6/8(日)版の日経ヴェリタスに、機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームの広告が出ていました。
先日、アデランスの株主総会のトピックの時にちょっと触れましたが、議案の賛否が気になる微妙な争いの場合に効果を発揮しそうな気がします。
■アデランス(8170)株主総会
http://ameblo.jp/ir-man/entry-10101345623.html
日経ヴェリタスの広告では、ずいぶんズラリと会社名を並べてきました。
22面と51面(紙としては1枚です)ぶち抜きの広告で、途中の紙面をとっぱらってみると、けっこう迫力あります。
水産・農林業:1社 日本水産
建設業:10社 長谷工、千代田化工建設、積水ハウス、大和ハウス工業など
食料品:10社 サッポロ、キリン、アサヒ、雪印、日清製粉、味の素、日清食品、JTなど
繊維:5社 オンワード、グンゼ、帝人、東レなど
紙・パルプ:2社 王子、日本製紙
化学24社: クラレ、旭化成、住友化学、花王、ファンケル、日東電工など
医薬品:8社 武田、アステラス、エーザイ、ロート、沢井製薬など
石油・石炭:4社 出光、新日鉱HD、コスモ、新日本石油
ガラス・土石:4社 旭硝子、TOTOなど
鉄鋼:5社 新日鉄、住友金属、神戸製鋼、JFEなど
非鉄金属:8社 住友金属鉱山、三菱マテリアル、三井金属鉱業、フジクラなど
金属製品:1社 ノーリツ
(こちらもスティール銘柄だっけか)
機械:18社 日立建機、コマツ、クボタ、ダイキン、栗田工業、三菱重工業など
電気機器:40社 日立製作所、東芝、三菱電機、富士通、NEC、SONY、松下電産、日本電産など
輸送用機器:10社 日産、いすゞ、マツダ、ホンダ、スズキ、ヤマハ発動機など
精密機器:4社 ニコン、オリンパス、シチズンなど
その他製品:8社 任天堂、ヤマハ、宝印刷、プロネクサス、大日本印刷、凸版印刷など
(さすがに、宝印刷とプロネクサスは入ってますねー)
電気・ガス:8社 東京電力、東北電力、電源開発、東京ガスなど
(おっ、Jパワーも。そりゃそうか。)
陸運業:7社 東急電鉄、JR東日本、JR西日本、阪急阪神HD、日本通運、ヤマトHDなど
海運業:3社 日本郵船、商船三井、川崎汽船
空運業:2社 JAL、ANA
倉庫・運輸関連業:1社 三菱倉庫
情報・通信業: 24社 野村総研、フジテレビ、オービック、ヤフー、エイベックスHD、NTT、NTTドコモ、KDDI、スクエニ、ソフトバンクなど
卸売業:12社 双日、伊藤忠、丸紅、三井物産、住友商事、三菱商事など
小売業:17社 Jフロント・リテイリング、ドトール・日レス、セブン&アイHD、良品計画、ドン・キホーテ、ユニマットライフ、ファミマ、千趣会、高島屋、ニッセン、イオン、ヤマダ電機など
銀行業:17社 三菱UFJ FG、りそなHD、中央三井トラストHD、三井住友FG、みずほFG、新生銀行、あおぞら銀行、千葉銀行、横浜銀行、住友信託銀行など
証券・商品先物取引業:9社 野村HD、大和証券グループ本社、新光証券、みずほインベスターズ証券、東海東京証券、いちよし証券、だいこう証券ビジネス、カブドットコム、スパークス
保険業:9社 三井住友海上、ソニーFG、損保ジャパン、あいおい損保、富士火災海上、ミレアHD、T&D HDなど
その他金融業:10社 クレディセゾン、日本証券金融、アイフル、日本アジア投資、リコーリース、オリックス、ジャフコ、大阪証券取引所など
不動産業:15社 三井不動産、三菱地所、東京建物、東急不動産、昭栄、アーバンコーポ、日本綜合地所、クリード、アルデプロ、NTT都市開発など
サービス業:13社 アセット・マネジャーズ、ケネディクス、電通、オリエンタルランド、グッドウィル、CCC、トランスコスモス、ベネッセ、ニチイ学館など
(はぁはぁ・・・
広告面に社名があるのに、上記で紹介していないのは、単に私になじみがないか、気まぐれで書き写さなかっただけです。深い意味はありません。名前が載っていない会社さん、すみません)
ということで、なんと、現在、議決権電子行使プラットフォームに参加している企業は、5/31現在で309社
■東証の上場会社数
http://www.tse.or.jp/listing/companies/
東証1部:1,746社
東証2部: 470社
マザーズ: 198社 計2,414社
■大証の上場会社数
http://www.ose.or.jp/listed/ind_jdks.html
大証1部: 633社
大証2部: 246社
ヘラクレス: 171社 計1,050社
東証、大証に限ってみても、5/31で3,464社の上場会社がありますから、議決権電子行使プラットフォーム参加企業は、シェア8.9%といったところ。
ずいぶん増えたとはいっても、まだまだ未導入企業が多いのが現実です。
かくいう私も、何回か、会社に提案したことがあるのですが、そのたびに玉砕しています(^^;
当社の場合は、
・オーナー系企業なもんですから、安定株主比率が高いため、議決権行使の面であまり不安はないこと、
・機関投資家さんから直接、議決権行使がしにくい等の不満を述べられることがあまりないこと
(といっても、IRしに行く時に、運用会社別の期末保有状況を調べて、明らかに3月末で保有がある機関投資家さんに会う際には、招集通知を直渡ししちゃいますけど・・・。
ついでに、面談の最後に、「ちょっと説明させてください。」といって、議案の主な内容とその上程趣旨を説明してしまうので、あまり不満はでない気もしますが・・・。)
・コストが固定費的にかかること
てな理由で却下されてます。
議決権電子行使プラットフォーム、ちょっとご紹介しましょう。
