アルデプロ、決算速報の開示とりやめ | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

東証の適時開示をつらつらと眺めていますと、アルデプロの「決算速報発表の取止めに関するお知らせ」というのが目につきました。


ふぅ~ん、今どき、IRの後退になるようなリリースは珍しいなぁと思い、どんな事情があるのかなと、中身を見てみました。


■アルデプロ 決算速報発表の取止めに関するお知らせ

 http://www.ardepro.co.jp/pdf_ir_press/195_1.pdf



リリースによると、アルデプロは、これまで各四半期決算ごとに、監査法人の監査を受ける前の段階で、連結・個別売上高・経常利益・当期純利益を速報値で発表してきたとのこと。


2007年7月期決算の速報も、何と8/1!!に公表されています。


■アルデプロ 平成19年7月期決算速報に関するお知らせ

 http://www.ardepro.co.jp/pdf_ir_press/186_1.pdf



しかしながら、前期(2007年7月期)決算において、比較的多額の速報値との差異が生じてしまったようです。


■アルデプロ 平成19年7月期決算と速報値の差異に関するお知らせ

 http://www.ardepro.co.jp/pdf_ir_press/194_1.pdf


上記リリースによると、連結ベースで、売上20億、経常利益で4.7億の下方への差異が生じています。

これは、同社の説明によると、下記のとおりです。


監査法人との協議の結果、会計上平成19 年7 月期の売上に計上できないこととなりました。

これは、不動産取引での一連の事業の中で個々の取引については、正常な取引であるものの結果として会計上不動産売上の計上ができないとの理由によるものです。」


と、どうも要領を得ない説明・・・。


不動産取引として正常な取引なのに、会計上、不動産売上の計上ができない取引って、何・・・はてなマーク

そういうのを、異常な取引って言わないかい汗


どうも、こういう日本語として妙ちくりんなリリースを読むと、反応してしまうなぁ。


その他、不動産係争事件関係で1億1,900万円の損害賠償損失引当金の繰入れアライヴlコミュニティ株の下落による減損1億8,000万円などが特別損失として計上されるとのこと。


また、連結上では、3月に子会社となった会社の業績を連結に取り込もうと考えていたところ、監査法人と協議の結果、期末取得とみなすようにしたため、業績を上乗せすることができなかったといいます。


そんなわけで、「決算速報発表の取止めに関するお知らせ」においては、


「最近の会計基準の複雑さ会計基準の変更などにより、当社が見込んでいた売上高などの計上の認識について、さらに、これまでのオンバランスでの収益の認識からSPC スキームを利用した大型物件の取り扱いが今後増えることによる会計上の認識について、また連結子会社の会計処理などについて、監査法人との協議がより必要になるものと考えられます。」


という点を強調しており、監査の厳格化の流れを受けて、監査が終了しないと業績がどっちに転ぶか分からない、したがって、未監査の状態での決算速報は相当のリスクがある、という認識をされたようです。


小売業での月次売上動向などの開示はされていますけどね。


不動産業ですと、案件一つの利益額が大きいケースもあるでしょうし、期末に何とか売りあがってくれれば計画達成、と思いきや、監査法人から待ったがかかると、IR上のダメージは大きいでしょうね。

気持ちは、非常によくわかります。


当社も、業種は違うものの、比較的順調な決算のときでも、IRとしては早々に上方修正を出したくても、決算整理などに対する監査法人の監査が終了しないと、何を修正しろといわれるか分かったものではないので、なかなか業績修正できなくて、せっかくのチャンスをつぶしたことが何度となくあります。


結局、監査があろうとなかろうと、経理部門がしっかりしていて、監査上、問題のない保守的な会計処理をしていればOKなんですがね・・・。


監査が終了して、明日、明後日に決算短信を発表します、という頃になって、上方修正だ、下方修正だと公表しているようじゃ、遅いっつーの。


しかし、社長を含め、経営陣は上方修正だぁーと公表しておいて、監査上一部修正が入って、発表した数値に未達だったりすると、アナリストからボロクソに言われますからね・・・。

そうした状況を回避する傾向が強まるのは、やむをえないところでしょう。


いずれにせよ、アルデプロのような取組みが、監査の厳格化の流れのなかで捉えられるのか、会社の力不足と捉えられるのかは、マスコミの報道のしかた次第という面もありますが、残念なことではあります。


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