丹後ちまきさんへ | フランス語発音上達ブログ!

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TOEIC980。早稲田英文→早稲田仏文修士→上智外国語学部修士→上智博士課程在学中の井上がフランス語の発音を上達させるための方法について話します。

丹後ちまきさんへ

>「まったく」「全然」という言葉は、「~ない」というような
>否定を伴う表現なのに、このごろはそれが崩れている、云々」
>という文章が載っていました

昔国文の先生から聞いたんですけど、「全然」って単語はもともと明治のころは否定を伴うことなしに、「全ての点で」においてっていう肯定的な意味で使われてたそうです(例えば三四郎にも「全然無学なんですが、はじめはどうして気がついたものでしょうな」って文章があります)。ところがだんだんと肯定的な用法が廃れていき、否定形をともった用法が主流になりました。しかし、現在ではまた肯定的な用法がでてきてます。というわけで、「全然すごい」みたいな用法は、誤用というよりは廃用の復活に近いと思います。

後、「ら抜き」に関して言えば、「ら抜き」ってのは誤用よりはむしろ「新しい用法」に近いと思います。何でかって言うと、「ら抜き」をすることで今までの日本語には無かった区別をすることができるからです。例えば「行く」とか「書く」みたいな動詞の場合、「行ける/行かれる」とか「書く/書かれる」みたいな感じで受身と可能の使い分けをすることができます。でも、「食べる」とか「持ち上げる」みたいな動詞の場合、従来の表現では可能の意味も受身の意味も「られる」をつけて表現されます。でも「ら抜き」言葉を使うと、受身の場合は「食べられる」、可能の場合は「食べれる」って形で区別できるんですよね。よく注意してみればわかると思いますけど、「ら抜き言葉」を使ってる人のほとんどがこのルールに従ってます。

まあだから、何が誤用かってのは考えてみると難しい話ですね。「母も変だというのだけど、「ほど近い」を気色悪いと感じているのは、うちみたいな古い世代だけなんだろうか。。。」って書かれてますが、じつはその「古い世代」の使ってる言葉もさらに古い世代からみると間違ってるってのはよくあることですし。特に下にあげたような漢字の読みに関しては、今の60ぐらいの人でも右に書いてある慣用読みのほうが広がってると思います。

漸次(ぜんじ)→ざんじ
捏造(でつぞう)→ねつぞう
稟議(ひんぎ)→りんぎ
堪能(かんのう)→たんのう