アデランス(8170)株主総会 | IR担当者のつぶやき

IR担当者のつぶやき

上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

5/29(木)、アデランス株主総会でスティール・パートナーズなどの反対により、現経営陣の選任議案が否決されてしまいました。


■NIKKEI NET 株主総会で現取締役の選任否決


今日の午前中は、投資家訪問のアポが入っていたので、ウチのスタッフにアデランスの株主総会に行ってもらいました。

以下、先日の東急ストアのように、間接話法はなるべく避けて書いて行きたいと思います。


場所: ベルサール西新宿ホール


議長は、社長の岡本氏。

最初の議決権個数等はのちほど報告、ということで端折っています。

(正確に集計する必要があったのかなと思われます。)


監査役からの監査報告(会計監査人は京橋監査法人)の後、ナレーションによる事業報告がありました。

内容的には、招集通知添付書類の事業報告の読み上げです。


■アデランスHD IR情報

 http://www.aderans.co.jp/company/investors/index.html


■アデランスHD 株主総会招集通知

 http://www.aderans.co.jp/company/investors/images/pdf/20080514.pdf



ビデオは約20分ちょっと。

ビデオ終了後、社長が引き続き、業務の適正を確保する体制、反社会的勢力排除に向けた基本的な考え方、株式会社の支配に関する基本方針について説明していきました。


(全体的に、岡本社長、やや早口で読み上げっぽい口調だったようで、少々プレゼン下手という感じだったようですね。)


次いで、議決権数等の報告がありました。


2/29現在の株主数: 8,776名

発行済株式総数: 41,713,388株

議決権を有する株主数: 8,116名

その議決権個数: 386,428個

本日出席株主数: 2,199名(議決権行使書含む)

その議決権個数: 328,930個


事業報告&議案についての一括審議方式による方法で進行しました。


質疑応答:


Q1.国内かつら市場についてはどのように事業展開していくつもりか。


Q2.・招集通知の早期発送、会場のアクセスのよい所をお願いしたい。

 ・業界のリーディングカンパニーの割には、業績があまりにも悪い。とくに海外事業。

  実態としてはもっと悪いのではないか。

 ・中期経営計画は未達だったとしれっと言うが、今後どうしていくのか。もうすぐ創業40年(今回が第39回総会)だが?

 ・現預金280億は多すぎる。もう少し内容を開示してもらいたい。また、自社株買いなど実施してもらいたい。


(このあたりの細かい質問について、事務局に確認したり、時間もたせるために株主に再度質問事項を言わせたりして、ちょっと進行がうまくなかったように思われます。)


Q3.2号議案に関して、問いただしたいことありということで、自分でもアデランスの顧客だという方が、アデランスの商法等について、かなり激しく強く経営陣に迫る。2号議案には反対と明言。


Q4.業績について。

 ・かつら市場はあまり大きくないなかで、他社(アートネイチャーなど)もTVCMなどで攻勢をかけている。何か、具体的な戦略を持っていないのか。また、当社はどのような技術をもっており、どのように業績に反映されるのか。

 ・中期経営計画発表時は株価は上がったようだが、最近は度重なる下方修正。どのような計画の作り方をしているのか。

 ・2号議案で社外取締役を導入するようだが、その経緯・理由を説明してほしい。かつら業界は専門性が必要だと考えられるが、社外の方が会社のために何か役に立てる面があるのか。


Q5.議事運営について

 ・決議事項の上程がいまだない。質問を受ける前に、配当や社外取締役導入についての説明をするのがスジではないか。


Q6.買収防衛策について

 ・昨年の総会で承認・可決されたものと認識しているが、今回の総会で付議されていないがその理由、また独立委員会での議論は?

 →これについては、毎年上程ではなく、3年間の期限を設けているとのことです。

 ・最近、防衛策を見直す会社も出てきているが、どのように考えているか。社内取締役の意見は?


Q7.全般的な雰囲気として、誠心誠意という姿勢が感じられない。


Q8.長年の蓄積による潤沢な資金からか、あまり緊迫感が感じられず、リーディングカンパニーであることが緊迫感がない理由なのではないか?株主還元もしっかり行って、目に見える形で実績として残してほしい。

 ・海外事業の展開に関して、戦略はあるのか。より具体的な形で発信してもらいたい。


Q9.企業価値向上策について

 ・国内コア事業、フォンテーヌ事業について詳しく説明してほしい。

Q10.女性用かつら市場について

 伸びていると思われるが、日本の市場規模はどれくらいで、育毛、部分かつらなどを含めて、アデランスはどこまで関わっていくのか。


Q11.事業内容について

 担当者がころころ変わってしまい、信頼感・安心感がない。


議案の審議・採決:


ここで議案の「上程」および説明をしたようです。


1号議案: 1株当たり50円の配当議案です。

 とくに異議なしで進行したようですが、包括委任状を有する株主さんが会場にいたようで、議長の岡本社長は

その賛否を確認していました。


2号議案: 取締役9名選任の件

 社外取締役3名を含む取締役選任議案です。

 社外取締役選任の理由は招集通知に記載のとおりと説明したのち、議長の「本議案につきご異議ございませんでしょうか?」の問いかけに、勢いよく


「異議あり!!


