2007-2008の世界食料価格危機Ⅱ世界人口の増加少・ア…
米国におけるバイオ燃料への補助金
国連食糧農業機関とECMBは世界の陸地の農地利用は1980年代以降減少し、米国、EU以外の補助金も2004年以降減少し、米国が農作物をバイオ燃料へ転用し始めてから供給が脆弱になったと報告した。 [44] 米国農務省によると世界の小麦の輸入量と在庫量は減少し、米国国内における消費も停滞、世界の小麦生産もまた2006年から2008年にかけて減少した。[45]
米国では政府のエタノール製造者に対する補助金の給付が農家のバイオ燃料生産を促した。それまで食料として利用されていたトウモロコシはエタノールを生産するために利用されるようになり、米国はトウモロコシエタノールの最大生産国となった。その結果、2006年から2007年にかけて米国のトウモロコシの23%はエタノールへ転用され(2005年から2006年と比べて6%の上昇)、農務省は2007年から2008年にかけて米国で8100万トンのトウモロコシがエタノール製造に利用されると予想しており、その割合は37%に上昇するとみられている。[46] これは食料の転用だけでなく、農地の転用をも意味している。
それにもかかわらず、エタノール製造を支持する人々はトウモロコシのエタノール製造への利用は世界で起きている食料を求めた暴動とはなんら関係ないと主張しており、それらの原因はコメと原油価格の上昇であり、バイオ燃料は何ら関係ないとしている。
しかし、世界銀行の報告によれば、バイオ燃料は食料価格を75%引き上げたとされている。5年間の月ごとの分析は世界の穀物消費量の上昇と旱魃も価格上昇の原因であるがこれはわずかな影響しか与えていないと報告し、EUと米国が利用しているバイオ燃料が食料の供給と価格上昇の最大の原因であると主張している。まだ4月が終わったにだけに過ぎないが、エコノミストはブッシュ大統領が不満をかわすために報告書がまだ提出されていないのだと信じている。また、サトウキビから作られたバイオ燃料は穀物と植物油から作られたバイオ燃料ほど劇的な影響を与えていないという研究結果も報告された。[47]
休耕地
2008年4月9日のニューヨーク・タイムズによると、米国政府は保護計画の下、休耕地を保有する農家に対し補助金を給付することが明らかになった。この政策は2007年の時点で休耕地だった3680万エーカー(14万8900km²)に及び、これは米国の耕地面積の8%であり、ニューヨーク州よりも広い。[48]
農家への補助金
世界的な食料危機は先進国による歪んだ農業補助金制度の廃止の声を呼び覚ました。[49]OECDの推定によると、OECD加盟国による農家への補助金は1年当たり2800億米ドルに上り、2004年の公的な開発支援は800億米ドルであり、農家への支援は食料価格の形成に歪んだ影響を与えている。[50]. ブッシュ政権下の2002年に導入された米国の農家への補助金制度は80%増額され、米国の納税者に1900億ドルもの負担を強いている。[51]. 2003年、EUは共通農業政策を2013年まで延長することを合意した。 国際連合開発計画の元総裁であるマロック・ブラウンは共通農業政策のような農家への補助金制度を見直すよう呼びかけている。
歪んだコメの世界市場
日本は世界貿易機関の規定により毎年76万7000トンものコメを米国、タイなどの国から輸入することを義務付けられている(ミニマム・アクセスも参照)。これは2005年の日本におけるコメの国内生産量が1100万トン、2003年から2004年の消費量が870万トンであり、国内需要を100%満たしている事実があるにもかかわらずである。[53] 日本がこのコメを同意なく他の国へ再輸出することは許されていない。このコメは普通在庫へ回され、動物の飼料として利用される。圧力の下、米国と日本はこのような規制を撤廃すべく交渉を行っている。1500万トンもの高品質の米国産のコメがまもなく市場へ入る予定である。[54]
自然災害による収穫不足
いくつかの地域では気候変動により穀物の収穫に異常を来たしている。その中でおそらく最も大きな影響を与えているのはオーストラリア、その中でも特に巨大な小麦とコメの穀倉地帯である肥沃なマレー川とダーリング川の流域で続いている旱魃である。旱魃が起きる前と比べてコメの年間生産量は98%も減少してしまった。[55]オーストラリアは米国に続く世界第2位の小麦輸出国であり、豊作の時には2500万トンもの小麦を生産しており、主要な輸出品目であった。しかし、2006年の収穫は980万トンに過ぎなかった。[56]2006年にカリフォルニア州のサンホアキン・バレーで起こり、数多くの家畜が死んだ熱波や、2008年のインドのケーララ州で起こり、穀物に損害を与えた集中豪雨も食料の価格に影響を与えている。科学者はこれらの災害のいくつかは予想されていた気候変動の影響と矛盾するものではないと述べている。
2008年5月にミャンマーを襲ったサイクロン・ナルギスの影響によりコメの価格が上昇した。ミャンマーはコメの輸出国であったが、 減産のため政府による価格調整が行われ、農家への奨励金は減額された。高潮のためエーヤワディ・デルタは30マイル(48km)にわたって水田が浸水し、塩害が懸念されている。FAOは2008年ミャンマーは60万トンのコメを輸出すると予想していたが、サイクロンの影響でミャンマー史上初めてコメを輸入せざるを得ないのではないかと危惧されており、それにより世界のコメ価格がさらに上昇するものとみられている。
土壌と生産性の喪失