抗酸化物質のがん予防効果の現状
過去20年にわたる51件の研究を対象としたレビューの結果、緑茶の癌(がん)予防効果については、未だ明確な答えが出ていないことが示され、医学誌「The Cochrane Database of Systematic Reviews(コクランシステマティックレビュー・データベース)」7月8日付オンライン版に掲載された。
今回のレビューでは、肝癌、乳癌および前立腺癌については緑茶による予防効果がある程度認められたものの、膀胱癌リスクは逆に増大する可能性が示された。食道癌、大腸(結腸直腸)癌、膵癌など消化管の癌では一致する結果が得られず、著者らは肺癌、膵癌、大腸癌の予防効果については限定された証拠しか認められなかったと記している。「これほど多数の研究について検討しても、緑茶の癌予防効果については明確にできない」と、筆頭著者であるドイツの癌研究グループ(Oncology Study Group)の一員、Katja Boehm氏は述べている。
今回の研究では、緑茶を日常的に飲んでいるアジア人計160万人を対象とする研究をレビューした。Boehm氏によると、緑茶の摂取量やさまざまな癌の成長(増殖)の仕方が一定でないために、緑茶の癌予防について決定的な関連性を見出すのは困難であるという。「1つ確かなことは、緑茶の摂取だけでは癌予防にならないということである」と同氏は述べている。
緑茶には強力な抗酸化物質であるカテキンをはじめ、ポリフェノールが豊富に含まれている。ポリフェノールは同じ植物(チャ)を原料とする紅茶やウーロン茶にも含まれるが、緑茶のポリフェノールには特有の癌予防効果があると主張する研究者もいる。米Moffitt癌センター(フロリダ州)のNagi Kumar氏は「緑茶に含まれる物質には確かに有望性がある。この分野の研究は現在、緑茶成分に似た薬剤を用いて有効性と安全性を試験し、癌予防効果の有無を検討する段階まで進んでいる。時間が経てば答えが出るはずだ」と述べている。
Boehm氏とGumar氏はともに、この件についてはさらに徹底的な研究が必要であると述べるとともに、仮に利益がなくても適量の緑茶を飲むことは安全であるとの見解を示している。Boehm氏によると、1日の摂取量は1,200ml(カップ5杯強)を超えないほうがよいとのこと。
コメント:
この研究のように、ある基準以上の質の高い研究論文を総合(統合)解析して、
新たな知見を得る研究をメタアナリシスといいます。この「コクラン」の結果が、
臨床現場に及ぼす影響は、高いです。信頼性が高いから。
だから、一般の方も、上記の結果は、大いに参考にされても結構です。
ただし、日本人にも当てはまるのか?・・・
そもそも、こういう臨床研究の数が、日本では少ないので、そのあたりは割りびく必要がありますけれどね。
コネと金
先ほど、大学の生協書籍部で、「実験医学」という雑誌を立ち読みしていた。
ついでに、漫画も読みましたが(*^▽^*)。
上記の本に「(政府からの)科学研究費の獲得の仕方」という連載がある。
興味深い内容で、結構、informativeだ。
しかし、気になる記述があった。
執筆者の先生(もちろん大学)によれば・・・「科学研究費獲得には、コネが必要だという噂があるが、そんなことは「絶対」にない。厳正に審査される」とのこと。
「本当なら」・・・アッパレである。
(まあ、本来、当たり前のことなんだが・・・)・
しかし、そう書いておきながら、次のようなくだりがあった。
「学会などで、顔見知りの人なら、5段階で3か4か迷うときに、4にしちゃうので、人脈形成が必要」。
「ケッ!」ヽ(`Д´)ノ・・・と思うのは私だけでしょうか?
