミステリアスな雰囲気で、上質な映画音楽を聴いたときのようにイマジネーションが刺激されます。
5曲目のTARANTAは民族音楽そのもので面白い。イントロはチェロがポルタメントで二胡のような音を出していて、エフェクトがかかったようなギュイーンという弦の音が小さくかぶさっている。ところが本編に入ると力強いリズムに溢れたスコットランドかどこかの舞踏曲みたいなのねー。さあ、みんなで踊りましょ。
6曲目のJACOは、一転してもの悲しく、暗く、沈んだムード。コーランみたいな低~い男声のヴォイスが効果的。タイトルのJACOはJACO PASTRIUSのことなんでしょうね。アンサンブルはもちろんのこと、主役のチェロのソロが美しいのなんのって、アナタ、涙ちょちょ切れまっせ~。
一番のお気に入りは7曲目のタイトル曲ACQUARIO。まずメロディのよさが際立っている。ARKE STRING PROJECTのアンサンブルの繊細さと緻密さも驚くばかりの美しさ。GABRIELE MIRABASSIの抑制の効いたクラリネットも素晴らしいの一言。
9曲目はJOE ZAWINUL作曲のBIRDLAND。いつもこんなボーナストラックなら、大歓迎で文句はないんですけどね。
ん?イントロはヴァイオリンをギターみたいにストローク奏法で弾いているのかな?ヴァイオリンを抱えてジャンジャカ弾いているところというのはちょっと想像しにくいけれど、きっとそうに違いない(;^_^A それにしてもメインのヴァイオリンの出す安モン臭ーい歪んだ音といい、フレーズの最後で弓をぐいっと引いて急激なポルタメントでキュインッという高音を出す“はすっぱ女”みたいな演奏の仕方といい、なんという素晴らしさなんでしょうか。お堅いヴァイオリンの先生にこれ聴かせたら、間違いなく卒倒しますね(笑)STEFANO BOLLANIのピアノとの絡み具合も最高で、躍動感と勢いを感じるアンサンブルが素晴らしいです。

ARKE STRING PROJECTが本作限りの弦楽アンサンブルだとしたら、非常にもったいない話です。ぜひ次作品も出していただきたい!
御用とお急ぎでないかたは↓CARLO CANTINIのHPへどうぞ。イタリア語だけど。
     http://www.carlocantini.it/
こちらは↓VALENTINO CORVINOのHP。
     http://www.valentinocorvino.it/
ボラちゃんのHPは↓こちら。アーティスト紹介は日本語で読めまっせ。
     http://www.stefanobollani.com/
GABRIELE MIRABASSIのことが知りたいかたはこちらへ。
http://www.ijm.it/mirabassi.html
■ARKE STRING PROJECT / ACQUARIO (Egea Records SCA 113)
CARLO CANTINI (vn)
VALENTINO CORVINO (vn, voice)
SANDRO DI PAORO (ba)
PIERO SALVATORI (vc)
STEFANO DALL'ORA (cb)
with
STEFANO BOLLANI (p)
GABRIELE MIRABASSI (cl)
入手先:Walty堂島