映画『建築学概論/건축학개론』紹介 | 男の韓国エンタメブログ『MK』(廃刊)

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日本での公開が迫ってきたので
レビューを。

『建築学概論/건축학개론』(118分)
韓国公開2012.3.22、日本公開2013.5.18
監督:イ・ヨンジュ
出演:オム・テウン、ハン・ガイン、イ・ジェフン、ペ・スジ他

日本公式サイト
http://www.kenchikumovie.com/


多くの人が共通して持つであろう初恋(失恋)のほろ苦い思い出。時が過ぎ、一見順調のようでもその実それぞれが問題を抱え思いのままにならない現実のなかで、初恋の相手が突然現れたら・・・

いろいろな作品でよくみる題材の映画だが、韓国で大ヒット。恋愛映画はそれほど得意でない私もどはまり。DVDで見たんだけどすぐに見直した作品は初めて。
その理由は映画の登場人物と年代がどんぴしゃなこと。劇中ではX世代と言われる70年代中盤までの生れの世代の、大学時代と現在の姿を交互に見せる。この手の映像作品の例にもれず当時を象徴するモノや文化をちりばめながら。

 

主人公の学生時代はおそらく96年、97年が背景だと思うんだけど、そのころちょうど韓国で過ごし、現在を(韓国人の嫁さんと一緒に)韓国で過ごしている私は、日本人ということを覗けば、この映画のファン層そのものなんだよね。記憶力が悪くあまり昔のことを覚えてないほうだけど、学生時代の表現のところで違和感はとくになし。韓国を知らない日本人でも(同世代なら)だいたい同じような印象を受けるんじゃないかと思うんだけどこのへんは自信なし・・・


<ストーリー>

☆☆☆ネタばれ有り!ネタバレが嫌いな人は映画を見てから読んでください☆☆☆

建築科の新入生スンミン(イ・ジェフン)は、建築学概論の講義でソヨンペ・スジ)と出会い恋をする。音楽学部のソヨンとは家が近いことをきっかけにスンミンがソヨンの(建築学概論の)課題を手伝うことになり、次第に二人の距離が近づいていく。
ある課題では、お互い片親であるという共通点がわかり、そこでソヨンのCDプレイヤーで当時のヒット曲を一緒に聞く。
別の課題で訪れた場所では、ソヨンは父親と音楽に対する感情を吐露し、スンミンは将来ソヨンのために家を建てることを約束する。
母がスンデクッパ屋を営む実家が裕福でないことがコンプレックスのスンミンは、金持ちの先輩に対する気後れからソヨンのもとを離れることを決意。その前に二人は「初雪が降るときにあの場所(ふたりだけの思い出の場所)で会おう」と約束をしていたが、初雪の日にその場所で待つソヨンのもとにスンミンは訪れず、そっとCDプレイヤーとCDをのこし立ち去るソヨン。
結局二人はお互いの気持ちを伝えることなく別れることに。

 

学生時代と交互に描かれる現在(おそらく30代の設定)のスンミン(オム・テウン)とソヨン(ハン・ガイン)。
スンミンは建築会社に勤務。それほど裕福ではないが、同僚との結婚とアメリカへの移住が決まり新たな挑戦の時期。スンミンのもとを突然訪れ「故郷に家を建てる」ことを依頼するソヨン。実は医者である夫との結婚生活が破綻し、余命短い父親の介護する必要があった。
家を建てる過程でお互いの気持ちを知るうちにふたたび惹かれあう二人だが、やがて家は完成し、別れの時が。ようやく当時(と今)のお互いの気持ちを確認し二人は抱き合う・・・
スンミンは予定通りアメリカへ。ソヨンは父親が望んだピアノ教師をしながら父親と穏やかな時間を過ごす。そんなソヨンのもとにスンミンからあるものが届く・・・


ストーリーを文字にするといたって普通の話だなぁ・・・
では個人的なお気に入りポイントをいくつか。

<当時の文化>
当時を懐かしむモノとしては服装、ポケベル、そして重要アイテムCDプレイヤーなどが登場。CDプレイヤーで二人が聞く当時のヒット曲(聞いたこと無かったけど)「記憶の習作」がせつなくてイイ!そういえば当時私も太いヒップホップパンツはいてたし、韓国ではポケベル持ってた。

<いい味出しすぎのスンミンの親友>
なつかしさを増幅させる要素としてスンミンの親友ナプトゥギ(チョ・ジョンソク)が登場するんだけど、彼がめちゃめちゃいい味出してる!