まさに、こういうことこそ、一般世間では「コネ」と言うのですよ、執筆者の先生。
まあ、教官人事も「コネ」が大事だし。
こういう、コネ・コネ社会ですからね、この国は。
コネ・コネ審査のおかげで、社交的(この場合、権力者に媚を売るやつら)な方にしか「金」が「こねー」(・ε・)
妊娠女性の41%が流産経験 「不育症」は8万人
名古屋市立大の杉浦真弓教授(産婦人科)と鈴木貞夫講師(公衆衛生学)らが、一般の女性を対象にしたアンケートを基に計算した。産婦人科を受診した人などに偏らず、不育症の発生に関して行われた調査は初。
杉浦教授は「流産は一般に思われているより頻繁に起きている。不育症の患者のうち多くは出産できる可能性があるので、積極的に検査や治療を受けてほしい」と話している。
教授らは、2007年2月からの1年間に、愛知県岡崎市で健康診断を受けた35~79歳の女性のうち503人から回答を得た。妊娠経験がある458人中、流産したことがあったのは190人(41・5%)。2回以上で「不育症」とみられるのは28人(6・1%)、3回以上の「習慣流産」は7人(1・5%)いた。
国内の年間出生数は約110万人で、一般的な流産率は15%とされ、研究班は年間妊娠数を約129万人と推定、不育症患者は約7万9千人と算出した。
杉浦教授によると、流産の大半は、自然現象として一定の割合で起きる胎児の染色体異常が原因。通常、流産時に胎児の検査までしないため「原因不明」とされることが多いが、次回以降の妊娠で出産できる可能性がある。抗リン脂質抗体症候群という、胎盤に血栓をつくる自己抗体の異常が原因なら、薬でコントロールできるという。
杉浦教授は「流産を繰り返すと精神的にも疲れ、あきらめてしまう人も多いが、原因が分かれば次の妊娠に臨む気持ちが持てる」と指摘。ただ、一部の検査や薬は保険の対象外で自己負担になるといった問題がある。(共同通信)
コメント:
流産経験率が、これほど高いのか・・・愛知県岡崎市では。
たぶん、地域差が相当あると思う。
東京都や大阪、あるいは東北、九州などではそれぞれどうだろう?
このような研究の全国調査データを見たい。
政権公約の中の「増税」
いっつも思うのだが。
民主も自民も、次のように言えばいいのに。
「2011年の4月から消費税を10%にします。
そのかわり、それ以降は、一切、増税はいたしません。
そして、即、できるところから、眼に見える形で、可能な限りの無駄を削減し、国民に還元します。まずは、この時期までに、これとこれを・・・。」
・・・と言えばいいのに。(まあ、あげた分の2%は、医療・社会福祉に使ってほしいが。この分野では、あとは「タバコ税」の増税で補填)
こうすれば、消費行動に弾みがつく。
それに、この2年間で、個人も企業も、それなりに「生き方」を考えられる。
それができにくい人々のために「福祉」はある。
増税議論を、避けることこそ、結局は「何もやらない・やれない」ことの証明!
なお、私は、今回の「勢い」と「雰囲気」による選挙よりは、むしろ「来年の衆参同時選挙」が大事だと思うよ。
緑黄色野菜の大腸がん抑制解明
埼玉県立がんセンター・臨床腫瘍研究所(川尻要専門員)らのグループは31日までに、緑黄色野菜に多く含まれるインドール化合物が大腸がんの発生を抑制する仕組みを解明、米科学アカデミー紀要電子版に発表した。
グループによると、緑黄色野菜が大腸がんの予防に効果があることは以前から知られていたが、どのような仕組みで効果が生じるのかは分かっていなかった。今回の研究で、インドールがAhRというタンパク質を活性化させ、がんを引き起こす物質β―カテニンを分解するメカニズムが初めて明らかになった。大腸がんの予防法の開発への応用が期待される。
インドール化合物は、ブロッコリーやキャベツ、カリフラワーなどアブラナ科の野菜に多く含まれる。
グループによると、大腸がんは、細胞増殖を進めるβ―カテニンとそれを分解するタンパク質APCとの割合が遺伝子変異で崩れ、β―カテニンが過剰に蓄積することで発症するとされていた。
コメント:
今日は、花火大会が都内各所で多いね。
まあ、花火を見ているよりも、電車内などで浴衣姿の若い女性を見ていたほうが、気分が和む(*^▽^*)
