無数の中の~31 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『やだぁー、何?どういう事?荒川君たら、何言ってるの?』


あれっ、もしかして知り合い?彼は荒川君って言うんだ。


知り合いなら、心配要らないかな・・・大丈夫かな?


『高宮さんに、まとわり付かないでって忠告しただけだから・・・この子、ルール違反


も良い所だから、ただそれだけの事に目くじら立てなくても良いんじゃない?


高宮さんも、そんな事で舐めてるなんて思わないはずだから・・・ねっ?そうでしょ?


私、高宮さんに嫌われたくないから、そんな風に言われると涙が出そう・・・』


彼女は、さっきまでの強気な感じと打って変わって、彼を言い包めるが為なのか、


涙まで瞳に浮かべ、か弱き女の子って感じの雰囲気を全身に醸し出す。


『あのさぁ・・・だから名前は?って聞いてんだけど。』


『グスッ・・・荒川君って意地悪っ!


私、同じクラスでしょ?知らないなんて・・・酷いんだからぁ・・・グスッ』


ここまでいくと、彼女の方が酷すぎる。


呆れ果てたように溜息を吐く彼の気持ちも解る。


『私は、高宮さんに彼女は合わないって、周りの皆の言いたい事を代弁してるだけ


なの。ほら、いつもより珍しく飽きるまでの期間が長いから、イライラする気持ちも


分からなくないし・・・私だって意地悪はしたくはないけど・・・でもこの子ホント解って


ないんだもの。だからさっきの事は・・・私、親切心でもあるのよ。


なのに、なのに・・・まるで私、悪者?


高宮さんにどんな風に報告がいくのか解らないけど、いっそ報告するなら・・・


私のこの思いも、ちゃんと伝えてほしいの・・・いいかな?


どれだけの人格が彼女の中にあるのかな・・・次は甘え上手さん登場!


そんな彼女に呆れはするけど・・・でも、でも・・・はぁー・・・尚斗君・・・


原因は、尚斗君にもあるよ・・・やっぱり。


後腐れの無い関係なんてものは、どこにも無いんだよ。


数分前まで彼女との戦闘体勢に入ってた私だけど、戦う気力も失せたその瞬間


ドンッ!!


コンクリート壁に穴が空きそうなほどの力で蹴りが入る。


『うぜぇ・・・てめぇの話なんて聞いてねぇんだよ。さっさと名乗れば良いものを・・・


わざわざ調べんの面倒だけど、てめぇの話聞いてる方が、もっと面倒だわ。


言っておくがナオトの命令は絶対だから・・・』


『命令って何?』


恐々と確かめる彼女


『知らねぇつうなら教えてやるよ。今更、知ったとしても、てめぇには遅いけど。』


今度は完全に嘘泣きでもなく、怖さからか涙する彼女。


『九条瑠奈に手を出す者は、誰であろうと容赦するな!


まっ、覚悟しな。泣きたきゃ勝手に泣けばいい。けど、ただじゃ終わらせねぇから。


で、この事を報告しなきゃならないんで、九条さん、帰りは少し早くしてくれますか?』


あまりの威圧感に震える彼女と同じく、彼が怖くなった私は、頷くしかできない。


そんな私の返事に『じゃ、また後で』と言って、彼女に目もくれず立ち去る彼。


私は今起きた出来事が、あまりにも世界が違い過ぎて・・・今この状況で、彼女に


対してどうして良いか解らず・・・ただただ困惑。


だから何も言わず・・・彼女をひとり残して、美術室へと逃げ入った。


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