TM NETWORKの30thが、先日(3/21、22)のファイナル公演にて幕を閉じました。 ファイナルのオープニングが、わたくしが死ぬほどヘビロテしている「Just Like Paradise」だったのには度肝を抜かれました(しかも新録! ただし、宇都宮さんの生歌はなかったんだけど…くうう)。そこからの葛城哲哉&阿部薫サポートによる「RHYTHM RED BEAT BLACK」、そして「Children of the New Century」という流れには鳥肌立ちっぱなし。ふおお、何このファイナルでの全とっかえ! 「RHYTHM RED BEAT BLACK」のサビで「RED!!」「BLACK!!」と会場一体となって手を振り上げるところで、早くもライブのクライマックスが来たような心持になりました。 その後はだんだんと2月の流れ(CAROL組曲中心)に戻り、若干のブツ切れ感も否めず、最初の盛り上がりをなかなか更新できませんでしたが、「Be Together」では天井からキラキラテープも降ってきて、再び絶頂を迎えました。この流れで「Dive Into Your Body」または「Self Contorol」だったら個人的に神展開でしたが、さすがに体力的に、そんなメドレーはないか…。まあ、ツアーのファイナルだと思えば、12月、1月と同じ流れになるのも別に何もおかしくはないんですけど、TMにはつい過剰な期待をかけてしまうんですよ(苦笑)。
とか云いつつも、レーザーと映像が多用されたステージは、実にTMらしい派手さと華やかさにあふれていて素敵でした。やっぱTMはキラキラしてナンボです☆ 宇都宮さんは、病気もあってまた年を取った印象は否めないけれど、体の線や身のこなしにはやっぱり色気が宿っていてドキっとさせられるし、木根さんは安定のルックスと歌声と存在感、服と髪型もナチュラルにおしゃれで、なんかいい年の取り方だなあと感じました。 そして、いつもライブで涙が出そうになるのは、キーボード&シンセの要塞の中に立つ小室さん。御年56歳になった今でも、眩しく熱い光を浴び、宇宙的な機械群をアグレッシブに操るその姿は、ファンの目には、まごうかたなき“神”として映ります(笑)。年をいくつ取ろうとも、金色の夢を紡ぎ出し続ける蚕のような小室さんを見ていると、小室さんの無限にも見えるエネルギーに遠くからでも触れられると、いつも口を開けば自動的に「ニートになりたい…」という言葉が出てくるわたしも、もう少し頑張ろうかな…と思えてくるのです(ただしライブ時の一瞬)。あんなエネルギー、ほんと、どこから湧いてくるんだろう?? 情熱か、野心か、それとも才能がそうさせるのか…? あまり狂人というイメージはないけれど、常人ではない、とは思う。ファイナルの「Get Wild」前のTKソロは、ちょっと長すぎでは、 とか思っちゃいましたが、こんなパフォーマンスを延々1人舞台でやってのけるところに、小室さんの“常人でなさ”をひしひしと感じて、うれしくなってしまうのでした。 ともあれ、30thは12月、2月、3月と、1回ずつライブに行けまして、TMの3人の姿を拝み、音を体感することができて、ほんとうに幸せでした。さらに云うなら、2012年の武道館以来、3年にわたって楽しませていただきました。武道館のオープニングの「Fool on the Planet」は、今でも思い出すだけで体が震えてきますが、横浜アリーナのファイナルはこの曲で締められ、改めてこの、3年間の物語をしみじみと思い返させるのでした。 思えば、武道館の頃は誰もファン仲間がいなかったけれど、今では、チケットを取ってくれてライブに一緒に行ける友達もできました。これもTMがコンスタントに活動してくれたおかげですね。 デビューの4月21日に、サプライズライブとかあったりして!? なんてファン友達と勝手に盛り上がっていましたが、今のところそれはなさそうで、あとは、『PATi-PATi』『GB』のバックナンバーを収録した11,490円もする豪華本が届くのを待つばかりです。
先月、BSで放送された『名盤ドキュメント』の『CAROL』特集についても言及したいと思います。 同アルバムのマスターテープをメンバーと、作詞家の小室みつ子さん、ミキサーの伊東俊郎さんが解説するという内容で、わたしの家ではBSが観られないので、友達に録画してもらって、1カ月遅れの視聴になりましたが、これが実にいい番組でした。 わたしは何だかんだで『CAROL』がいちばん好きなアルバムなんです。その理由は例えば、コンセプトとメディア展開の面白さ、天才的な感性と職人的な技が同じ高いレベルで拮抗していること、宇都宮さんの声が若さと落ち着きと男っぽさの絶妙なバランスを保っていること、バラードでない木根曲が2曲も入っていてしかも秀逸なこと、エレプロ以来?の小室&木根合作という最強の組み合わせによるバラード(「Still Love Her」ですね)、小室みつ子さんのワーディングの巧みさ、それにも負けていない小室さんの詞……とまあ、いろいろあるのですが、番組を見て改めて、好きな理由が分かった気がしました。 『CAROL』は、いつ聴いても「あれ? こんな音も入ってたんだ!」という発見があります。インストだけ全部聴きたいくらい。それもそのはずで、ボーカルやコーラスも含め機械のように正確なピッチの生音が、32トラックもの数、丁寧に丁寧に重ねられているのですね。木根さんが何度か「(音が)あったかいよねえ」としみじみ呟いていましたが、ほんとうにおっしゃる通りで、緻密だけど温かみあふれる音。まるで秘伝の出汁のような深みであり、重ねれば重ねるほど透明感が増していく極上のファンデーション(って、あるのかしら?)のようです。なんか、当たり前かもしれないけれど、全力でちゃんと作られたものというのは、いつまででも人の心に感動を呼び起こさせられるもんなんだな、それが傑作たる所以なんだなと、たいへん凡庸な感想を抱いた次第です。 アルバムの曲順と、作られた順が同じという話も新鮮でした。オープニング曲「A Day In The Girl's Life」は、いつ聞いても鳥肌とともに高揚感が湧き起こってくる、希望をはらんだ夜明けのような、まさにこれぞオープニング! という音色なんですが、オープニングの和音がひらめいた瞬間がまさにアルバムのスタートであったということ。そして、ラストの「Still Love Her」は、ロンドンレコーディングの終わりに作られた最後の曲と知って、とても腑に落ちるものがありました。アルバムの最後という意味だけでない寂しさを感じさせるのは、そのときの“終わり”の空気がぎゅっと詰め込まれているからなんですね。当時、ロンドンに住んでいた小室さんは、「電気料金を払ってからスタジオに行ってた」なんてエピソードを披露しており(当時住んでいた家の映像付き!)、そのリアルな感じにキュン死しそうになります。また、小室みつ子さんもロンドンに呼ばれ、現地で作詞したという話はよく知られているけれど、みんなで同じ場所と時間を共有して作られた作品だというのがいいですよね。そういうところがまた、何度聴いても飽きない奥行き感を醸成しているのかもしれません。