岩手・宮城内陸地震2008【前震】6月14日 土曜日 8時… Ⅰ
前震
前日6月13日14時頃、42分前の6月14日8時01分頃 M0.6 と 32分前の8時11分頃 M1.6の前震と見られる地震が観測されている。また、1999年および2000年にはM4~5程度の地震も発生している[14]。
余震
地震発生から11月18日までの間に震度1以上の余震が626回発生している[1]。うち、震度5弱以上の余震は本震の約40分後に発生した最大余震の1回のみだった。
- 最大余震
メカニズム
この地震を発生させた断層は、地震発生当時には存在が確認されていなかったが、詳細な調査を行った結果、余震域東縁で断続的な約20kmの地震地表断層の出現を確認した[15]。多くの地表断層は西側上がりの上下変位と東西短縮の変位で、最大変位量は50cm程度であった。人工衛星による合成開口レーダー(SAR) 画像の解析によると、岩手県奥州市胆沢区付近から、宮城県栗原市西北部の花山周辺に至る北北東-南南東方向の長さ約30km、幅約10kmの帯状の地域に断続的に地殻変動の集中を示す状態が見いだされた[16][17]。断層の全ての区間が一回で一様に活動した地震では無く、最初は深いところで滑り数日かけて表層部が余効的に動いたと解析されている[15]。なお、東京大学地震研究所の島崎邦彦は、この地震は地下の震源断層の情報が地表の明瞭な活断層地形として現れておらず、新たな評価方法が必要であると論じている[18]。
- 荒砥沢(あらとざわ)ダム付近に出現した地表地震断層で行われたトレンチ調査では、後期中新世のカルデラ成形時の古い正断層が再動し地表断層を形成していた[19][20]。
- 北北東-南南西方向に長く伸びる長さ約20km・幅約12kmの逆断層で、断層面は西に行くほど深くなり西側の地盤が東側の地盤に乗り上げる構造。走向(南が0°で時計回りに数える)198°、傾斜角(水平面と断層面の間の角度)31°(衝上断層)。断層の最も浅い部分は深さ約0.4km、すべり量は最大約3.5m。(国土地理院[21])
- 北-南方向に長く伸びる長さ約27km・幅約11kmの逆断層で、断層面は西に行くほど深くなり西側の地盤が東側の地盤に乗り上げる構造。走向190°、傾斜角27°(衝上断層)。深さ2km、すべり量は最大5.33m。(防災科学技術研究所[22])
- ヘリウムの同位体比(3He/4He)の分析から、マントル起源の流体が地震発生に関与したとする研究がある[23]。
また、現地での調査により、岩手県一関市厳美町で約3kmに渡って南北に長い地面の「ずれ」が発見される[24]など、震源域東縁の南北約20kmにわたり断続的に「ずれ」が確認された[25]。これらは主に西側が隆起する逆断層の性質を示しており、地震によって発生した断層のずれが地表に現れたもの(地表地震断層)だと見られている。また、この地震を発生させた断層と隣接している北上低地西縁断層帯との関係、特に同断層帯南端の出店断層帯との関係については、同じ断層帯に属するという意見と、異なる断層であるという意見とに分かれている。ただ、余震の分布から、断層面が北西に行くほど深くなっており、南西にいくほど断層面が深くなる出店断層とは異なる断層であるとする見方がされた。また、今回の地震の震源域を含めた、奥羽山脈沿いの地域や男鹿半島から牡鹿半島にかけての地域には、男鹿牡鹿構造帯があることが知られている。[26][27]。
この地震の震源域の周辺で起きた同規模の地震には、1896年の陸羽地震(M7.2)、1897年の宮城県沖地震(M7.4)、1936年の宮城県沖地震(M7.4)、1978年の宮城県沖地震(M7.4)、2003年の三陸南地震(M7.1)、2005年の宮城県沖地震(M7.2)などがある。また、1962年、1996年、2003年にはそれぞれM6.0 - M6.5程度の宮城県北部地震が発生している。
最大加速度
地震計や電子基準点などにより観測された、主な地震前後の変位(観測地点の移動)を以下に並べる。
- 一関西(岩手県一関市、震源に最も近く最大加速度4022ガルを観測した地点) - 地震波形から推定される変位153cm(合成値、分解すると東方向に45cm、北方向に44cm、上方向に140cm)、地中観測から推定される変位130cm(同、東方向に28cm、北方向に60cm、上方向に112cm)。観測データの上方向の加速度は下方向の2.5倍で、加速度の絶対値も3866ガルと特異的な値であった[28]。また、地震により観測点が1メートル以上移動していた[29]。
場所 | 方向1 | 方向2 | 方向3 |
---|---|---|---|
栗駒2 | 東 94 | 南 116 | 上 210 |
栗駒 | 西 15 | 北 13 | 下 2 |
皆瀬 | 東 28 | 南 9 | 下 2 |
東成瀬 | 東 21 | 南 13 | 下 1 |
雄勝 | 東 10 | 南 2 | 上 1 |
湯沢 | 東 8 | 南 4 | 上 0 |
水沢1 | 西 8 | 北 5 | 上 3 |
平泉1 | 西 15 | 北 3 | 上 1 |
岩手川崎A | 西 7 | 北 2 | 上 0 |
(岩崎観測点を基準、小数第1位で四捨五入、単位はcm)[30]