第8部 悲しみの雨 第14章 最後の審判 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー

手術室の赤いランプが灯っている。松永舞子が目を真っ赤にして廊下の椅子に座っている。そこに松永和史がくたびれたようによれよれのワイシャツ姿で現れた。

「まだ終わっていないのか?」

「ええっ。先生がいうには、助かる確率は少ないって」

「こんなにも時間を費やして手術をするなんて珍しくないか?一体何時間、手術しているんだよ」

「生死を彷徨っているのよ。あなたもあの子が帰ってくることを祈りましょう」舞子は藁にもすがる気持ちで和史にいった。

「ああっ」

舞子と和史のやり取りを少し離れた所から誠一はそっと眺めていた。


涼太は家に戻ろうとした時、財布を取り出し、あいつらにおごってあげたジャンクフード代を改めてみようとレシートを探していた時、いつもの所に挟まっていたIDカード式の学生証がないことに気がついた。

(あっ、あれっ?)涼太はどこにあるのか探してみたけれど、ポケットの中にも財布の中にもなかった。

(あっ!)あいつらに軽く恫喝された時に財布の中身を見られたことに気がつき、火遊びした所に落としてきたなら、やばい。やばいことになる。涼太は慌てて、マンションの裏口の駐輪場の奥の方にいった。

見知らぬ女が立っていた。見知らぬ女が学生証を凝視していた。

「あのぉ、返して貰えませんか?」涼太は少し緊張したようにいった。

「あっ、はい」真広はしぶしぶ返してくれた。涼太はその顔に見覚えがあった。


大雨が降っていた。マンションの崖の下にあの日、学生証を返してくれた真広が倒れていた。悪友たちはみんな、知らない、自分たちには関係のないことだといい、大雨が降っていたからタクシーを拾いあげ帰った。自分だけ乗らないのはとても不自然だから、一応、解散するまでタクシーに乗っていた。涼太の頭の中では倒れているあの人のことが頭をかすめていた。

(助かるかもしれない。助かるかもしれない)気が気ではなかった。なぜ、あの人のことがこんなにも気になるのだろうか?そしてこいつらは倒れている人をこうも気にかかっていないのはどうしてだろう?涼太は腕時計を何度もみつめていた。

(まだ、助かるかもしれない)タクシーの外は雨脚がどんどん強くなっていく。


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p.s

やっと少し進みましたー✨少し停滞していたので少しスランプを脱出しました。あともう少し頑張りますー✨こないだ遠征先の夕暮れ。最初は暗く曇っていて涼んでいたら夕日が遠くからパァーと明るくなりました。帰る頃にはまたあたりは暗くなりました、、とさ。疲れた足をひきずりトボトボ駅まで帰った日。