ところで、上記の記事。
喫煙者なら、逆にリスク増加するよ。
論文には、書かれていない事実。
レーシック訴訟;眼科医を集団提訴 「近視矯正手術で感染症」
東京都中央区の銀座眼科(閉鎖)で近視を矯正するレーシック手術を受けた元患者50人が30日、
「ずさんな手術で角膜炎などの感染症になった」として、
院長だった溝口朝雄医師らに治療費や慰謝料など計約1億3000万円の損害賠償を求め、
東京地裁に提訴した。
患者のうち12人は同日、警視庁築地署に溝口医師を傷害容疑で告訴。
弁護団も厚生労働省に、問題の調査と溝口医師の医師免許取り消しを求める要望書を提出した。
提訴したのは、昨年9月から今年1月にかけて、同眼科で手術を受けた18~58歳の男女。
手術を受けた後に角膜炎などを発症し、多くが今も視力低下や乱視などの症状に苦しんでいるという。(日経)
コメント:
前にも書いた(3月13日)が、レーシックでは「減菌」はできても「滅菌」はできません。でも、適切な器具消毒をしてさえすれば、こんな問題になるようなことは、まず、起こらないのですがね・・・。まじめに診療してればねえ。
どこで、「屈折」したんだか・・・。
「眼の屈折矯正」するのは眼科医の仕事ですが、屈折した「根性の矯正」は、法の下で「強制」的に行わねばならないようです\(*`∧´)/
日焼け用ベッド、がんの恐れ 国際研究機関が発表
【パリ共同】の記事から。
世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC、本部フランス・リヨン)は29日、人工的に肌を日焼けさせる「日焼け用ベッド」の発がんリスクを5段階の危険度で上から2番目の「高い可能性がある」から「人間に対する発がん性がある」との最高レベルに引き上げると発表した。
IARCの発がんリスク分類で最高レベルにランクされるのは、ほかにアスベスト(石綿)やカドミウム、喫煙など100種類超。「日焼け用ベッド」はファッションとして広く利用されており、安全性をめぐる論議を呼びそうだ。 20以上の疫学研究機関の分析によると、人工的に紫外線を放射する「日焼け用ベッド」の使用を30歳になる前に始めた場合、皮膚がんなどを引き起こす黒色腫が形成されるリスクが75%高まることが分かった。 目の黒色腫形成とも強い関連性があることが分かったという。 英国の皮膚科医ニナ・ゴード氏は、フランス公共ラジオに対し「青少年の使用を制限するなど、日焼け用ベッドの規制に前向きに取り組むときがきた」と述べた。 コメント
「これで出来た癌だったら、おまえの持ってる薬と技術で「初期化」できるだろう?」って言われたよ(*^▽^*)
そんな「面倒くさい」ことをするより、使用制限しろや!って返答しといたけどな。 |
民主党の政権公約(マニフェスト)からみる医学・科学技術重点研究分野は?
ご存知のように、民主党は政権公約(マニフェスト)を発表した。
彼らが述べる今後4年間の「約束」とは・・・。
マニフェストに書かれたことと、書かれていないことを分析・把握することは非常に意味がある。
民主党マニフェストにおいては、政策は、「1.ムダづかい」「2.子育て・教育」「3.年金・医療」「4.地域主権」「5.雇用・経済」「6.消費者・人権」「7.外交」の7項目に整理されている。
そこで、科学技術にかかわってきそうな項目を抜き出していった時、
最大の特徴は、環境とエネルギー関連に多くの項目が割かれていることに気づく。
これは、上記の「5. 雇用・経済」の部分で集中的に項目が挙げられている。
あとは、「4の地域主権」で、「食の安全・安心を確保する」がある。
食品の安全と安心にかかわる研究が脚光を浴びることになるだろう。
現在の日本政府の総合科学技術会議は重点4分野として、
「ライフサイエンス」「情報通信」「環境」「ナノテクノロジー・材料」を掲げてきた。
ところが、民主党のマニフェストは、ほとんど環境で多くのスペースが割かれている。一方、ライフサイエンス、情報通信、ナノテクノロジー・材料については、なんと、ほとんど触れられていない。
オイオイ、特に後者の3分野を放置すれば、この国は、終わるぞ!
