INUUNIQ presents SOUND THEATER
君と僕のかたちのない世界 終章 遥
at 梅田 amHALL
全ての物語をここに記す。
no.1
開場~開幕~《起》ふたりの宇宙遊泳
書き手:vo.竹下咲
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受付を通り、ホールへ足を踏み入れる。
照明の梁志榮(やんちよん)が創り出した青色に染まる空間。
SONIQしゅーちゃんが操作する、客席の左右各2台+後方2台+上方2台(球体)と合計8台設置したサラウンド用スピーカーから、ノイズや交信音、機械音…そう、ここは宇宙船の内部。
あなたたちは、もう既に日常から離れて来ている。
開演となる19:30を少し過ぎた頃、
不意に場内にu-full yukaの声でアナウンスが響き渡る。
『本日は『INUUNIQ presents SOUND THEATER 君と僕のかたちのない世界 終章 遥 』へお越しいただきありがとうございます。
お客様にご案内申し上げます。本日の公演での写真の撮影、録音、録画などはご遠慮くださいますようお願い致します。
また、携帯電話などの電子機器は電源からお切りくださいますよう、今一度ご確認をお願い致します。
本日 皆様は宇宙船に乗り、
地球を捨てて宇宙へと飛び出した、孤独な少年と少女を見守る<目撃者>、
そして共に旅する<体験者>として、
ふたりの未来への物語をご覧いただきます。
出発の準備が整いますまで、今しばらくお待ちください。』
13人編成のINUUNIQオーケストラが幕の後ろにスタンバイを始める。
準備は整った。
さぁ、物語のはじまり。
家族も地球も捨てた少年と少女。
学校にも家にもどこにもふたりの居場所なんてない。
孤独なふたりはある夜25時、
すべり台から宇宙へと飛び出す。
全てを忘れて、
宇宙を駆け抜けるのだ。
サラウンドの宇宙船の音が消え、次の瞬間メインスピーカーから音楽が流れ出す。
カンベユウキ氏が作ったオープニングSEとなる「25時の宇宙」変奏曲。3拍子で、まるで大好きな映画「2001年宇宙の旅」で流れるスケーターズワルツみたいなアレンジ。
その上でu-fullの声で出発のアナウンス。
『本日はご搭乗、誠にありがとうございます。
大変お待たせいたしました。
これより当機は「INUUNIQ presents SOUND THEATER 君と僕のかたちのない世界 終章 遥 」へと出発いたします。
大変お待たせいたしました。
これより当機は「INUUNIQ presents SOUND THEATER 君と僕のかたちのない世界 終章 遥 」へと出発いたします。
孤独な少年と少女の未来を見届ける<目撃者>、そして共に旅する<体験者>として、
宇宙を駆け抜け、様々な世界をご覧ください。
それではよい旅を。』
その言葉を合図にするかのように、SEが爆発音を上げながら加速していく。
音楽に混じって交信し合う声、そしてカウントダウンがスタートし、それと共に金田乃亜ちゃん演じる「少年」と、高桑千歳ちゃん演じる「少女」が、両サイドから幕前にせり出している台へ向かう。
幕がそれに合わせてゆっくりと開いていく。
階段を上り、真ん中で正面を真っ直ぐ見つめる。
出発はもうすぐ。
3
2
1
ゼロ
その瞬間、後ろから神々しい光が照らされる。
ボーカル竹下を除く12人のオーケストラと少年と少女が真っ白な光の中にいる。
全員が真っ白な服を着て、光に溶けている。
そしてインスト曲meteor rainをアレンジした『introduction』をピアノ朝香智子から、静かにそして軽快にスタートする。
オーケストラの音響を担当するのは渡部美香氏。そしてサウンドアドバイザー徳竹敏之氏。
立ち尽くす少年と少女の身体には、カナデクラフト西野氏によるプロジェクションマッピングが照射され、人間なのか、そうじゃないのか。
バンドがドン!と入った瞬間、少年と少女は駆け出し、オーケストラメンバーの間を舞台袖へと走り抜ける。
照明は煌びやかに、センターボーカルのマイクの両サイドにある椅子でありオブジェであるものへとプロジェクションマッピングが当たっている。
ふたりきりの宇宙遊泳。
楽しい旅、ふたりの期待や興奮、未来だけ見つめてる。
あんな嫌いな地球のことなんて何もかも忘れて。
亜光速で銀河系を飛べ!!
『introduction』の最大音量でのラスト、そのまま途切れず『interspace』へ。
1分近い前奏を経てボーカル竹下咲がクチュールママンのウェディングドレスと、made KANMURIのイヤーカフを身に纏い登場。
物語を紡ぐ者、ふたりの支配者、そしてプロジェクションマッピングを映し出すスクリーンとしての存在。
13人のオーケストラ全員で奏でる爆発的なinterspace。
ふたりはどんどん彼方へと飛んでいく。
interspaceが終わり、
ベース安部トモコのリフから『illusion』。
キラキラの気持ちから、繋がれたロボットの物語であるこの曲でふたりは不安に駆られていく。
ねぇ、
逃げ出した宇宙で、ふたりきりで。
この先私たちどうなるの?
言葉に言い表せない不安と焦りは、ふたりを追い詰めていく。
illusion終わり、オーケストラチームとサラウンドシステムによる、不穏の渦。
軋む音、風の音、不協な和音、全てが覆い隠されていく恐怖。
その中で『とある終わりに』のイントロがはじまる。
少年と少女が絶望に苛まれた状態で舞台袖から登場。椅子へ座る。
心の葛藤、この世界から消えたくなる気持ち。
君とふたりなら、どこでもいいと思ったの。
怖いから、考えたくないから、ふたりはまた逃げ出す。
夢の世界へと安寧を求め、コールドスリープ装置に入り、長い眠りへと向かう。
『そして僕らは眠りにつくことを決めたんだ』
ふたりが頭をガクッと垂れる。
暗転。
※コールドスリープ (Cold sleep) とは、宇宙船での惑星間移動などにおいて、人体を低温状態に保ち、目的地に着くまでの時間経過による搭乗員の老化を防ぐ装置、もしくは同装置による睡眠状態。移動以外にも、肉体の状態を保ったまま未来へ行く一方通行のタイムトラベルの手段としても用いられる。
SF作品にはよく出てくる手法である
(wikipediaより引用)
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no.2 「《承》逃げ出した夢の中」→http://ameblo.jp/inuuniq-music/entry-12112298057.html
写真:森下綾音