の声があがりました。


現経営陣では10年先の会社の将来が不安だ。

現経営陣では、民法および会社法に定める善管注意義務、忠実義務をまっとうできない。

よって、2号議案には反対するビックリマーク


との趣旨でした。


議長は、貴重なご意見ありがとうございます・・・と受け流しながら、「他にご異議ございませんか?」と審議を促しますが、会場からは「異議なし」の声。


それでは採決・・・となり、


議決権行使書提出分を含め出席株主の過半数の賛成があったと議長は発言したようです。

社外取締役候補の2名は承認・可決されたが、その他の候補者7名については否決されました、と早口にまくしたてます。


今後は法令上の取締役としての権利・義務を有する現経営陣9名を加えた11名で経営を行っていく旨を説明。

(会場内は少なからずショックが覆っていたようで、シーンとなっていたようです・・・。)



そして、淡々と3号議案: 監査役3名選任の件へ。


あっさり承認され、閉会宣言・新任取締役を一言紹介して終了。

あっけない幕切れ、経営陣退場に、会場内ではまだ「え、え~っはてなマーク」と、信じられないという雰囲気が漂っていたということです。


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翌日の30日の新聞では、スティール・パートナーズのほか、一部機関投資家や個人投資家も反対に回ったとの解説がなされています。


それにしても、現経営陣が(社外取締役は別としても)そっくり否決されてしまうなんてことが、本当に起こり得るなんて・・・!?


しかも、ドラマのハゲタカのように、スティールと現経営陣が株主総会でガチンコでぶつかりあってというわけではなく。

(新聞では、すでに1~2日前に、これはヤバイという状況をつかんでおり、否決されることがわかっていたとされています)


総会での質問項目を聞く限り、たび重なる下方修正や中期経営計画未達、業界トップといえども競争激化によるライバルの追い上げに利益水準を減らしてしまったことに対する個人株主の不満が爆発するなど、確かに、多くの株主からの信認を欠いていた状態だったように見受けられます。


静かな2号議案否決だっただけに、私も会社の仕事としてIRを担当しながら株主総会を援護することも行うので、本当に背筋が寒くなりました。


ひぇ~・・・、直前になって反対多数です、なんて情報が、証券代行からもたらされても、もうどうしようもないですよ。

そこから、機関投資家訪問してご説明するヒマなんてありゃしないんですから。

(アデランスのIR担当者さんや総務関係の方、怒られたろうなぁ・・・。恐い~~~っあせる


アデランスは、東証の議決権行使プラットフォームには乗っていなかったのかな?

招集通知を見る限り、議決権の電子行使をやっていないようですから、東証の議決権行使プラットフォームには乗れなかったのでしょうね。

(以前、営業の方のお話を聞いたときには、議決権行使プラットフォームに参加していれば、招集通知が発送されて(当然のように招集通知のPDFも有効活用され)早い機関投資家さんだと、2~3日後から議決権の行使状況が会社側で把握できるようになる、ということでした。

早めに議決権行使状況を把握していれば、1週間くらいは機関投資家対策をする時間があったかもしれませんね。)


まぁ、新聞で叩かれているように、油断があったのでしょう。


スティールも面と向かって会社と対決姿勢を出さなくなってきているので、余計に、会社としては気を引き締めて、水面下でどんな動きになっているか、しっかり把握していかないといけないですね。


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めずらしいケースなので、私も勉強、勉強・・・φ(._.)


・総会で現経営陣の再選が否決、社外取締役2名だけが選任された

取締役会設置会社においては、取締役は、3人以上でなければならない(会社法第331条第4項)に反する状態になっちゃってますね。


・取締役数が欠けた状態の会社経営はどうするのか

役員が欠けた場合または会社法もしくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了または辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する(会社法第346条第1項)。

 この条文があるので、現経営陣9名+新任社外監査役2名の11名体制になるんですね。


・あとは臨時株主総会の基準日がいつか?ってことでしょうか。

まさか、早速5月末日、なんていわないよな~。

また権利取りするの大変なんだから・・・(^^;

今度の臨時株主総会は、役員選任だけでしょうから、まぁわざわざ出席しにいくまでもないかもしれませんが・・・、現経営陣が否決された後、どんな人選をして、その理由の説明やそれに対する質問など、興味津々な部分はありますけどネ。


今しばらく注目しておいたほうがよさそうですね。



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