「・・・あいつらに幸せなんてある訳ないだろ」誠一は吐き捨てるようにいった。
愛歩は小洒落た大きな家にゴールデンリトリバーと戯れていた。
愛歩は歩いていると花屋で花を買いにいた。どこかヨーロピアン風の小洒落た可愛いお店だった。愛歩は花屋で買い物を終えるとトコトコと歩いていた。愛歩は歩道を歩いていると、丸い螺旋状の階段の大きな公園があった。愛歩は気がついたら公園の中の噴水をみていた。ゴーン、ゴーン、ゴーン・・・大きな時計台を愛歩は恐る恐る振り返ると午後2時を指していた。そして螺旋階段をみているとそこには誰もいなかった。そのことが愛歩には鳥肌がたつような怖い感覚だった。近くに公衆電話があったかそこには勿論誰もいなかった。愛歩は再び時計台をみつめた。さっき花屋から帰ってくる時の弾むような気持ちからこんな怖い感覚になっていて、愛歩の気持ちは晴れている空とは反対になんとも言えない気持ちになった。
ゴーン、ゴーン、ゴーン、時計は無情な音を鳴らしていた。愛歩の目の前には噴水の水が流れていた。愛歩はただ、噴水の水をみつめていた。
愛歩は思わず目を覚ました。布団から起き上がると西陽がカーテン越しに差し込んでいた。
目覚まし時計をみると、午後3時を回っていた。
(よかった2時じゃなくて・・)愛歩の脳裏には2時が不吉な時刻のような気がしてならなかった。4:20の時刻より、何故か2時の時計の秒針が不吉なものに囚われた。愛歩は布団の隣に無造作に置いてあるテーブルの下に<悲しみの雨>の本が転がっていた。
愛歩は慌てて本を取り出すとハードカバーの埃を手で払い落とし、本をペラペラめくっていると巻末には真広が生前撮影していたと書かれていた、花屋の写真が出ていた。
(何だろう?初めてみた感じがしない。今日みた花屋にどこか似ている。青っぽい感じの外観や雰囲気とか・・)
花屋の夢をみて、起きてみた本の中には似たような花屋が出てきている。これは果たして偶然なのか?シンクロニシティーなのか?何のために?どうして?愛歩は西陽が差し込む雑然とした部屋の中で、今朝みた家は昔、愛歩が夢で思い描いていた可愛いくて、花壇に花がいっぱいあって、プードルがいて、絵にかいたような家の様相だった。私の小さい頃の夢は素敵なお家に住むことが潜在意識の中に潜んでいる夢だった。何故かマンションに住む自分というものは意識の中にはなくて、こじんまりしているけれど、大きな囲炉裏があってソファーがあって、大きくて大人しい犬とプードルのような可愛い犬が身を潜めるように寝ているようなインテリアは愛歩が理想すると空間だった。そうか、自分は理想する家に住んでいる想いが潜在意識の中に潜んでいたのだ。自分の夢は住むインテリアなどをデザインすることなのではないか?ふと、そんな想いが過ぎった。暖かな囲炉裏があって、プードルがソファーにいて、のんびり暮らすことが今はかけ離れたものではあったけれど、愛歩のぼやけたイメージは暖かな家だった。
愛歩は誠一にメールをしてみた。
<一つ教えていただきたいのですがあの本の後ろに出ている花屋の場所はどこの花屋ですか?>愛歩は勇気をもって送信ボタンを押した。
p.s