今、なんとか、この国を支えている産業を放置するらしい。
(なお、ライフサイエンスは、まあ「口だけ」の博打的要素が多いから、4分野の中では、日本経済を支えるといった意味では、一番弱い。)
一方、単なる「生命科学者」にとっては、大ピンチだな。
こりゃ、分野を変更しなければならないほどのインパクトだ。
唯一の例外は、iPS細胞研究のみだろう・・・。
そして、私の専門分野に大きく関わる「3. 年金・医療」を見てみよう。
「医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供する」、
「新型インフルエンザの万全の対応」、「がん・肝炎対策の拡充」などが重点的に記載されている。
・・・ということは・・・
これらの研究開発に携わる研究者などは恩恵を受けることになるだろう。
総じて・・・私にとっては「研究分野的」には「大変ありがとうございます」なのだが、手放しでは喜べない。(「財源問題」は、ひとまず、おいといて・・・)
新型インフル10億人超も 重症者や死者数減が課題
WHOは6月時点で既に新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)を宣言。
当面は感染拡大が続くのは確実なため、
今後は「重症者や死者の発生を減らせるかどうかが最も重要だ」との認識を表明した。
多くの国で新学期を迎える9月以降に流行が一段と加速する懸念に関連し
「学校閉鎖などが適切な場合もある」と指摘。
閉鎖により一時的に感染者の伸びを抑えることで地域の医療機関の負担を軽減できるなど
一定の条件がそろえば「賢明な策になり得る」とした。
WHOのインフルエンザ対策の最高責任者を務めるフクダ氏が、
新型インフルエンザ発生後に日本の報道機関の単独会見に応じたのは初めて。
感染拡大の予想についてフクダ氏は
「20世紀に起こったパンデミックでは人口の3分の1かそれ以上が1年で感染した」と指摘した。
また、米疾病対策センター(CDC)が、2年で同国の人口の最大40%が感染すると推計した
と報道されていることに関連し、
「国や地域によって最終的な姿にはばらつきがあるだろうが、20%であれ40%であれ、高い比率であることに違いはない。パンデミック状態の場合には、多数の人の感染が予想される」と述べた。
コメント:
日本では、政権交代後ほどなくして、「新政権」は、この問題に関する対応が問われることになるだろう。まあ「第2波」が予想通りのややこしさを持てばだけれど。
シュワルツェネッガー知事とiPS細胞研究
シュワルツェネッガー知事、予算に署名 米加州
【シリコンバレー=田中暁人】日経
米カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事は28日、
大幅な財政赤字の削減策を盛り込んだ州予算案に署名、
7月に新年度入りしていた2009~10年予算が正式に成立した。
大幅な歳入不足に伴う総額240億ドル(約2兆2700億円)以上の財政赤字の削減にメドが立たず、
「借用書」の発行にまで追い込まれた同州の財政危機はひとまず回避された。
同日成立した州予算では、教育や福祉などの予算を大幅にカットして歳出を総額で160億ドル以上削減。
シュワルツェネッガー知事は一部法案に対する拒否権を行使して約5億ドルの追加削減も決めた。
同知事は同日「(大幅削減が盛り込まれた)州予算は多くの州民に影響を与える。
今後も歳入が減少しない保証はない」と表明、厳しい状況が続くとの見通しを示した。
シュワルツェネッガー知事は、財政危機を受けて1日に非常事態宣言を発令。
州政府は財政が正常化するまでの現金流出を防ぐため、住民への税金還付などに、
将来の支払いを約束する借用書を発行する事態に追い込まれていた。
コメント:
シュワちゃん大変だね・・・。
彼は、いち早く、「iPS細胞研究」に10年で3000億円の投資を表明・順次実行していたわけだが、ペイできたのか?(笑)
まだまだ、儲けにはつながらんから、それは無理。そういうことで、上記の情況から、州からのiPS細胞研究費は大幅削減だな。
金融危機以来、バイオ全体から見て、大金持ちからの投資も冷え込んでるし・・・。
カリフォルニアのiPS細胞研究者は、いろいろ大変だな。
このままじゃ、ハーバード大学やMITに、研究者がシフトして、
更なる格差が生じるぞ。
まっ、日本は、もっと少ない予算で、どうにかしようとしているから、下を見れば、少しは、気持ちが楽になるかな?・・・シュワちゃん。