運営しているのは東証と思いきや、実は、株式会社ICJ(Investor Communication Japanの略)という会社さんです。
■(株)ICJ
資本関係は、東証45%、日本証券業協会5%、米ブロードリッジ社50%といった合弁会社になります。
この議決権行使プラットフォームがどんなメリットがあるかというと、ICJのこちらのページをご覧いただくとよいと思います。
■プラットフォームのしくみ
http://www.icj-co.com/participation/plat.html
個人の方の場合は、直接、自宅に招集通知が届いて、議決権行使書を持って総会へ出席するか、郵送するか、あるいはネット経由で議決権行使するか、という選択肢だと思います。
しかし、機関投資家の場合ですと、ちょっと複雑です。
プラットフォームに参加していない場合は、国内機関投資家の場合、会社が委託している証券代行(株主名簿管理人)から、管理信託銀行へ招集通知が発送され、それから機関投資家に届きます。
その後、機関投資家内部での事務処理フローにのっとって、ファンド・マネジャーさんのところに届けられるか、合議体での検討にのるか、いずれにせよ何らかの議決権行使をすることになりますが、それが一斉に2週間前に発送・回送・回送を重ねるうちにどんどん日にちが少なくなっていって、議案を満足に調べる余裕もない状況になります。
しかし、機関投資家さんも、その背後にいる実質株主(年金など)から監視されていますから、議決権行使しないわけにはいかない。
年金等の議決権行使基準に従ったり、その機関投資家さんの独自の議決権行使基準でもって、議決権行使をせざるをえません。
場合によっては、ISS等の議決権行使助言会社の助言内容に従うこともあるでしょう。
■取締役会への出席率75%未満は再任反対?
http://ameblo.jp/ir-man/entry-10061531358.html
いずれにせよ、非常に時間が不足するわけです。
とくに海外機関投資家の場合は、ICJのホームページにあるように、海外機関投資家と証券代行との間に、カストディアンと常任代理人とが入ってきますので、その分、やりとりに時間がかかるのは当然のことです。
ですから、外国人持株比率が高い会社ほど、議決権行使までの時間を短縮してあげる必要があるわけです。
そこで、このプラットフォームを導入すると、対個人レベルにおいても議決権の電子行使lに踏み切ることが大前提となりますが、(営業さんに聞いた話では)証券代行(=信託銀行等)から(2週間前に)招集通知が発送になった段階で、招集通知のPDFがプラットフォームにアップされ、機関投資家さんはプラットフォームからその日にも議案の内容を確認することができる、というわけです。
個人の場合は、1日か2日待てば届きますが、機関投資家さんの場合はメリット大ですよ。
企業にとっても、オーナー系企業ではなく、株式の分散化が進んでいる企業では、議決権行使してもらわないことには定足数すら怪しい、ということであれば、大いにメリットがあると思います。
しかも、機関投資家さんがプラットフォーム上で議案に対して賛否の投票をすると、その結果が24時間以内に信託銀行に到着し、信託銀行での賛否集計にすぐに反映されていきます。
これは強力
こういう仕組みをちゃんと活用していれば、アデランスなどは、直前になってビックリ なんて可能性を低くすることができたかもしれませんよね。
■プラットフォームのメリット
http://www.icj-co.com/participation/merit.html
上記のページに載っている図を見ると、ギリギリになって議決権行使書が証券代行に到着して入力作業を終え、せーの、どんで行使結果がわかる恐さがよーくわかると思います。
ちなみに私の持っている資料では、10月頃に215社導入済み、となっていましたので、この半年あまりで約100社近くも増えた計算になります。
なかなか、普及ペースが上がり始めているといえるのでしょうか。
参加意思のある会社は、その会社の決算月が締まる前、半ば位までにはICJに対して、参加意向表明する必要があります。
電話で問い合わせると、会社まで営業の方がご説明に来てくれますから、よく聞いて、経営陣に提案なさってから決めるのがよいと思います。
いっかい電子化してしまったら、まず、後戻りはできませんからね。
それと、会社法298条1項4号&4項に定める取締役会決議に基づく「電磁的方法による議決権行使制度」の採用が必要になるそうです。
ちなみに、お値段もいちお、かかります(現在の価格はお問合せください)。
時価総額1兆円以上・・・120万円(税抜)
400億~1兆円未満・・・100万円
40億~400億円未満・・・80万円
40億円未満・・・60万円
まぁ、コストとしては高くないと思うんだけどなぁ。
会社全体でみれば、よっぽどムダ遣いしている部分はあるだろうし、それを削って80万くらい出してくれても・・・ とおねだりしたくなります。
その他、議決権行使を電子行すると、証券代行のほうでも、基本料金がかかったり、ID・パスワード発行料が株主1人当たりで発生したり、ネット経由の議決権行使の集計料金(紙で送られてくるものの入力費用の削減との見合いで言えば、減少?)といった追加費用が発生するかと思いますので、こちらは、信託銀行さんとよく相談のうえ、コストの見積りをすべきかと思われます。
ICJさんには、頑張っていただいて、早く議決権電子行使プラットフォームに参加するのが当たり前だよ、というように普及させていただきたいものです。
ということで、私も、今回は応援記事を書かせていただきました~
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