水の中 | 10月の蝉

10月の蝉

取り残されても、どこにも届かなくても、最後まで蝉らしく鳴き続けよう

去年の夏、何年振りかでプールに入った。(子供が小さいので付き添いしなくてはならず、えいっと覚悟を決めて水着を着たのだ)


私はあんまり泳ぎが得意ではない。小学生の時はたぶん25mくらいは泳げたと思うのだが、中学で全くプールに入らなくなったので、それっきり「泳ぐ」という選択肢をなくしてしまった。今でもあんまり泳ぎたいとは思わないし、水が怖いと思うことも多いのだが・・・。


いざ実際に水に入ってみたら、意外と気持ちよかった。でも顔をつけるのは躊躇した。水中ウォーキングみたいなことやってごまかしてた。

子供はイルカのように水中でくるくる回っている。すごく楽しそうだったので、ふと、「泳いでみるかな」と思った。


腕をのばして、ざっと水に乗った瞬間、音が消えた。

天井に反響する人々の声が消えて、ごぽごぽという水音だけになった。

遠くの方から、ゆがんだノイズのような音が漂ってくるだけ。

腕が水を掻くと、空気の粒がはじける。

耳元で、キュポポ、カポポ、と音がする。

水中の景色を見るのは、なんて久しぶりなんだろう。水の中から水面を見上げると、いつもいる世界が別世界に思えた。




スイミングスクールで、泳ぎを練習している子供たち。7,8才の小さな体でクロールや背泳に挑んでいる。ひらひらと小さな足で水を掻いているさまが、まるで金魚のようにみえた。小学校の高学年になってしまえば、体も大きくなり手足も伸びて力強い泳ぎをするようになるのだろう。その少し前の、金魚の時代。



現実的な話をすると。

私は息継ぎがうまくできない。水中で息をちゃんと吐いていないせいだと思う。

誰にも教わらないで見よう見まねで泳いでいたので、いまだにできないのだ。

それから、耳に水が入ることが、何よりも恐ろしい。子供のころ中耳炎に何度もかかって痛い思いをしているせいか、ちょっとでも耳に水が入るとパニックを起こす。

産毛が生えてるからそう簡単には入らないようになってるらしいんだけども。だから仰向けで水に浮くということが絶対出来ない。あれ、耳が水没してるでしょう。


なんやかんや言い訳してますが、要するに水が怖いんですわ。

かに座なんで、水辺はいいけど、水中はだめなんだ、ということにしてある。

(水中に住む蟹もいるぞ、というツッコミはなし)


今年はプールに入るのかなあ。たぶん入らないと思う。だってプールの前に水着に体が入らないもんガーン