精神病質(サイコパC-)Ⅱ【前盤】診断
原因
自らがサイコパスと同じ脳構造を持っているという脳科学者のジェームズ・ファロンは「三脚スツール」という3つの要因によってサイコパスが成り立つとしている。その3つとは「前頭前野から扁桃体へつながる機能の低下」「MAO-A遺伝子などいくつかの遺伝要因」「幼少期の身体的、精神的虐待」で、それらがそろってサイコパスになると説明している[11]。ファロン自身が患っている疾患は双極性障害、強迫性障害、パニック発作。遠い親族に殺人者、殺人嫌疑者、兄弟にADHDがおり、本人の行為障害的行動についても語っている[12]ジェームズ・ブレアは扁桃体の機能不全こそがサイコパスの主な原因とするが、その原因については不明としている。まれに頭部外傷や熱性けいれんなどによって扁桃体周辺の機能が消失する海馬硬化症が起こることがあり、その患者は多くてんかん発作を発症する。ロバート・レスラーの調査によると重要殺人者の2割にてんかん発作がある[13]。
管理
英国国立医療技術評価機構(NICE)は精神病質の診断基準を満たす人口に対しては、認知行動介入を検討するとしている[14]。また併発疾患を治療することで、精神病質によるリスクを減少させることができる[14]。
また、これに携わるスタッフは有害事象リスクが高いため、スタッフには高レベルの支援と厳重な監督が提供されなければならないとしている[14]。
疫学
その大部分は殺人を犯す凶悪犯ではなく、身近にひそむ異常人格者である。北米には少なくとも200万人、ニューヨークだけでも10万人のサイコパスがいると、ヘアは統計的に見積っている[要出典]。J・ブレアはアメリカでは反社会性人格障害のうち4分の1がサイコパスであるとしておりその率は全体の0.25%である。[15]
先天的な原因があるとされ、ほとんどが男性であるとされるが[16]、B・ブレアによれば反社会性の面では男性優位であるが、情動面では男女に差はないという。脳の働きを計測すると、共感性を司る部分の働きが弱い場合が多いという[16]。
ケヴィン・ダットンの調査による、サイコパスの多い職業の上位10位は次のとおり[1]。
マーサ・スタウトによれば、アメリカでは25人に1人(約4%)とされる。ただし、東アジアの国々では反社会性人格障害者の割合は極めて低くおよそ0.1%前後としている[17]。
また、ヘアは、次のような職業の者に多いと推測している[18]。
また、他にも次のような者にも多いとしている[18]。
- 連続殺人犯[18]
- レイプ犯[18]
- 泥棒[18]
- 詐欺師[18]
- 暴力亭主[18]
- ホワイトカラー犯罪者[18]
- 株の悪徳ブローカー[18]
- 幼児虐待者[18]
- 非行少年グループ[18]
- 資格を剥奪された弁護士や医師[18]
- 麻薬王[18]
- プロギャンブラー[18]
- 犯罪組織構成員(マフィアのメンバーや暴力団員などのこと)[18]
- テロリスト[18]
- カルト教祖[18]
- 金のためならなんでもやる人たち[18]
彼らの特性が原因で、サイコパスは、組織内の位置としては組織下層部よりも上層部に多いと考えられており、とりわけ企業に存在するサイコパスはコーポレート・サイコパス (corporate psycopath) と呼ばれ、長年安定して営まれてきた企業をときに破滅へと導く原因になり得ると考えられはじめている[19]。
専門家によってサイコパスと考えられている実例として、人民寺院指導者 ジム・ジョーンズ[* 4]が挙げられる。
ソシオパス(ないし反社会性パーソナリティ障害)かもしれないが専門家によってサイコパスとは考えられていない実例として、テッド・バンディ[* 5]が挙げられる。
サイコパスの影響力
女性の心理学者が診断していた男性のサイコパスに恋して彼の逃亡を幇助したという話が知られている(『診断名サイコパス』, p.213-214)。
ロバート・ヘアは「世の中の全ての本を読んでも、サイコパスの破壊的影響力から守られるということはない。専門家も含めて、誰もが騙され、操られ、ペテンにかけられ、当惑の果てに取り残される。優秀なサイコパスは、どんな相手の心の琴線でも協奏曲を奏でることができる。」と述べている(『Without Conscience』, Ch.13 A Survival Guide, p.207)。
サイコパスと結婚した経験があり、『Just Like His Father? (父親と同じ?)』の著者でもあるリアン・リーダム精神科医は、「サイコパスと一緒に住むと、サイコパスと同じ視点で世の中を見るほどに変わりうるものなのでしょうか?」という問いに対して、「答えは確実にイエスです。それは、あなたが如何にサイコパスを知っていようとも、サイコパスと一緒に生活をする、しないに関わらず、サイコパスといかなる関係をもつときにも起こることです。」と述べている[20]。
なぜサイコパスは魅力を有するのかという疑問のひとつの答えとして、南カリフォルニア大学における神経学的研究結果が挙げられる[21]。 それによると、犯罪的な嘘つきは、通常の人と違い、脱抑制状態になることなく嘘をつけるよう、脳が進化しているという。
フィクション
犯罪(少年犯罪)を題材にしたフィクションの作品においてもサイコパス(またはソシオパス、反社会性パーソナリティ障害)の要素があるキャラクターが登場している。大抵はモラルが欠落した者(反社会性を持つ者)・犯罪者・サイコキラーとして登場している。
小説
『アメリカン・サイコ』(2000年映画) - 上記小説を原作とした メアリー・ハロン監督の映画作品。
『サイコ (小説)』(ロバート・ブロック著、創元推理文庫)
『サイコ (1960年の映画)』(1960年) - 上記小説を原作とした アルフレッド・ヒッチコック監督の映画作品。
ハンニバル・シリーズ『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『ハンニバル・ライジング』(トマス・ハリス著、新潮文庫)- 精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクターをメインとしたシリーズ。それぞれ映画化やドラマ化されている。
『刑事グラハム/凍りついた欲望』『羊たちの沈黙 (映画) 』『ハンニバル (映画) 』『レッド・ドラゴン (映画) 』『ハンニバル・ライジング (映画) 』『ハンニバル (ドラマ)』 - 上記シリーズを原作とした映画・ドラマ作品。
『黒い家』 -(貴志祐介著、角川書店)- 夫婦が、保険金請求のため殺人を犯す。
『黒い家』(1999年) - 上記小説を原作とした日本の映画。
『悪の教典』 - (貴志祐介著、文藝春秋) - 主人公の蓮実聖司が、自身の凶行を隠滅するために学校内で生徒や教師を惨殺する。
『悪の教典』(2012年) - 上記小説を原作とした日本の映画。
『名もなき毒』(宮部みゆき著、幻冬舎 - 女子社員が会社を辞められた腹いせに、主人公や社員に対するストーカーや嫌がらせを行う。
上記小説を原作とした日本のテレビドラマ。
『マオ 誰も知らなかった毛沢東』 ( ユン・チアン著、講談社)