監査法人から反論されたら・・・ | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

金融庁は、監査法人の変更時に、企業側の主張だけでなく、監査法人側の主張も併記するよう、制度改正を進める意向だといいます。2008年度決算から適用できるよう、金融商品取引法の関連政省令の改正を行うもようです。


10/11付 日本経済新聞に紹介されていました。


監査法人の交代やその理由は、東証の適時開示規則で開示が義務付けられています。


みすず監査法人からクライアント企業が他の監査法人に乗り換える際に、非常に多くリリースされていましたが、ここで問題視されているのは、企業に何らかの問題(不適切な会計処理や、決算上減損を強く求められたりして経営陣と意見が対立するケース)を抱えている場合だと考えられます。


こうした場合に、企業が一方的に交代理由を発表するだけでは、投資家に正確な情報が伝わらないおそれがあると考えられ、投資家に公平な情報を提供する意味でも、監査法人側の反論を公表すべきだとされたようです。


具体的な方法としては、監査法人側に情報開示できる仕組みを整えるという意味で、監査法人の主張を企業が提出する臨時報告書に開示するようにする、などの方法が想定されているようです。

この施策により、金融庁は、監査法人の独立性の向上につながると考えているとのことで、企業側が不適切な開示をした場合には、罰則の対象とする方向らしいです。



さぁ、だんだん大変なことになってきました汗

企業への監視の目がますます強まってきます。


もちろん、不祥事や「不適切な会計処理」をしていない企業にとっては、怖くもなんともない話ですけれど。


しかし、将来の見積りなどを巡って、監査法人と意見が対立するケースは少なくないと思われます。

とくに引当金の計上や、(のれんや有形固定資産の)減損、ゴーイング・コンサーンなどは、企業にとって死活問題になる側面が多いので、なおさらでしょう。


それでも、監査法人を代えるほど、企業が突っ張る/監査法人が引かないのは、よほどのケースです。


こうした状況下で、投資家としては、これまで監査法人の交代というと、


「ははぁ~ん、何かあったなはてなマーク


ということで、ひとまず売りで逃げるケースなどが多かったでしょう。

それが、監査法人側から理由が開示されるとなったら、投資家サイドとしては事情がよくわかって望ましいことと思われます。


しかし!!


企業にとっては、怖いですよー。


どんな点で監査法人と意見の対立があったかはてなマーク

監査法人の指摘を受け入れなかった論拠ははてなマーク


など、開示されてしまうと、経営陣として非常にまずいケースが多々あるでしょう。


おそらく、監査法人としては、いざ反論するとなったら、(仮に裁判になっても困らないように)数字やかなり保守的な予測を合理的根拠として挙げてくるはずですし、監査法人が作成した反論文を、公表の段になって企業が勝手に書き替えることは許されないはず。


業績やレピュテーションの面で追い込まれている企業が、ますます引導渡されることになりかねません。


ましてや、そんな状況であったということが判明するなかで、そうした企業の監査を引受けることになる後任の監査法人への視線も、当然厳しいものに・・・。


確かに、なぁなぁの監査で来たから、これほどまでに会計不祥事が続き、おさまる気配が見えないともいえるのですが、考えるとこの監査法人からの反論の仕組み、非常に怖いものがあります・・・。


不名誉な第1号企業には、なりたくないものです。


ただ、監査法人の守秘義務解除の問題をクリアしないと、この仕組みは有効に機能しないのではないかと想像されます。


監査法人が交代したからといって、すぐに守秘義務が解除されるわけでもなく、元クライアント企業の問題点は前の監査法人の監査調書とともに眠ることになる、のがこれまでです。


この制度の運用に当たっては、裁判や当局への資料提出などと同様、元クライアント企業が守秘義務契約を解除しないといっても、相当の内容を監査法人が書けるかどうか、そこに尽きるような気がします。

中途半端な考え方にとどまるようなら、どの監査法人も通り一遍の、監査報告書の文言のような無味乾燥な反論分しか出てこないような結果になるでしょう。



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