139-隠す、見せるの気配り 2(終) | ikoma-gun(フリムン徳さん)のブログ

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「この辺の土地は鉄分が多く、隣近所の水は色がビールの

色のように黄色い。でも私の井戸水は無色透明で、無臭。

隣の人は、私の井戸の水を盗みたいと言います」と、

売りに出している家を買いに来たお客さんに、家より一段下に

ある牧場の井戸から庭に引っ張っているホースから勢いよく

出る水を空に向けて虹を作ってみせる。勢いよく蛇口から出る水を

透明のワイン用のグラスに入れて水の味見をさせる。

この時に流しの横の 使い古しの汚らしい色の割り箸が目

の横に見えたら、台無しである。

汚らしい割り箸を隠してくれた嫁はんの姿を頭に浮かべ直し、

もう1度嫁はんの気配りを振り返える時でもある。


 でも、私の気配りは違っている。

ダイニングルームに置いてあるテーブルである。

狭いダイニングルームにしては大きめである。

細長く両方に3つずつ椅子が6つ並べてある。

このテーブルには忘れられない思い出がある。

私たちがパラグアイからアメリカへ来て、まだ年月が

そう経ってない時であった。

まだ人生に夢がいっぱいある頃だった。

 その当時、家具屋さんへ行って、見分不相応な家具を

買ったと思った記憶が今でも思い出せる。

ダイニングテーブルのトップは6つガラスの四角に分けられ、

その下は籐の編み張り、椅子の背も同じ籐の編み張りで、

枠や足の木は少し濃い茶色のワニスの仕上げであった。

そばに並べてある白木のセットなんか安っぽく見えた。

私達ほどの収入の家族には豪華すぎると思えた。

展示も一番目立つ場所に、この店では一番豪華な立派な

ダイニングセットだと強調するように展示されていた。


 嫁はんの強い思いもあって、無理した気持で、それを買った。

もう34、5年も経っている。その立派で豪華なテーブルに

嫁はんは、いつもテーブルクロスをかけている。

埃を防ぐためである。そんなに家の中は埃はしないと

思っているが、家の中の掃除担当をしている嫁はんは

気になるらしいからである。私はあまりいい気はしない。

立派なテーブルトップが隠されるからである。


 家を見にお客さんが来る日は、私は嫁はんに

「ダイニングテーブルの布カバーをはずして置けよ」と、

必ず言うことを忘れない。これが私、フリムン徳さんの

立派な気配りと私は思うことにしている。


 嫁はんと私のこんな小さな”見せる、隠すの気配り”に

気づくお客さんが私達の家を買うお客さんかもしれない。





続く