君の存在がすべて9(恋予報 壱&佐和 徹&真由) | 恋愛小説 くもりのちはれ

「理事長って何ですか?」


声を張り上げ叫ぶ私の事など気に留めることなく、婚約パーティーは進行中。


隣で黙ってはいるものの怒りを露にしてる壱は、きっと脱出の頃合を図ってる。


なのに・・・


私達ふたりの前に現われた私の両親は、既に酔っているかのようなテンションで


上機嫌も良いところだ。


『壱君、佐和の事よろしく頼むよ。』


そう言って壱に、握手を求め涙ぐむお父さん。まるで結婚式本番の様なセリフ。


『任せてください。』


戸惑いつつも、お父さんを真直ぐ見つめ答える壱は、お父さんの隣に立つお母さん


にも頭を下げて『佐和の事は、何よりも大切に考えてます。』と微笑む。


『壱君なら大丈夫だな。』


「お父さん・・・」


握り合った壱とお父さんの手が離れると、壱はいつもより落ち着いた声色で私と同じ


思いを話し始める。


『ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。母の突飛な言動は今に始まった事でなく


だから何も気にする事なくこの話、蹴って頂いて構いませんから。


佐和も俺も、ずっと一緒にいるという気持ちはありますが、ただ婚約は良いとしても


佐和が理事長と言う事は、今の段階でありえません。


そうだよ・・・壱と婚約って言うのは嬉しいけど、でも理事長なんてありえないよ。


それなのに・・・


なぜか壱の言葉を聞いたにも拘らず、お父さんはニコニコと首を横に振る。


『イヤイヤ・・・私達は、蹴るつもりは無いんだよ。


最初は、ホントに学生の身分で理事長なんて重責が務まるだろうかと、とても心配


したよ・・・佐和には荷が重すぎやしないだろうか?なんて・・・


正直言うと、反対するつもりだったんだよ。


けど完璧なフォローで確実だと何度も頭を下げられてはね。まして周囲の人間


からは、就職ままならないこのご時世に、学園の理事長なんて仕事に就くなんて


事は考えられない程のビックチャンスだと説得されてね、まっ、とにかく反対どころか


佐和をバックアップするのが親の務めだと考えたわけなんだ。』


「そんな・・・でも・・・そうは言っても・・・」


お母さんまでお父さんの話に大きく頷いてて、一体どんな説得をされたんだろう。


『壱君と結婚するって事は、今じゃなくても、いずれはそうなるって事なんだろう。


だったら佐和、お母様の仰るとおり早く仕事を覚えた方が良いんじゃないか?』


はぁ?って感じ・・・


お父さん、何を言ってるの?完全にパニックだよ!


て言うか・・・隣に立つ壱が・・・ううっ・・・どうしよう。マズイ・・・ホント、ダメだよ。


沢山の来客に囲まれ満面の笑みで談笑する理事長を、今にも殺してやるって視線


で、睨みつけてる。



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