無数の中の~30 | 恋愛小説 くもりのちはれ

お父さんに釘を刺された上に、お母さんにまで頭を下げられた尚斗君が、完璧で


無いなんてあるはずがない。


だけど・・・あの日からずっと、どこにいても何をしてても、もしかして見られてたの?


咲ちゃんでさえ気付いてたのは、そういうことだよね?


でも・・・どうしよう。


結局、この場は波風立てないで無難に過ごさないとダメなのかな?


でも私、何だかとっても気に入らない。逃げ腰みたいで、嫌な感じ・・・違う気がする。


『ちょっとぉ・・・早くしてよ!』


隊長さんが大きな声をあげると、彼女の後方の人影が動き、そして・・・姿を見せた。


あれは、えっと・・・そうだ!


キャッスルの3階のエレベーターの前ですれ違う人だ。


彼は、いつも私がエレベーターを降りると、待っていたかの様にエレベータ前にいて


軽く頭を下げ、その後、私の入れ替りでエレベーターに乗って行く。それは毎日で、


あまりにも偶然が重なって不思議に思ってたけど・・・そういうことだったんだ。


私を無事に尚斗君の元へと送り届けるって任務を背負ってたんだ。




『ごめん!とにかく・・・私、美術室で待ってるから・・・血は見たくないから!』


少し体でも動かそうって感じで、腕と肩を回しながらゆっくりゆっくり近付いてくる彼。


そんな彼の様子に驚き怯えるように、慌てて美術室に駆け込む咲ちゃん。


『何、あの子!何言っちゃってるの?血を見るなんて・・・私、いくらなんでもそこまで


馬鹿じゃないわよ。自ら手なんて出さないわ。』


手を出さないと言うセリフに、彼は歩みを止めた。


それ以上は近付かないで!と、届くかどうか解らないけど彼に向かって念を送る。


そんな私の表情に何を思ってか、彼は壁にもたれて傍観体勢に入る。


どうやら私に時間をくれたらしい。


だったら、とにかく早く終わらせよう。


「何を言われても無理です。時間の無駄です。だから、私に関わらないでください。」


もちろん・・・私の思い通りに簡単に引くわけは無い。


『あのさぁ・・・面倒なのは私嫌いだから、ストレートに言わせてもらう。


痛い目に合いたくないなら、目障りだから消えてよ!最初だけど最後通告!


解った?解るわよね?』


彼女は、彼に気がつかないまま、何か吹っ切れた様に強気発言連発させる。


『知り合いが私の願いを叶える為に、簡単に動いてくれるの♪その人たちって


何でもするのよね。ほら、よく漫画や小説であるじゃない?そんな感じなのよ。


だから私を怒らせないでね。取り返しのつかない悲劇的な事になちゃうからさぁ・・・


そうなる前に、ね?


これ以上高宮さんに、近付かないって約束してくれるかしら?


『フッ・・・へぇー、何でもねぇ~!それは面白そうじゃん!でもねぇ・・・やっぱ


悲劇か喜劇か知んねぇけど、尚斗を舐めてるって事は報告させてもらっから!


君、名前は?』


俯いてた彼が顔を上げ、冷めたように笑うと、私より先に声を上げた。


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