平和奥田、違法配当の疑い | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

滋賀県の中堅ゼネコン、平和奥田(大証・監理1790)で先日来、旧経営陣の不適切な会計処理が発覚し問題となっていましたが、2006年9月期決算において、粉飾により約1億1,000万円を違法配当していた疑いが出てきたとされています。


不適切な会計処理の内容については、こちらにまとめられています。


■不適正な会計処理等に伴う過年度決算修正に関する(中間)調査報告について


■追加訂正分


(最初のバージョンだと、何がどんな架空売上だったのかよく分からない箇条書きでしたが、追加訂正分については、文章での説明が追加されており、多少分かりやすくなっています。証券取引所の指導でもあったのかな・・・。)


架空売上の計上、土地購入者の借入金に自社が連帯保証をする売上、工事進行基準の適用に当たり架空の請負金額を含めたり、原価を低く見積もったり・・・。


まぁ出るわ出るわあせる


よくこれだけ操作したもんだとあきれるほどあります。

修正額の合計は、会社発表によると52億7千万円ビックリマーク


EDINETで2006年9月期の有価証券報告書を確認してみましょう(EDINETコード:151245)。


連結貸借対照表における純資産額は、53億8,167万円利益剰余金は29億6,351万円計上されています。


有価証券報告書の添付書類としてEDINETで開示されている2006年9月期の招集通知によれば、期末配当金8円、中間配当と合わせて1株当たり16円の配当が行われています。

この配当総額1.1億円が、配当原資がなく、実は違法配当だったのではないか、とのことです。


監査を担当しているのは、かがやき監査法人(愛知県安城市)というところですが、同監査法人は前任の中央青山監査法人が2005年12月の総会時点で辞任し、2006年1月から一時会計監査人となり、その後2006年12月の総会で正式に会計監査人に就任しています。


■一時会計監査人の選任に関するお知らせ


そんなわけで、新聞報道では、かがやき監査法人が不適切な会計処理を踏まえて決算書類をチェックしなおした結果、同決算期に配当原資がなかった疑いが出てきたとされているのですが・・・。


期末監査中に監査法人が急に辞任してしまって、あわてて次の監査法人を探すとかといったタイムスパンではないので、かがやき監査法人も事前にチェックしていたはずだと思われるのですが。


時系列でいくと、2006年9月期の違法配当の疑いって、自らが監査していた年度のことじゃないんでしょうか汗


そうはいっても、会社側も、黒字の期も含め、実際は2004年9月期~2007年9月期までの4期連続の赤字で、債務超過額が7億6,000万円にのぼると明らかにしたとされていますので、どっちもどっちというところでしょう。


新聞では、東京都内での不動産取引をめぐる約5億円の不明朗な支出のほうに質問が集中したとのことで、あまり監査法人の責任追及のほうには触れられていなかったのですが、かがやき監査法人も会社が発表したくらいあちこち粉飾されていて、気がつかなかったでは済まない気がするんですが・・・。


そんなに巧妙に隠蔽工作が行われていたのかしらんはてなマーク


不思議なことに、問題企業の監査を引き受ける監査法人は、どこかしらあるんですよね。


企業サイドからすれば、問題だと叩かれていても、全部が全部クロという形で決着ついたわけではないので、何とかグレーだ、とか、一部クロい所もあったが他はシロだ、と一生懸命説明しようとしているのでしょうから、その途中段階でどこの監査法人も引き受けてくれないとなると、完全にアウトになってしまいますし・・・。


そういう意味では、最終的に取引所から上場廃止を宣告されるまでは、どこかの監査法人が監査を引き受けてくれないと、投資家サイドとしては困るわけです。


引き受ける側の監査法人だって、完全にクロだなと思っていたら、いくら監査報酬がほしくたって引き受けないと思うんですよね。

(国選弁護人とも違いますしねぇ・・・。)


こうした、後になって問題が明らかになった企業の財務諸表監査って、一般の投資家から見て、本当に分かりにくいんじゃないでしょうか。

監査法人は資本市場に対して使命を負っているわけですが、報酬は企業からもらう、と。


会計とか監査のことをまったく知らない友人に聞かれても、私もなぜこの仕組みでよいのか、きちんと説明できる自信がないなぁ・・・。


(通常の場合は、いいんですよ。企業が自らの財務諸表の正しさを資本市場に説明するために、コストを払って公認会計士に適正性に関する意見を表明してもらう、といった構造で説明つけられますので。


問題は、不祥事を起こしている企業(=社会からの信頼性が揺らいでいる企業)が、監査法人を雇って財務諸表の適正性について、都合のよい意見を表明してもらっているのではないか?という疑念に対して、監査法人が社会的期待に応えられる仕組みになっているのかなぁ、ということです。)


IXIとネット総研の件では、監査法人も伝家の宝刀を抜きましたが、通常の不祥事(ないし監査中の突然の辞任)の場合に、後任の監査法人がいきなり不適正や意見不表明を出す事例って、見たことないですし・・・。


監査法人に対する社会的期待と責任についての仕組み、本当に考えさせられる点が多いです。



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