 

浪人生の癖に高校生の彼女と遊びながらふらふらしてる男なんだけど、スンミンの恋の悩みに対して、そのぎこちなさを口悪く指摘しながらも親身になって相談に乗る。大げさな身振り手振りで恋の手ほどきをする様子に爆笑!そして失恋して落ち込むスンミンを慰めるシーンは名演。おもわず涙が出そうになった。こんな友達がいたらいいなぁと心から思わせる。
彼は現在のシーンでは出てこず、それもまた時の流れの非情さを無言で語るいい演出だと思う。
ナプトゥギを演じるチョ・ジョンシクは80年生れの俳優で、この映画の演技が評判となり、放送中のドラマ『最高だ。イ・スンシン』でIUちゃんの会社の社長として出演中。金持ちエリートの役なんだけど、あまりのイメージの違いに最初彼だと気づかなかくて、しばらく見てて声で気づいた。いい俳優だなぁ。
彼がこの映画のヒットに一役買ってるのは間違いない。

<カンナムとカンブク>
ソウルは漢江をはさんで北をカンブク(江北)、南をカンナム(カンナム)と呼ぶ。ソウルが国の中心となった李氏朝鮮時代から栄えたカンブクに対し、カンナムは漢江の奇跡と呼ばれる高度成長期に整備され、いわゆる富裕層が移り住んだ地域。映画のなかで「アプ・ソ・バン」という言葉が出てくるが、アックジョン洞・ソチョ洞・バンベ洞の頭の文字を取った言葉で今でも富裕層の多い地域。反対にカンブクには、結構適当でころころ変わる再開発計画を待つ比較的貧しい人々が住む地域がたくさんある。
カンナムに住む先輩とソヨンの誤解から別れを決意したスンミンが、カンナムに引っ越したソヨンの家の近くからタクシーに乗ろうとするとタクシーは「遠い」と乗車拒否(今でもよくある)。タクシーの運転手にたたかれながら「(カンブクに)なんで行けないのか」と泣き叫ぶ気持ちはスンミンのコンプレックスをよく表している。若い時はこういうどうでもいいことをコンプレックスに感じることはよくあるとおもうけど、交際相手の家の経済状況をとても気にする韓国では今でも同じ悩みをもつ若者は多いのかも知れない。

<伏線の回収も上手い>
家を二階建てにすること、スンミンのTシャツと実家の壊れたドアなど伏線の回収も自然でスムーズ。最大の伏線であるラストのCDプレイヤーは意外でちょっとやられたと思った。そのまま思い出の曲とともにエンドロールへ。お見事!

<キャスティングの妙>
学生時代のスンミンを演じるイ・ジェフンは優柔不断な男を好演、ソヨンを演じるペ・スジも演技のつたなさが初恋のぎこちなさとして表現されいい感じ。現在のスンミンを演じるオム・テウンは及第点、そして現在のソヨンを演じるハン・ガインは・・・・おっさんならメロメロになること間違いなし。演技はまだまだなんだけどなんか魅力的なんだよなぁ。

ペ・スジちゃん紹介のエントリーはこちら
ハン・ガインちゃん紹介のエントリーはこちら


同世代には是非見てほしい映画。もちろん年代は違っても楽しめるんじゃないかな。
韓国の恋愛映画ではマイベスト。お気に入り過ぎて書きたいことがまとまらないので、このへんで。

★★★★★

最後に劇中でてくる曲を
전람회(展覧会)/기억의 습작(記憶の習作)(1994)
http://youtu.be/EtXJHwX3ryU