食卓から扉へ
いつも
ぎりぎりの時間に
お弁当を持って
出勤して行く子
「気をつけて」
食卓で一言の私
門の扉を開け
見送る妻
食卓から門の扉までの
直線で結ばれた日常よ
10数年前
長男は
食卓の会話と情感を
鞄に詰めて
未知を求め
扉を開き
日常を超えていった
その少し後
長女は
白無垢を着
食卓の
笑いと
飛び交う情感を
食器棚に
溢れるほど詰め
扉を満開にして
超えて行った
今度はお前が食卓で育てた
会話と情感を
手作りの鞄に詰めて
もうすぐ超えてゆく
そうだ
おまえが超えてゆく
その扉はおまえとお父さんが
暑い夏に
汗を流して塗り込んだ
あの空色の扉だ
そうだ
食卓の
海の楽しさを塗り込んだ
沖縄の壷屋の湯飲みは
三人で行った旅行の
心の高価な
なにより温かな
おまえの
プレゼントだ
だから
私とお母さんは
この門の扉を開けて
もう一つの日常へ入ってゆく
お前を祝福しよう
姉と兄
そして
おまえが
扉や
食卓に
残してくれた
日常を大切にして
いつでも
思い出せるように
守ってあげよう
*これは、過去に私の父が書いた、妹の結婚に向けての詩です
私(長女)の育った家は食卓を囲んでいつも会話や笑い声がたえない家庭でした
私は母の美味しい料理と父の楽しい会話の広がるこの食卓でいろんな情感や生きる力を学んで育ちました
だから、私はおいしい料理が食卓の真ん中にあれば、家族は幸せでいられると信じているのです
食卓を囲む・・・という父の詩集の中の一遍です
少しずつ食卓の父の詩をのせたいと思います
最後まで読んでいただけてうれしいです
ありがとうございました