初めての方プロローグからどうぞ

「ジリリリン!ジリリリン!ジリリリン!」

「うるせーなぁ…」

「ジリリリン!ジリリリン!ジリリリン!」

「電話!」
返事が無い。
どうやら皆留守のようだ。
いつのまに眠ったのかも、
今何時なのかも分からなかった。
起きたら身体がきしむように痛かった。
痛みが昨日の事を思い出させ、
鳴り止まない電話が
さらに俺を苛立たせた。
身体を引きずるように
電話口まで辿り着いた。

無言で電話に出た。

「…」

「井口さん?
お宅のお子さんどうなってるんですか!?
※◆△?↑★↓^;#!……」

ワン公の母ちゃんだった。
まくし立てられるように
次から次へと言われたので
受話器から耳を離した。

最近よくワン公の母ちゃんから電話がある。
俺とワン公を
付き合せたくないようだった。

しばらくして受話器から
「達也!達也!」と
小さく聞こえたので
また受話器を耳に戻した。

「わりぃ達也!今日いけそうか?」

「俺は大丈夫だけど、
ワン公の母ちゃん
ひでー事になってんじゃん(笑)」

「大丈夫だよ。
じゃあ今から行くからよ!」

受話器を下ろし、
テーブルに置かれてあったおにぎりをかじった。

横に書置きがあった。

『今日は何処にも行かないで勉強しなさい!母』

何故だか母ちゃんの言葉は心に響かなかった。

それよりも
殴られて歯が抜けた所に痛みを感じた。
口の中が切れたり、
歯が抜けたら
塩水でうがいするように
空手の先生に言われた事を思い出し、
書置きの紙で口をふき、
塩水で口をゆすいだ。


しばらくして
ドアをノックする音が聞こえた。
ドアを開けると
ワン公が妙に嬉しそうに立っていた。

「なんでそんなに嬉しそうなんだよ(笑)」

「俺あの人達好きだよ」

「…まぁいいや。じゃあ行くか」

「ヒョーーー!」

俺達はまた今日もゲーセンに出かけた。